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『サーキットの狼』で好敵手が乗っていた「ナナサン・カレラRS」のオークション価格は、いまいくら?

掲載 更新 7
『サーキットの狼』で好敵手が乗っていた「ナナサン・カレラRS」のオークション価格は、いまいくら?

■マニアが羨望する「ナナサン・カレラRS」とは?

 英国「シルバーストーン・オークション」社が、2020年8月1日よりオンライン限定で開催するオークション「The Silverstone Classic Live Online Auction 2020」では、往年の人気コミック『サーキットの狼』にも登場したクラシック・スーパーカーたちが多数出品されている。

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 今回はそのなかから、いまや本格的なエンスージアストからも熱烈な敬愛を集めるアイコン的モデル、ポルシェ「911カレラRS2.7」を選び、オークション前の「レビュー」をお届けしよう。

●モータースポーツを意識した、特別な911

 日本の、ある一定以上の年齢の男性には、1970年代中盤にスーパーカーブームを巻き起こしたコミック『サーキットの狼』にて、主人公のライバル「早瀬左近」が初期に愛用したクルマとしても知られるポルシェ911カレラRS2.7。

 1973年モデルとして生産されたことから「ナナサン・カレラRS」とも呼ばれるこのクルマは、同時に近年のクラシックカー・マーケットにて高騰の一途を辿ってきた空冷ポルシェ911のなかでも、特に象徴的なモデルといえよう。

 空冷/水冷を問わず、一部のヒストリー付きレーシングカーを除けば、もっともマーケット価値の高い911として認知されている。

 もともとポルシェでは「FIAグループ4/スペシャルGT」ホモロゲート車両として、レーシングユース専用モデルをプライベートチーム用に少数のみ生産していたが、1973年に新レギュレーションが施行され、500台の生産が要求される「グループ4-GT」が、耐久レースにおけるGTカテゴリーの主戦兵器とされることになる。

 そこで、当時からGTカテゴリーに重きを置いていたポルシェは、FIAホモロゲート用に500台以上が量産可能なモデルとして、73カレラRSを開発することを決定した。

 いわゆる「ロードゴーイング・レーサー」として企画された元祖カレラRSは、ボディパネルの薄板化やFRP製パーツの適用、そして一部の快適装備やアンダーコートなども放棄することで、スタンダードの「911S-2.4」と比較すれば実に150kg以上も軽量化が施された。

 純粋なレースモデル「RSR」にアップデートされることを前提としたホモロゲート仕様の「レーシング」では約900kg、公道とサーキットの両方を楽しみたいユーザーのための中間バージョン「スポーツ」が960kg、そして、ストリート向けに快適装備を残した「ツーリング」仕様でも1075kgという、非常に軽い車両重量の実現に成功していた。

 一方、空冷フラット6エンジンは、当時の規定で3000cc以下のクラスに参入するためには排気量拡大が必須だったが、当時のスタンダード911に搭載された2.4リッター・ユニットは、当時の技術ではボア径が既に限界に達していると判断された。

 そこでポルシェ技術陣は、ル・マン24時間でも優勝したポルシェの超弩級モンスター、917譲りのテクノロジーである「ニカシル」シリンダーを採用。スリーブを廃したことで、2.7リッターまで拡大を果たした。

 このチューンアップにより、パワーは911S-2.4の190psから210psまで増大するが、実質的なパフォーマンスはスペック以上に拡大。一方で低速トルクも拡大してドライバビリティもアップするという、一石二鳥の素晴らしいマシンに仕上がったとされる。

 こうして生を受けた911カレラRS2.7は、初期の予定通り、当時の3リッター以下のGTカテゴリーでは世界最強マシンとなり、ストリートでも、サーキットでもライバルの羨望の的となる。

 そしてこの種のスーパースポーツ、しかも限定モデルとしては大ヒットを博したカレラRS2.7は、当初の予定だったFIAホモロゲートに必要な500台を、あっという間に販売してしまった。しかも、その後もモータースポーツ界やエンスージアストたちの要望は留まるところを知らず、結局予定の3倍にも及ぶ1580台が生産されるに至ったのである。

■いま、早瀬佐近の愛車は、いったいどれくらいの落札価格?

 ある資料によると、ポルシェ911カレラRS2.7の生産数1580台の内訳は「ツーリング」が1324台、「スポーツ」が200台、そして「レーシング」が56台とされている。

●ライトウェイト版に負けないヒストリーのツーリング

 今回「The Silverstone Classic Live Online Auction 2020」に出品されているのは、もともとは多数派を占めるツーリング仕様として作られた1台。でも、ちょっと興味深いヒストリーの持ち主でもある。

 シルバーストーン・オークションのWEBカタログによると、1972年12月に「1973年モデル」としてデリバリーされたこの個体は、1973年から1975年にかけて、主にフランス国内でラリー競技に供用。さらに、1975年のいずれかの時期に「3.0RSR」仕様へとアップデートされ、1982年ごろまでモータースポーツの第一線にあったとのことである。

 1985年には3.0RSR仕様のままドイツのコレクターに譲渡され、空調付きのガレージに収められたそうだが、その後は約30年近くにわたって秘匿されてしまうことになる。

 そして、アメリカのさる有名ショップを介して、現オーナーであるシルバーストーン・オークションの顧客が入手したのちに、今度は英国のポルシェ・スペシャリストに委ねられ、4万ポンド以上を掛けて現在の状態にレストア。

 再び「ナナサンRS」スタイルとなった内外装は、新車として生産された際のオリジナル、ライト・イエローのボディにブラックのインテリアに戻されたが、その数奇なヒストリーへのリスペクトからだろうか、当時モノのスポーツオプションであるバケットシートやロールケージなどは残されている。つまり、ポルシェ愛好家には少なくない「武闘派」にとって、とても好ましい73カレラRSなのだ。

 ひと頃は73カレラRSというだけで、「億越え」の取引価格が既定路線となっていたが、新型コロナウイルス禍に苛まれる以前の2019年の例を見ると、アメリカやアブダビ、そして日本で行われたオークションでは、RSツーリングについては6000万円から8000万円あたりで推移していたようだ。

 一方「ライトウェイト」とも称されるスポーツないしはレーシング仕様がオークションに出る機会は限定されるが、もしも出品されれば依然として「億越え」となっている。

 それでは今回の出品車両はといえば、元来ツーリング仕様として生産されたとはいえ、並みのライトウェイト仕様たちを大幅に上回るレーシングヒストリーがあることが、現況のマーケット価格の査定を非常に難しいものとしている。

 この春以降にRMサザビーズ社が開催してきたオンライン限定オークションの結果を見ると、たとえ新型コロナ禍の真っただなかにあっても、ポルシェ、ことに人気のモデルのマーケット価格に、大きな下落は見られないことが判ってきている。

 それゆえ、2020年8月1から2日の2日間のみで展開される「The Silverstone Classic Live Online Auction 2020」オークションにおいては、スタート開始早々から活況が期待されよう。

 この73カレラRSのオークション結果には、全世界のポルシェ・エンスージアストが注目しているといっても、過言ではあるまい。

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みんなのコメント

7件
  • 数年前まで3桁万円ギリギリで買えた73カレラが今では10倍ですか?ビックリです!
  • これを箱根で全損にしたバカを知っている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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