現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜイタリアにはスーパーカーメーカーが多いのか?その疑問に迫ってみた

ここから本文です

なぜイタリアにはスーパーカーメーカーが多いのか?その疑問に迫ってみた

掲載 更新
なぜイタリアにはスーパーカーメーカーが多いのか?その疑問に迫ってみた

スーパーカーといえば、どのメーカーやクルマを連想するだろうか。

人によれば日産GT-RやホンダNSXかもしれないが、ボクにとってスーパーカーとは「フェラーリ」であり「ランボルギーニ」だ。

1日いても飽きない。イタリア本国にあるフェラーリの聖地「ムゼオ・フェラーリ」訪問記

そして共通するのは、フェラーリもランボルギーニもイタリアのメーカーである、ということだ。さらに、マセラティ、かつてのデ・トマソもイタリアのメーカーである。

一方、ほかにイタリアで有名な自動車メーカーは「フィアット」だ。フィアットはご存知の通り大衆車メーカーだが、イタリアには世界に名だたるスーパーカーメーカーと、大衆車メーカーが同居している、ということになる。

自動車メーカーを有する国としては、ほかに我が日本、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなどがあるが、イタリアほど「両極端」な国はないだろう。

今回はなぜイタリアはそういったスーパーカーを作りえたのか、について考えてみたい。

イタリアには高級ブランドがたくさんある

イタリアが有名なのはスーパーカーだけではない。ファッションブランドや食べ物も同様に有名だ。

ファッションブランドだと、アルマーニ、プラダ、ドルチェ&ガッバーナ、フェンディなど、その名を挙げるとキリがない。食べ物も同様で、ピザ、パスタからジェラートやティラミスといったデザート、カプチーノといった飲み物までもが世界中に知れ渡り、愛されている。

芸術にしてもそうだ。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど歴史に残る芸術家を多く輩出している。

つまり、イタリアは多くの分野において、古今東西「トップに立ってきた」ということだ。反面、ボクら日本人が抱くイタリア人に対するイメージは、失礼ながら世界のトップに登り詰めるほどの「勤勉」というものではないかもしれない。

イタリア人は目的達成のためには全てを捧げる覚悟ができている

よくいわれる。「日本人は真面目で働き者だ」と。

しかし外国の人々にとって、それはあくまでも「決められた範囲で」という但し書きがつくようだ。

反面、イタリアはどうだろう。とくに欧州の人はこういったイメージを持っているようだ。「イタリア人は、目的を達成するためにはすべての情熱を傾ける」と。

日本では個人の役割が決定されている場合が多く、個々はその役割をまっとうすることに全力を傾ける。よって、その個々は、自身の役割に集中するあまり、場合によっては全体像が見えていない場合がある。

よく大企業の社員を揶揄して「歯車」と表現することがあるが、この歯車は何のために回っているのか?回った先に何があるのか?そして最終的な生産物は何なのかが理解できていないかもしれない。

よって、自分が回る速度を変えるとどうなるのかがわからないし、速度を変えようとも思わないのだろう。

だが、イタリアはちょっと違うようだ。たとえばレースに出るとなると、全員が「勝つ」ことだけを考える、といわれる。そのチームのどんな末端の構成員であったとしても、だ。彼らは「勝つ」という最終の目的が理解できている。だから、目的を達成するためには「自分の働き方」を自分で変えることができるのかもしれない。そしてここが「歯車」との大きな違いだろう。

いいモノは理屈では作れない

もう一つ思うことがある。「理屈だけでいいモノは作れない」ということだ。

日本では、その手段や理論が重要視されがちだ。結果主義とは言いながらも、多くの企業では達成した結果が「適切な手段に則っていたか」が重要視され、つまり手段による評価になりがちだ。

だから、日本では「その行動が理にかなっているか」「その理論は正しいか」ということになり、ついつい最終の目的を忘れてしまい、手段そのものが目的にすり替わってしまうのかもしれない。

だが、イタリア人は多分そこが違うのだろう。人生を楽しむためには理屈は必要ないし、人生を楽しむために必要な食べ物や衣類、芸術、音楽、クルマには損得抜きで全情熱を掲げるのだと思う。

フェラーリの場合は「人生を楽しむ」道具としてではなく、「レースに勝つ」ためのクルマ作りが目標であったと思われるが、そこに妥協はなかったはずだ。レースに勝つことが存在意義であったために、「レースから撤退」という考え方もない。そして、レースに勝つことだけを考えて作ったクルマがフェラーリであり、その純粋さが多くの人の感情に訴えかけたのだろう。

フェラーリは「商業的に」いいクルマを作ろうとしたわけではなく、「レースに勝てる」クルマを作った結果、その性能が究極のレベルに達した、ということになる。

おそらくは、イタリアにおいて、食べ物にしても、服にしても、靴にしても、芸術にしても、「一流」とされるものは商業的に成功しようと考えたわけではなく、単に自分が納得できる高みを追求した結果、広く知られ、認められるようになったのではないだろうかと推察する。

日本とアメリカは共通する部分もある

そして、日本の場合は個人の情熱よりも、企業としての活動の方が優先される傾向にある。

企業の活動とは「利益を得ること」だと置き換えることができるかもしれないが、その利益を最大化するために「より広い範囲をターゲットにする」のが日本企業の特徴だ。面白いことに、この傾向はアメリカにも当てはまる。

日本にはトヨタやホンダ、日産といった「オールラインアップ」を持つ自動車メーカーばかりだが、アメリカもGMやフォードも同じように「すべての需要を拾う」傾向にある。一方でイタリアではフェラーリやランボルギーニのように「スーパーカーしか作らない」メーカーが存在する。

これを国民性のもたらした結果だと断じるのは性急だとは思うが、現実問題として「そうなって」いる。イタリアの自動車メーカーは「スーパーカー」と「大衆車」という両極端なものだが、一方で日本やアメリカの自動車メーカーのつくるクルマについて「普及車」もしくは中間価格帯のクルマが多い、というのは興味深い事実だ。

とにかくイタリアでは「やろうと決めたら」それがどんなジャンルであろうとも、妥協を許さず全身全霊を傾けて取り組む傾向があるようだ。その結果として生まれたのがスーパーカーだと考えられるが、日本とアメリカではそこにある程度の合理性が加味され、純粋さと情熱が殺がれてしまい、人の心を打つようなスーパーカーが誕生しにくいのかもしれない。

もちろん何事にも例外はあり、日本やアメリカからも世界に誇れるスーパーカーが誕生しているのも事実である、ということも付け加えておく。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]

こんな記事も読まれています

レクサスLBXが生まれる工場【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
レクサスLBXが生まれる工場【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
グーネット
渥美心がボルドールから遂げたル・マンでの成長、新クルーチーフの存在に「速く走らせる方法が理解できてきた」/EWC
渥美心がボルドールから遂げたル・マンでの成長、新クルーチーフの存在に「速く走らせる方法が理解できてきた」/EWC
AUTOSPORT web
ハジャーが総合最速。マルティ2番手でカンポス1-2。宮田莉朋は2日目午後にトップタイム|FIA F2バルセロナテスト
ハジャーが総合最速。マルティ2番手でカンポス1-2。宮田莉朋は2日目午後にトップタイム|FIA F2バルセロナテスト
motorsport.com 日本版
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
くるくら
<新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
<新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
レスポンス
GW期間中に多いクルマのトラブルは何? JAFが2023年に救援した出動理由TOP10を紹介!
GW期間中に多いクルマのトラブルは何? JAFが2023年に救援した出動理由TOP10を紹介!
くるくら
レッドブル離脱のニューウェイはどこへ行く……アロンソとホンダが待つアストンマーティン? それともハミルトン加入のフェラーリ?
レッドブル離脱のニューウェイはどこへ行く……アロンソとホンダが待つアストンマーティン? それともハミルトン加入のフェラーリ?
motorsport.com 日本版
「背の低いマツダ」ついに出た! 新「マツダ6」じゃないよ「EZ-6」中国で発表 “電動専用車”に
「背の低いマツダ」ついに出た! 新「マツダ6」じゃないよ「EZ-6」中国で発表 “電動専用車”に
乗りものニュース
マツダが新型「ロータリースポーツ」登場へ!? 美しすぎる「和製スポーツカー」のスペックは?価格は? 期待高まる「アイコニックSP」どうなるのか
マツダが新型「ロータリースポーツ」登場へ!? 美しすぎる「和製スポーツカー」のスペックは?価格は? 期待高まる「アイコニックSP」どうなるのか
くるまのニュース
SHOEI「GT-Air 3 SCENARIO」 “REALM”に続くグラフィックモデル登場
SHOEI「GT-Air 3 SCENARIO」 “REALM”に続くグラフィックモデル登場
バイクのニュース
フィアット500/500C、新グレード「ドルチェヴィータ」追加、ブルーカラーの限定車も発売
フィアット500/500C、新グレード「ドルチェヴィータ」追加、ブルーカラーの限定車も発売
レスポンス
ミツビシが新SUV時代を迎えるSCBに電撃復帰。ランサー以来の『エクリプスクロス』でトヨタ、シボレーに挑む
ミツビシが新SUV時代を迎えるSCBに電撃復帰。ランサー以来の『エクリプスクロス』でトヨタ、シボレーに挑む
AUTOSPORT web
ベントレーが家具の新コレクション発表「ミラノデザインウィーク2024」に出展して存在感をアピール
ベントレーが家具の新コレクション発表「ミラノデザインウィーク2024」に出展して存在感をアピール
Auto Messe Web
新ブランド「N」のバッジは半端じゃない! ヒョンデが持ち込んだ「IONIQ5 N」はサーキットも全開で走れる異次元のEVだった【動画】
新ブランド「N」のバッジは半端じゃない! ヒョンデが持ち込んだ「IONIQ5 N」はサーキットも全開で走れる異次元のEVだった【動画】
WEB CARTOP
【特集:最新SUV「絶対試乗!」主義(2)】「SV」を冠するレンジローバースポーツには、たぶん敵わない
【特集:最新SUV「絶対試乗!」主義(2)】「SV」を冠するレンジローバースポーツには、たぶん敵わない
Webモーターマガジン
三菱自、ルノー・キャプチャーベースの欧州向けSUV「ASX」を大幅改良
三菱自、ルノー・キャプチャーベースの欧州向けSUV「ASX」を大幅改良
日刊自動車新聞
MotoGPスペインFP1|母国戦のマルケス兄弟がワンツー体制でスタート! 弟アレックスが好調トップタイム
MotoGPスペインFP1|母国戦のマルケス兄弟がワンツー体制でスタート! 弟アレックスが好調トップタイム
motorsport.com 日本版
いすゞとUDトラックスが「ジャパントラックショー2024」に共同ブースを出展! いすゞグループの商品やソリューションを展示
いすゞとUDトラックスが「ジャパントラックショー2024」に共同ブースを出展! いすゞグループの商品やソリューションを展示
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

145.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

45.8320.0万円

中古車を検索
カプチーノの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

145.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

45.8320.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村