BMWは9月5日、2028年に初の量産型燃料電池車(FCEV)の生産を開始すると発表した。BMWとトヨタ自動車は協業を強化し、次世代の燃料電池技術の実用化をめざす。これにより、BMWは新たなゼロ・エミッションの電動パワートレインを市場に提供することになる。
●共有のパワートレイン技術をそれぞれの車種に応用
BMWとトヨタは、商用車と乗用車の両方に対応する第3世代燃料電池技術を活用し、乗用車用パワートレイン・システムの共同開発を行なう。協業強化により、両社の車両に応用されるFCEVの選択肢が広がり、水素モビリティのビジョンが現実に近づくと期待されている。
トヨタと独BMW、“苦節10年”燃料電池車開発で提携強化へ[新聞ウォッチ]
BMWとトヨタのFCEVモデルは、各ブランドの独自性を保ちながら、特色ある選択肢をユーザーに提供する見通しだ。協業によりパワートレイン・ユニットの共有が進み、燃料電池技術のコスト削減とFCEVの普及率向上が予想される。
●BMWの水素燃料電池車は2028年に生産開始へ
すでにBMWは、『iX5 Hydrogen』パイロット・フリートの試験を世界各地で成功させてきた。BMWは、次世代パワートレイン技術の共同開発を基に、2028年に水素を燃料とする運転システムを搭載した車両の量産を開始する予定だという。この量産モデルはBMWの既存のプロダクト・ポートフォリオに組み込まれ、既存モデルにも水素燃料電池によるバリエーションが追加される見込みだ。
●パートナーシップは新たな段階へ
BMWとトヨタは、10年以上にわたる協業関係を強化し、次世代の燃料電池パワートレインの開発を推進する。これまでもトヨタが燃料電池スタックを提供してきたが、今後は燃料電池システムを共同開発。水素タンクやドライブトレインについては個別に開発する。
なおこの協業では、水素モビリティのポテンシャルを最大限に活かすために、商用車や乗用車を含む、あらゆるモビリティ用途に対応する燃料補給インフラの整備も進められる。
両社は、低炭素である水素の生産・流通・充填インフラ整備企業と緊密に提携し、持続可能な水素供給を推進する。政府や投資家の主導の下での枠組み策定を呼び掛け、水素モビリティの早期普及と経済的実現可能性をめざす。
●ゼロ・エミッション技術を次のレベルに引き上げる
BMWは電動駆動技術において、「テクノロジー・オープンネス」なアプローチで幅広いモビリティ・ソリューションを顧客に提供することを意図している。
BMWのオリバー・ツィブセ取締役会会長は、「協業による新型車は、世界的なプレミアム・メーカーによって提供される初めての量産型燃料電池車だ。水素のパワーとこの協業を原動力として、多くの人々が燃料電池車を求める時代の幕開けとなる」と述べた。
いっぽうトヨタの佐藤恒治代表取締役社長も、「BMWとトヨタはこれまでのパートナーシップを通じて、BMWの『テクノロジー・オープンネス』、トヨタの『マルチパスウェイ・アプローチ』という、カーボンニュートラルに向けた考え方を共有することを確認した。これら共通の価値観に基づき、水素社会の実現をめざして協力関係を深めていく」と語った。例えば、共同開発により燃料スタックの大きさを半分にし、航続距離を20%伸ばすことを目指しているという。
●水素を動力とする技術のメリット
水素は、世界的な脱炭素化を支える未来のエネルギー・キャリアとして評価されている。エネルギー供給網に再生可能エネルギーを組み込むことで、効果的なエネルギー貯蔵媒体としての役割を果たす。電動モビリティの分野においても、バッテリー式電動駆動システムに水素が加わることで、より万全なソリューションとなる。
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