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トヨタ 新型クラウン試乗 過去を捨て、プレミアム・クラスに挑むチャレンジャー

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トヨタ 新型クラウン試乗 過去を捨て、プレミアム・クラスに挑むチャレンジャー

2018年6月末から発売された新型クラウンの販売の立ち上がりは好調で、1ヶ月後の7月25日時点で3万台の受注を獲得したという。トヨタ店の販売パワーと、これまでのクラウンの愛顧者のクルマに対するロイヤリティはきわめて高いことを物語っている。
15代目となる新型クラウンは、これまでのクラウンという独特のブランド・ポジションを否定しながら登場した。この新型クラウンのクローズドコースでのプロトタイプの試乗は既報だが、改めて公道で試乗する機会が訪れたので、さっそくレポートしよう。
※関連記事:新型クラウン試乗レポート 15代目クラウンは世界を驚かすか?!(プロトタイプ)

目指すはプレミアム・セダン市場

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実は過去にもクラウンは、ゼロ・クラウン、クラウン・リボーンなど、何度も生まれ変わろうとした歴史がある。だが14代目の「リボーン(生まれ変わり)」もクラウンの退潮を止めることはできなかった。トヨタの頂点のブランドは、単にラグジュアリーなセダンというだけではなく、法人運転手のための軽い操舵力のステアリング、リヤ席のふんわりピッチングする乗り心地など、クラウン独自の世界観を守る必要があった。

しかし、今では法人の運転手付きのクルマはクラウンからアルファード/ヴェルファイアに移行し、ごく一部の官公庁向け以外は、オーナー層が自分で運転するクルマになっているのが現実だ。また長年のクラウン愛顧層は、高齢化が進んでおり、セダン・カテゴリーの縮小の真っ只中にいる。そこで、新型クラウンはDセグメントの輸入プレミアム・セダンの購買層を新たなターゲットにしたのだ。




新型クラウンの開発コンセプトは「世界基準をすべて超えるクルマ」とし、ドイツ・プレミアムセダンを超える走りを目指し、開発にはニュルブルクリンクにまでテスト車を持ち込んでいる。

試乗会場には新型クラウンのカットボディが展示されたが、その細部は確かに従来のクラウンとは全く違う仕上がりであることが実感できた。新型はTNGA-L、つまり縦置きエンジン/FR用のプラットフォームを新採用し、シャシー・コンポーネンツもレクサスLS用の最上級レベルを採用している。フロントはダブル・ジョイントのダブルウイッシュボーンを奢るという具合だ。レクサスLSとの違いは、全幅1800mmとするためにナロートレッド仕様にしているくらいなのだ。

2種類のハイブリッドと2.0Lターボ

新型クラウンのラインアップは、最上級の8GR-FXS型3.5L V6エンジン+マルチステージ・ハイブリッドとベースモデルのA25A-FXS型2.5L 直4エンジン+ハイブリッド、それとスポーティ仕様の8AR-FTS型2.0L 直4直噴ターボエンジンの3つのパワートレーンを中心にして、それぞれにグレードが設定されている。

試乗したのは、3.5L V6ハイブリッドで最もラグジュアリーなG エグゼクティブ。それと2.5L 直4ハイブリッドの中間グレードのG。それと、2.0L直噴ターボは、スポーティなRS アドバンスだった。

最上級のラグジュアリー・モデル、3.5L V6ハイブリッドのエンジンは、299ps/356Nmの出力で、これに180ps/300Nmのモーターも装備。その加速力は圧倒的だ。レクサスLS 500hと同じスペックで、動力性能としてはクラウンのイメージを超えている。

ただ、そのトルクがあまりに大きいためか、急加速や、急減速時にマルチステージ・ハイブリッドのギヤ変速が追い付かず、変速の応答遅れやシフトダウン時のトルクショックが感じられた。もっとも、このクルマはそんな急加速や、急減速をしないで淡々とクルージングする方がふさわしいのは言うまでもないが、一段の洗練を望みたい。

スポーツモードで、3000rpmを超えるとスポーツ・サウンドが聞こえてくる。実はこれは両ドアのスピーカーから流れ出るスポーツ性を強調する演出音だが、今までのクラウンでは考えられないデバイスだ。このスピーカーは通常は逆相音を発生するアクティブノイズ・コントロールとして使用され、スポーツモードではスポーツ・サウンドの排気音を響かせるようになっている。

2.5L 直4ハイブリッドは、184ps/221Nmの4気筒エンジンと電気式無断変速のハイブリッドを組み合わせ、自然吸気3.0Lに近いフィーリングで、このクラスとしては平均的な動力性能だ。急加速時にはやはりエンジンと車速の伸びが一致しない滑り感が多少あるが、普通に走る分には滑らかで室内は静粛だ。しかし、より高速になるとエンジン・ノイズが高まり室内に侵入してくる点はマイナスポイントだった。

2.0L直噴ターボは先代のビッグマイナーチェンジから導入されており、新型でも継承された。先代の2.0Lターボ・モデルはスポーツ仕様と位置づけられ、BMW 3シリーズに匹敵する走りが追求された。新型はさらに一クラス上のクルマとなったが、スポーティで気持ち良い走りを目指していることは共通している。

この2.0L直噴ターボは245ps/350Nmで、3種のパワーユニットの中で出力的には中間のポジションだが、低速からの分厚いトルク、変速レスポンスの良い8速ATとの組み合わせで、ハイブリッドにはない応答性の良い走りを体感することができる。

クラウンのイメージを捨て去ったシャシー性能

新型クラウンのシャシー性能は、これまでのクラウンのイメージを一掃する特性に生まれ変わった。開発の目標は走行中に乗員の視線がぶれないフラットな乗り心地、リニアな応答性の実現だという。この点はニュルブルクリンクでのテストでもライバルのメルセデス・ベンツEクラス、BMW 5に引けをとっていないことが確認できたという。




うねりのある路面を高速で走るような場合でもピッチングを起こさずバウンシング(上下動)でいなし、コーナリングではじんわりロールすることで安定した走り、フラットな乗り心地を引き出している。


そのため、サスペンションの取り付け剛性以外に、アンチダイブ、アンチスカット特性も驚くほど強化されている。例えばブレーキをかけるとフロントの沈み込みが予想以上に少なく、バック時に強めのブレーキをかけたりするとドライバーの体が上方に強く飛び上がるほどのアンチ・ピッチング効果が仕込まれている。


そういう意味で、シャシー性能は海外の道路を高速で走った時に真価を発揮する性能を持っているといえる。しかしクラウンは日本専用モデルであることを考えると、レベルを下げずに、日本の道路事情や走行速度域にフォーカスしても良い気がした。しっとりとした、しなやかなフィーリング、低速走行での滑らかさといった点をもっと伸ばしてもよいと感じたのだ。


室内の居住性

インテリアは、これまでのクラウンを継承する部分と、よりパーソナルなドライバーズカーにしようという意図も混じっている。大きく進化したのはシートで、表面のタッチこそ柔らかめだが、腰椎、骨盤の支持や後背部の包み込みなどシートの骨格や芯がしっかりしており、長時間乗った時の疲労を低減するフォルムになっている。

またリヤシートの居住性能も、クーペ風のルーフ形状を持つエクステリアから想像するよりはるかに快適で、居住スペースも十分に確保されている。



一方で、ライバルと位置づけるEセグメントのプレミアム・セダンと比べると、質感の細かな作り込み、ディーテールなどにはいささか粗さが目立つ。クラウンは価格的には200万円程安いが、その差を感じさせないような質感の煮詰めが必要だろう。

装備面では、新たに常時接続のコネクテッドカーとなり、緊急通話、車両のリモート診断、サーバー連携のナビゲーションなど、これまでにはない価値を備えていること、運転支援システムも最新のスペックに進化していることなどは、このクラスではもはや特別目新しいことではないが評価できる内容だ。


新型クラウンは、車名は継承しているもののクルマづくりは完全にグローバル基準を目指しており、これまでのクラウンの面影はなくなっている。セダン市場は限りなく縮小しており、特に上級クラスのセダン市場は日本車に代わって輸入プレミアム・クラスのセダンが主流になりつつある。そうした市場トレンドに危機感を持ったトヨタは、これら輸入プレミアムセダンに匹敵するクルマとしてクラウンを作り変えたわけだ。

そのため新型クラウンは従来からのクラウン・ユーザーの継承以外に、メルセデス・ベンツEクラス、BMW 5シリーズ、アウディA6などの購入層を新たに取り込もうとしている。これらの輸入プレミアム・セダンの中心価格帯は700万円だが、クラウンは500~600万円で、価格的なアドバンテージをアピールする。この新型クラウンは新たな顧客層を獲得できるのかどうか、興味深い。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

トヨタ クラウン 諸元表

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