2018年8月24日、アメリカ・カリフォルニア州モントレーで開催されたペブルビーチ・コンクール・デレガンスにおいて、新型BMW Z4が世界初公開された。その詳報をお伝えするとともに、これまで伝えられてきた、新型スープラの最新情報を整理してお伝えする。
このZ4とスープラは、トヨタとBMWが共同開発した兄弟車だが、Z4がひと足早く発表された。いっぽう、スープラは来年1月のデトロイトショーで市販車が公開され、2018年春から発売される。
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さあ、いよいよカウントダウンが始まった。ワクワクしながらZ4、スープラの詳報を書いていこうと思う。
文/ベストカー編集部、ベストカーWeb小野正樹
写真/TOYOTA、BMW、清水勇治、ベストカー編集部
初出:ベストカー2018年8月26日号
■つ、ついに新型Z4の市販型が発表された!
2017年8月、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでコンセプトZ4が発表されたのだが、あれからちょうど1年経った同じ場所で、市販型Z4が発表された。
今回お披露目されたのはZ4 M40i。このM40iという車名は見慣れない人も多いかもしれない。このシリーズのMは、M社の新ブランドMパフォーマンス・オートモービルズのことである。
BMWの高性能モデルと、M3に代表されるM製品の中間に位置するのが、このシリーズのコンセプトとされる。Mほどレーシングライクではないが、毎日使えるMという意味合いである。
BMWファンの方はすでにご存じかもしれないが、このエンジンは2シリーズクーペのM240iに搭載されているN55系3L直6ターボと同じものだが、今回BMWがZ4 M40iのスペックとして公表したのは340ps、0~100km/hが4.6秒だけだった。
参考までにM240iに搭載されている3L直6ターボは340ps/51.0kgm。0→100km/hは4.8秒。0→100km/hタイムを見る限り、0.2秒速いので、Z4 M40iの実力がわかろうというもの。
蛇足になるが、その上のM2クーペは370ps/47.4kgm、さらにその上、M3やM4と同じ3L直6ターボのS55系エンジンを積むM2コンペティションは410ps/56.1kgmを発生する。
このほか新型Z4に搭載されるエンジンは264ps/39.8kgmの高出力仕様2L直4ターボのsDrive30i、sDrive20iにはもう一つの2L直4ターボ(152ps/25.5kgm)が搭載される予定だ。
エクステリアを見てほしい。M40iはノーマルモデルと違うので、若干スポーティな外装パーツが奢られているが、BMWのスポーツカーらしいロングノーズ、ショートオーバーハング、前後50:50の重量配分を最優先に考えられたプロポーションである。今回、先代モデルで採用していた電動メタルトップではなく約10秒で開閉する電動ソフトトップになった。
ボディサイズは公表されなかったが、全長4380×全幅1860×全高1295mm、ホイールベースは2480mmと予想。兄弟車のスープラと同様、トヨタ86よりもショート&ワイドなサイズになることにも注目したい。
足回りは、電子制御式ダンパーを備えたスポーツ・サスペンション、M スポーツブレーキシステム、そしてリアアクスルにM スポーツディファレンシャルが搭載されている。
インテリアは直感的なタッチ操作ができる新世代のデジタルコクピット、BMWオペレーションシステム7.0が採用され、BMWライブコクピットプロフェッショナルと呼ばれる2つの高解像度ディスプレイなど、一歩進んだ最新世代のコクピットが採用されている。
新型Z4の詳細は9月18日から開催されるパリオートショーで明らかにされ、2018年春からこのZ4 M40i、Z4M40iファーストエディションが発売される。
■兄弟車、新型スープラはどうなる?
まずは開発責任者の多田哲哉氏に、スープラを走らせたグッドウッドから帰国直後に直撃インタビューした内容からお届けしよう。
僕は86をスバルと共同開発しました。その時には他社と組んでクルマを作ることの大変さを思い知りましたが、BMWとの仕事の大変さはその比ではなかったですね。
初めてBMWのスタッフと顔を合わせたのが’2012年のこと。その時にはどんなクルマを作るかの青写真もなく、ただ「一緒にやろう」というだけだったのですが、その後「ポルシェに負けないスポーツカーを作りたい」と言ったら鼻で笑われました。「俺たちはポルシェもメルセデスもライバルと思ったことはない。BMWはBMWの道を歩んでいるんだ」と。
まずはお互いのクルマを知ろうということで自社のクルマを持ち合って試乗会を開いたのですが「トヨタ車に乗るのは初めて」という人ばかりで、86に乗って「意外とまともだね」なんて言われたり。今ではすごく仲良くやっていますが、はじめの2年は本当につらかったですよ。
でも、BMWのクルマ作りはすべてが衝撃的でした。BMWは設計図をトヨタの2倍作り、徹底的にシミュレーションを重ねます。テストカーを作る時には問題点はほとんど消されているのです。
またデザインも彼らはプロポーションをしっかり決めることを何よりも大切にしています。我々は早い段階からディテールに目がいってしまいがちなのですが、そこも異なるところで、今回BMWと一緒にクルマを作ることで学んだことはたくさんあります。ただ、インテリアの設計技術は明らかにトヨタのほうが上ですね(笑)。
■ハイテクLSDで超ニュートラルステアを実現!
役割分担は企画がトヨタ、設計、生産がBMWで、スバルと組んだ86/BRZと同じやり方です。ただ、ベース車の開発はBMWですが、そこから先はスープラとZ4はまったく別に開発を進めていて、互いに相手がどんなクルマを作ろうとしているのか知らないくらい。共通のパーツを多用して安くしようという発想もありませんから内外装もまったく違うし、シフトノブも別のものを使っています。
僕は直6、FR以外はスープラではないと思っています。だから直6エンジンを作っているBMWと組めなければこの企画はあり得ませんでした。
販売台数が少なく、採算を取りにくいスポーツカーは一社単独で作るのは難しい。これからも趣味性の高いクルマはどこかと共同で作るというのが重要な手法になると思います。そもそもBMWもZ4はもう諦めていて、我々と組むことがなければ生まれてこなかったはずなのです。
スープラの走りについて、ひとつだけ秘密を教えておきましょう。キモはLSDにあって、超ハイテクのLSDを使っています。これによってターンインから立ち上がりまで、きれいなニュートラルステアで走りきれるクルマになっています。
ケイマンやボクスターはターンインや旋回はよくても立ち上がりの脱出の時に、ちょっとアクセルを踏んでしまうとアンダーステアが出てしまうんです。
また、クルマの旋回性能はホイールベースとタイヤ左右のトレッド幅の割合で決まるんですが、86、ケイマンはもちろん量産スポーツのなかで最も短いんです。
おそらくこれだけの走りができるのは3000万円クラスのスーパースポーツだけ。それを頑張れば手が届く価格で提供するのが新型スープラなんですよ。
………と熱く語ってくれた。ケイマンやボクスターを上回る走り、相当期待してよさそうだ。
■新型スープラの正式発表は2019年1月、価格は500万円前後~
新型スープラの正式発表は2019年1月のデトロイトショー、日本での発売は2019年春になる予定。気になる価格はまだ読み切れていない部分が多いが、2Lターボが500万円前後、3Lターボが700万円前後と予想。いずれにしてもケイマン、ボクスターより安くなるのは確実。
BMWの2Lターボと8速ATのフィーリングのよさ、7000rpmまで回るM240iエンジンの3L直6ターボ、この2つがスープラに載ると聞いただけで、凄い、いいクルマになっていると断言しよう!
そして思い通りに曲がる、スーパースポーツ並みの超ニュートラルステアと聞いたら、今から貯金を始めたくなたのはボクだけではないだろう。
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