愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第48回。前編では、歌手・俳優の今井美樹さんが、家族との思い出がたくさん詰まったフォルクスワーゲンのエピソードを初披露する。
懐かしの“ワーゲン・バス”
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撮影現場でフォルクスワーゲン「タイプ2(アーリーバス)」と対面した今井美樹さんは、小さくガッツポーズをした。その仕草から、このクルマを間近に見る喜びが伝わってくる。
そして満面の笑みを浮かべながら、撮影現場まで自走で来たタイプ2のオーナーに、「うちのはクリームホワイトで1963年型でした。こちらは何年のモデルですか?」と、尋ねた。
撮影車両が66年型と聞くと、今井さんは「63年当時、日本にはタイプ2が2台しかなかったと父から聞いたことがあります。随分後になって6Vから12Vに改良したみたいです」と、伝えた。
オーナーによると、タイプ2は64年モデルで6Vから12Vに切り替えられたとのことで、63年以前のモデルは12V化が定番のカスタマイズだったという。これを聞いた今井さんは、納得した表情を見せた。
それにしても、あの今井美樹さんがこれほどマニアックにタイプ2を語るのは意外だ。そう伝えると今井さんは、「父の受け売りで、私は全然詳しくないんですよ」と、笑った。
思い出が詰まっているというフォルクスワーゲン・タイプ2について話してもらう前に、簡単にこのクルマを紹介したい。
フェルディナント・ポルシェ博士が構想していた小型大衆車のプロトタイプが完成したのは、36年。第2次世界大戦後間もない46年に国民車を意味するフォルクスワーゲンが登場する。後に、このクルマは派生車種と区別するために「タイプ1」と呼ばれるようになり、“ビートル”という愛称でも親しまれた。
タイプ1をベースにして50年に登場したトランスポーターがタイプ2。タイプ2にはデリバリーバンやマイクロバス、ピックアップトラックなど、さまざまなバリエーションが存在した。そしてドイツのコーチビルダーであるウェストファリア社が手がけたキャンパーが、58年に発表されたキャンプモビルで、後に“ワーゲン・バス”というニックネームで呼ばれるようになる。
ウェストファリア社は前席背後の収納家具や折りたたみ式テーブル、ベッドの機能も備えるソファーなどを設置し、タイプ2に“動く家”としての機能を盛り込んだ。同社はキャンパーが得意なビルダーで、近年ではメルセデス・ベンツ「Vクラス」のキャンパー仕様、「マルコポーロ」を手がけたことで知られる。
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「実家は、祖父から父が引き継いだときには家電も扱う街の電器店だったらしいのですが、父の代になってからはオーディオ専門店になりました。父はクルマも大好きで、キャンピングカーのタイプ2と、配送用のバンのタイプ2がありました。配送用にはボディに彼が“イマイ”をデザインしたロゴが入っていました。お店の前に置くから宣伝にもなっていたんでしょうね。配送用のバンは部品取り車でもあって、ちょこちょこ直しては、またどこからか新たな中古のバンが来ているという感じ。でもキャンピングカーはとても大事にしていました」
父上のクルマ好きはかなりのもので、所有していたクルマは今井さんも「すべては思い出せない」と、苦笑いする。
「写真を見ると(フォルクスワーゲン)赤の『カルマンギア』もあったし、カフェオレ色のシトロエンの『GS』を大事に乗っていた時期もありました。そうそう、クサビ型のいすゞの『ピアッツァ』は近未来のクルマみたいで格好よかったですね。ホンダも大好きで、『(ライフ)ステップバン』も大切にしていました」
いろいろなクルマがあったなかでも、最も思い入れのあるのはキャンパー仕様のタイプ2だったという。
「ワーゲンがやってきたのは、私が小学1年生の頃かな。よく覚えていないですが(笑)、毎年4月の第1日曜日から、10月の最終の日曜日まで、日曜日は必ず海へ水上スキーに出かけていました。いとこの兄弟と私の3人が後ろに乗って、トレーラーに乗せたモーターボートを牽引して。こう言うと、子どもたちのためみたいに聞こえるかもしれませんが、自分達大人が遊びたかったんですよ(笑)。いつもオスカー・ピーターソンの『ガール・トーク』というアルバムがカーオーディオでかかっていて、だから私の中ではワーゲンと、青空と、オスカー・ピーターソンがセットになっている感じです。週末は本当に楽しみだったんですけど、中学生になると部活で忙しくなり一緒に海には行けなくなったので、父は一緒に遊んでくれなくなったと言っていました」
今井さんの父親は、DIYでタイプ2をカスタマイズして楽しんでいたという。オリジナルでは備わっていなかった水まわりを整えたり、クーラーを付けたり。冒頭に、6Vを12Vに切り替えたというエピソードが出てきたけれど、それを覚えているのは、嬉々として説明する父親との時間を一緒に楽しんだからだろう。
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「小学2年生の3学期です。父がスキー旅行に行こうと言い出しました。宮崎は雪がないので、宮崎交通のバスツアーで鳥取県の大山までスキーに行ったんです。平日だったんですけど、父は担任の先生に、『社会勉強に連れて行きますから』みたいな格好いいことを言ったらしく(笑)。家族で初めてのバス旅行、それも学校休んで。それは嬉しいでしょ(笑)。私も水上スキーをやっていたから滑れるかな? くらいに思っていたら、全く違って。とにかく止まれない。尻もちをつけばいいんだけど、それが怖くてできない。前の人をよけたら転倒して、昔の貸しスキーだからビンディングが外れず、そのまま捻って、複雑骨折をしたんです。大山で緊急手術をしました」
急遽大山で入院、約1カ月後、付き添ってくれた母上と今井さんを迎えに、父親がタイプ2で宮崎から鳥取まで迎えにやって来た。
「『せっかくだから砂丘を見よう』とか、『倉敷まで行ってフェリーに乗ろう』とか、学校があるから1日でも早く帰ろうなんて言わない。母は大変だったと思います(笑)。ただ、ちょうど大学受験のシーズンで、ホテルがどこもいっぱいだったんですね。大きなドライブインの駐車場にワーゲンを停めて、3人で川の字になって寝ました。キャンプですよほとんど。子供は楽しいですよね。朝起きたら、ドライブインの洗面所の冷たい水で顔を洗って、何泊かしながら宮崎に帰ったことを覚えています」
驚いたことに、今井さんの思い出のタイプ2は、いまも現役で走っているとのことだ。
「21年前に父が亡くなった後、父のワーゲンへの想いをよく知る友人の方が、今も乗ってくださっているんです。気持ちいいシーズンになると走らせて、“桜が満開になりました”とか、キャンプ仕様の楽しいアウトドアライフの写真を送ってくださいます。帰省したら乗せてもらうのが楽しみなんです。あっ、そうだ! このワーゲンと私の写真を撮って、その方に送ってもいいですか?」
今井さんと家族の思い出がたっぷり詰まった63年型のフォルクスワーゲン・タイプ2は、今日もどこかを走っている。もしクリームホワイトのタイプ2を見かけたら、それは今井家のワーゲンかもしれない。
後編となる次回は、今井さんの初めての愛車から、現在のクルマ生活についてきく。
今井美樹(いまいみき)宮崎県出身。モデルとしてデビュー後、ドラマや映画に出演。86年、シングル「黄昏のモノローグ」で歌手デビュー。88年、CMソングとなったヒットシングル「彼女とTIP ON DUO」以降「PIECE OF MY WIWISH」「PRIDE」など数多くの大ヒット曲を持つ。世代を超えた幅広い人気は今なお健在。
オフィシャルHP www.imai-miki.net/
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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ)
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