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悪臭と炎の町に生まれた新工場 e-ベルランゴ/コンボ Eで再生 ステランティスのEV拠点

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悪臭と炎の町に生まれた新工場 e-ベルランゴ/コンボ Eで再生 ステランティスのEV拠点

1年半と1億ポンド(約181億円)で再構築

グレートブリテン島の中西部、リバプールの少し南に、エルズミアポートという町がある。高速道路からは大きな製油所が見えるが、その横で新しいバッテリーEVが生み出され始めている。

【画像】悪臭と炎の町に生まれた新工場 エルズミアポート ステランティスのポップなEV エンジン版のコンボも 全137枚

ここには、1964年から稼働してきた英国オペル、ヴォグゾールの工場がある。2022年4月に操業は一時停止していたが、1年半と1億ポンド(約181億円)が費やされ、ステランティス・グループによる電動バンの生産ラインが整えられた。

筆者はこの地域へ頻繁に訪れてきたから、製油所が放出する悪臭と余剰ガスが燃える炎には慣れている。だが、この周辺で暮らす人は気持ちが優しく、意欲的に仕事をこなす気概の持ち主だということも理解している。

「オペル・アストラの生産終了が迫り、われわれには未来がないと考えていました。しかし、諦めませんでした」。工場長のダイアン・ミラー氏が、2021年を振り返る。

「弊社のスタッフや、サプライヤーに勤める友人の安定した雇用を希望してきました。周辺でのリストラを、目の当たりにしてきましたから」

工場側の打診により、ステランティス・グループのCEO、カルロス・タバレス氏がエルズミアポートを訪問。ここで生み出されるクルマの品質と、人々の熱意に触れ、新世代のバッテリーEVの製造も任せられると判断された。

2021年7月には、英国政府の協力も取り付け、新たな投資が決まったことが工場へ伝えられた。同グループ初となる、バッテリーEV専用工場への再構築が始まった。

組み立てエリアは一新 量産準備は万端

かくして、シトロエンe-ベルランゴやプジョーeパートナー、ヴォグゾール・コンボ・エレクトリックの生産拠点が完成。筆者が訪れたときは、約1000名のスタッフが、正式な量産を開始する直前だった。

生産ラインへお邪魔したタイミングで、489台目のコンボ・エレクトリックがラインオフ。完成検査を経て、先行生産の車両だと理解する顧客へ届けられるという。ユーザーからは、品質向上のためのフィードバックが寄せられるはず。

「前向きな気分です」。エルズミアポート工場で25年間働く、品質管理部門のピート・モート氏が笑顔を見せる。「数か月をかけて、飛躍的にスキルを高めて来ました。組み立てのリズムに合わせて、すべてを自然にこなせるように、一定の生産量が必要です」

モートは、ステランティス・グループの社風が気に入っているという。「マネージャーは、目標水準に達しているか定期的にチェックしますが、ある程度の自主性も認めてくれています。努力する責任も与えられているんです。量産に向けた準備は万端です」

力強い握手で迎えてくれた、シフトマネージャーのスティーブ・ジェブ氏が生産ラインを案内する。「組み立てエリアは一新され、コンパクトで高効率になりました。各ラインが、他のラインと連携しています」

「ボディを持ち上げて、ドライブトレインを下から取り付けるための、クレドール型のモノレール・ラインも整備されました。バンパーは、新しい射出成形機で作られます。プレス・ラインは、ボディの製造で忙しいようです」

厳格な現地生産規則へ備える

そして、これから先のプロセスが、エルズミアポート工場の将来を握る鍵となる。それが、電動パワートレインの生産だ。

英国のEU離脱(ブレグジット)の際に、厳格な現地生産規則が結ばれた。2024年以降は、英国やEUで販売されるバッテリーEVは、部品の45%と駆動用バッテリーの60%を、英国かEUで生産しなければならない。違反すると、10%の関税が掛けられる。

ステランティス・グループは、この規則の影響を当初から懸念していた。バッテリーEVの生産コストにより競争力を維持できない場合は、英国での操業中止もあり得るという。施行を2027年まで延期するよう要望も出されているが、動きはないようだ。

工場長のミラーは、事態の深刻さを認める。だが、その備えも進めている。「自国で調達するという圧力を受け、可能な限り地元で部品を入手するように務めています。ただし、コイル状の鋼材は適用外なのが救いですね」

「新しい射出成形機も、現地部品の割合を高めるための大きな投資です。ボディパネル用の金型も合わせると、2100万ポンド(約38億円)を投じています。ですが、駆動用バッテリーは中国製。これが問題となります」

「現地でバッテリーを作る必要がありますが、工場建設の費用は小さくありません。政府だけでなく、同じ立場にある自動車メーカーとの連携が欠かせません」

新生工場の成功へ向けて出だしは順調

駆動用バッテリーの生産拠点も、エルズミアポート工場の隣に竣工している。だが、規則により立ち入りは制限されている。

1台につき18モジュールで構成される50kWhのユニットが搭載されるが、1モジュール毎に同工場でテストを受ける。その後、金属製の保護ケースへ収められ、配線が組まれ、密閉され、気密性が確認される。

3世代に渡ってこの工場で働く、部門担当者のマイケル・マクグラス氏が説明する。「安全性と完全性が重要です。バッテリー内へ、何も入らないようにする必要があります」。ケースを固定するボルトの締め具合は、徹底的に確かめられる。

50kWhの駆動用バッテリーの重さは、330kg。ユニット毎に自律搬送台車で運ばれ、駆動用モーターと制御ユニット、配線、回生ブレーキシステム、ステアリングやサスペンションなどと一緒に、所定の位置へレイアウトされていく。

モノレール・ラインを進むボディシェルは、別の場所で塗装を終え、必要な装備が組み付けられる。そして最後に、マリアージュと呼ばれる合体行程へ移る。

タイヤを履いたコンボ・エレクトリックは、品質管理部門へ向かう。「発見された欠陥は、工場のリソースで対応する必要があります。ご想像の通り、最初から正しく進める必要があります」。シフトマネージャーのジェブは、真剣な表情に変わる。

新生エルズミアポート工場の成功へ向けて、出だしは順調といえるだろう。グレートブリテン島全体の注目が、この歴史ある場所へ向けられている。

ヴォグゾール(オペル)・コンボ・エレクトリック LH1(英国仕様)のスペック

英国価格:3万1551ポンド(約571万円/英国政府補助金適用後)
全長:4403mm
全幅:1848mm
全高:1841mm
最高速度:−km/h
0-100km/h加速:−秒
航続距離:436km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両総重量:2410kg(積載量:803kg)
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:50.0kWh(実容量)
急速充電能力:−kW(DC)
最高出力:138ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

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みんなのコメント

1件
  • 葛葉恭次
    辺鄙な田舎の野焼きオジジの近所、ではないのですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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