メルセデスベンツのセダンラインナップの中軸を担うEクラス。2023年、新型メルセデスベンツ Eクラスが公開された。エクステリアもパワーユニットも安全装備もすべてが最先端なEクラスを徹底解説!!
※本稿は2023年8月のものです
文/渡辺敏史、写真/メルセデスベンツ
初出:『ベストカー』2023年9月26日号
未来の先取り……?? 圧倒的進化!! メルセデスベンツ新型Eクラスを徹底解説!!
■70年も愛される理由?? 歴史から紐解くEクラスの魅力とは??
メルセデスベンツ Eクラス。C・E・Sクラスをメルセデスベンツの中軸とするならば、Eクラスはそのさらに真ん中に位置するといっていい
現在は膨大なラインナップの整理を始めたようにも見えるメルセデスベンツだが、その顔ぶれにおいての中軸といえばC・E・Sクラスであることに異論を挟む人は少ないだろう。とあらば、Eクラスは言ってみれば、そのまん真ん中、軸心のメルセデスということになる。
その歴史はEクラスを名乗り始めてからの年数でも約30年、オーナードリブンとショーファードリブンの両用途をカバーするサルーンとしての位置づけで見るなら第2次大戦後70年以上の年月が数えられる。
メルセデス自身はそのルーツが1936年からのW136型にあるとしているから、彼らにとってもEクラスが精神的支柱であることは間違いない。
■大きくなっただけじゃない!! 伝統と先進性の魅力的なエクステリアとは??
Eクラスらしい上質な乗り心地は健在。快適性に加え、安心感と敏捷性を両立させているという
そんなクルマのフルモデルチェンジゆえ彼らの気合の入り方も相当なものだろう。W214型となる新型Eクラスのコンセプトは「伝統と先進の新たなる架け橋」だという。
伝統の側面を最も端的に見てとれるのは、現行のCクラスやSクラスとも相通じる3ボックスサルーンのフォルムだろう。ヘッドライトのグラフィックは2000年前後にメルセデスがデザインランゲージとして積極的に用いていたツインビームフェイスのオマージュも感じさせる。
そのヘッドライト部とグリル部の間が黒く繋げられているところは、メルセデスのBEV向けサブブランドであるEQシリーズとの連続性を意識しているとのことだ。テールランプはスリーポインテッドスターモチーフの光源が灯るが、これを遊び心ととるかやり過ぎと見るかは好みによるところだろう。
Eセグメント系モデルの大型化は今に始まった話ではないが、新しいEクラスも全長は辛うじて5mを切るものの、全幅は1880mmとなった。こうなると都市部での機械式駐車場などでは不自由を感じることもあるかもしれない。
一方、ホイールベースも20mm伸ばされ、その分、前後席間などのスペースは余裕が感じられるようになった。ちなみにトランク容量は前型と同じ540Lを確保する。
■え!?!? まさかの4気筒?? 全車電動化のパワーユニット!!
パワートレーンは48Vのマイルドハイブリッドのガソリン&ディーゼル、そしてガソリン&ディーゼルのPHEV
ふた昔前ならSクラスかと思わせるほどの体躯の取り回しをアシストするのは、新たに設けられたリアアクスルステアだ。4.5度の操舵角をもってターニングサークルを0.9m縮小するという。日本的に最小回転半径で示せば5.4mと、Cセグメント級の小回り性能を実現することになるだろうか。
これは高速域での安定性やコーナリングでの回頭性のみならず、日本のインフラでも実践的に使えるメルセデスのアクティブパーキングアシストでも役立つ機能となるはずだ。
ほかにもコンベンショナルなコイルサス、そしてエアマチックと新型Eクラスには3種のサスペンションシステムを用意して、多様なニーズに応える。
パワートレーンは48VのISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を搭載するマイルドハイブリッドのガソリン&ディーゼル、そしてガソリン&ディーゼルのPHEVと全ユニットが電動化を果たした。
エンジンはデビュー時点でいずれも2L・4気筒というのが今日的だが、後に直6+ISGユニットも追加される予定だ。
■先進技術も超本気!! EクラスのADASの機能を紹介!!
新型Eクラスのインパネ。インフォテインメント系は5G回線によるOTAアップデートやコンテンツ供給、アプリ追加による機能拡張などに対応
と、ここまでは従来型からの関連も感じられる想定内の進化だが、一方で著しく進んだのが内装・装備関連のハイテク化だ。
車載の電子アーキテクチャーは今後のメルセデスのモデルへの順次搭載を予定しているMBOSを一部先取りし、インフォテインメント系は5G回線によるOTAアップデートやコンテンツ供給、アプリ追加による機能拡張などに対応し、情報や表現もリッチ化を進めている。
EQシリーズで展開されたハイパースクリーンに準じた表現能力を持つスーパースクリーンやドルビーアトモスに対応したブルメスターの4Dサラウンドシステムなどもオプションで用意されるなど、最先端のデジタル体験がもたらされる。
それは走りにおいても然りで、ちょっと驚かされたのがADASだった。車線や車間距離の制御など、単にタスクをこなすというだけではなく、そのコントロールのきめ細かさや人間的感覚とのズレのなさといった質感の面でさらなる進化を果たしている。
欧州仕様では搭載するHERE製のダイナミックマップとADASとの連動をすでに実現している。
その内容は、制限速度の変化にピタリと合わせて速度を滑らかに抑制する、高速道路ではドライバーの承認を待たずとも前後の車間を見極めてスムーズに追い越しを完遂するなど、レベル2にしてもはやレベル3をも超えるかのごとき巧みなコントロールを見せてくれた。
動的質感の面では乗り心地のしなやかさや静かさといった快適性の面でEクラスに期待される上質さをしっかり備えながら、コーナリングでは路面を粘っこく捉え続ける安心感と、スラスラと向きを変える敏捷性とが巧く両立している。
ADASでの挙動も然りだが、人肌感とのズレがないきちんとしたシャシーが作れなければクルマとの信頼関係は築けない、そういうところで長年培ってきたメルセデスの素養が活きているということなのだろうと思う。
●新型メルセデスベンツ Eクラスの注目ポイント
・歴代6代目モデルは正常進化
・3種のサスシステムを設定
・内装関連のハイテク化進む
・レベル2のADASがレベル3並み
●新型メルセデスベンツ Eクラス 諸元表
・グレード:E200
・全長×全幅×全高:4949×1880×1468mm
・ホイールベース:2961mm
・車両重量:1825kg
・エンジン:直4DOHC 1999cc+ターボ+モーター
・トランスミッション:9速AT
・エンジン最高出力:204ps/5800rpm
・エンジン最大トルク:32.6kgm/1600-4000rpm
・モーター出力:23ps/20.9kgm
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次回はS幅2m、E1.9m、C1.85mかな?
コンパクトな高性能車を造る難しさの証明…。