日本で電気自動車の「アット3」と「ドルフィン」を発売し、セダンの「シール」も来春の発売を予定するなど、着実にラインナップを増やしているBYD。ジャパンモビリティショーの現場でBYD Auto Japanの担当者に、この開発スピードの秘密を聞いた。
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BYDの新型EV「ドルフィン」は363万円から。補助金で200万円台も可能
TVCMの放映も始まり、「BYD」というブランドを認知している人も増えているのではないだろうか。
BYDは中国版「シリコンバレー」と言われる深圳(シンセン)で1995年に電池製造からスタートした。自動車事業に参入したのは2003年だったため、自動車メーカーとしては新興勢と言える。
そんなBYDは、2022年3月に純ガソリンエンジン車製造に別れを告げ、BEV(バッテリー電気自動車)とPHEVのメーカーになった。
そしてBYDは、王朝シリーズと海洋シリーズからなる“BYD”、メルセデスとの協業で話題のモデル「D9」を擁する“電座(デンザ、DENZA)”、ハイエンドブランドの“仰望(ヤンワン、Yangwang)”と、既に3ブランドを展開する自動車企業に成長している。
ジャパンモビリティショーでも「アット3」「ドルフィン」「シール」「デンザD9」「ヤンワンU8」と5台を展示した。
日本メーカーのブースと決定的に異なる点は、5車種ともにコンセプトカーではなく“市販”されているクルマということだ。
いかにして、これほどのモデル展開を実現できる開発を行っているのだろうか。ジャパンモビリティショーのBYDブースにおいて、深圳のBYD本社と日頃からやりとりしているBYD Auto Japanの担当者に話を聞いてみた。
若い人材
彼は実際に深圳の本社も訪れたことがあり、まずはスタッフの若さに驚いたそうだ。ほとんどが20~30代だったとのこと。
この点については、先日THE EV TIMESでも取り上げたBMWのソフトウェア開発を担っているポルトガルのクリティカルテックワークスも同様に、若いスタッフが大半だった。
BMWでさえ、ドイツ国内で人材集めが難しくポルトガルに頼った。「若手が少ない」や「人手不足」が常態化し、少子高齢化が進む日本では、より難しい状況と言えるのではないかと不安になる。
メールではなくチャット、企画書よりもまず行動
日本企業は何か新しい機能を開発する際、まずは担当者が企画書を書き、上司に提出、修正を加えて課長に提出、そして部長へ……など、実際にプロジェクトとして動き始めるまでに、時間がかかるのが通例ではないだろうか。
そしてその過程で理解を得られず没になってしまうアイデアもあるだろう。その中には画期的なアイデアもあるかもしれない。
しかしBYDは違う。担当者レベルで何かアイデアを思いついたら、まずやってみるそうだ。そして形になって、それがよければ採用、実装される。
こういった成功体験があれば、現場のモチベーションも上がり、より自由な発想で、面白い機能や製品ができるのではないだろうか。「ヤンワンU8」のタンクターンや「シール」の車内カラオケ機能(離れた場所の他のシールに乗っている仲間とも通信して楽しむこともできる、日本に導入するかは未定)などはまさにその好例だろう。
また、BYD Auto Japanの彼は、日本と深圳とでやりとりをするのはメールではなく、チャットなのだと教えてくれた。
「各位、お疲れ様です」で始まる形式ばったメールではなく、要点をピンポイントで伝えるチャットで連絡する。日本でも若いメンバーが多い会社では同じような連絡手段かもしれないが、まだまだ少ないのではないだろうか。
そんなチャットでは、「新しい機能を開発したので、日本側でも実装しテストして欲しい」という連絡も頻繁にくるらしく、日々対応に追われているそうだ。長年、日本メーカーで仕事をしていた彼も驚くスピードなのだという。
CASEとSDV
さらに深圳からはしばしば「何かクルマでできたら楽しいこと」のアイデアを要求されるのだという。
ソフトウェアディファインドビークル(SDV、ソフトでクルマを作る、ソフトでクルマの価値を上げる)というワードを最近よく耳にする。CASE時代を迎えた自動車業界では、クルマはハードではなくソフトで選ばれるようになるという意味も持つ言葉だ。
電動化と自動運転化が進むと、運転から解放された車内での移動時間をいかに充実した楽しい時間にできるかが勝負になるという。
だから各社は「車内体験」のレベル向上に鎬をけずる。若いパワーで迅速な開発を進めるBYDは高い対応力・競争力を持っていそうで、このSDVの戦いも最前線を走っていきそうな気がする。
日本でもソニーホンダモビリティの「アフィーラ」のように、同じ方向性を向いたクルマがある。ぜひ負けないように頑張って欲しいと思う。
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みんなのコメント
今の日本は昔ながらのやり方に固執しすぎ。
発想の転換は必要。