依然として芸能人各位と富裕層、およびプチ富裕層各位に大人気のメルセデス・ベンツGクラス。そんなGクラスに2021年5月19日、新たなグレード「G400d」が追加された。
G400dは、エントリーグレードであるG350dより44ps/100Nm増強された最高出力330ps/最大トルク700Nmの3L、直6ディーゼルターボエンジンを搭載。
基本的な装備類はG350dと同様だが、標準色以外に12色の有償カラーと左右のステアリング位置が選択でき、さまざまな内装色とスペシャルな装備も用意される「G manufaktur(Gマヌファクトゥーア)プログラム」が設定されたことが、G400dの特徴となっている。
それでいて車両価格はエントリーグレードであるG350dの38万円高でしかないということで、これからGクラスを買おうという人にとっては、G400dの登場によりグレード選択はさらに悩ましいものとなりそうだ。
ここで改めて「なぜGクラスは人気なのか?」に迫ってみたい!
文/伊達軍曹
写真/メルセデスベンツ
【画像ギャラリー】芸能人御用達!変化していないようで結構変化しているベンツGクラス写真集
■2021年5月19日、G400dが追加された
G350dと同じ3L、直6エンジンを搭載しながらもソフトウエアのアップデートなどにより44ps/100Nmアップの330ps/700Nmを発生。G350dより38万円高い1289万円
G63はメルセデスAMGが完全自社開発したV8、4L直噴ツインターボ、585ps/850Nmを搭載。価格は2218万円
まずはメルセデス・ベンツGクラスの歴史をごく簡単におさらいする。
オーストリアのシュタイア・プフという会社とメルセデスが共同開発したNATO軍向けの軍用車というのが、Gクラスの起源。そしてその民生版として1979年に発売されたのが初代Gクラス(W460)だ。
Gクラスというか、当時は「ゲレンデヴァーゲン」という呼称だったわけだが、1990年のモデルチェンジで2代目、つまり「先代」に相当するW463型が登場したが、基本構造やデザインが大幅に変わったわけではなく、内外装が少々モダンな感じになり、4WD機構がフルタイム式になった程度ともいえる。
そして1994年にはゲレンデヴァーゲンから「Gクラス」へと呼称が変わり、マイナーチェンジや年次改良を重ねながら2018年5月まで長らく販売。同年6月、型式名としては同じW463ながら構造やデザインはそこそこ異なる新型にフルモデルチェンジされたというのが、メルセデスベンツGクラスの超ざっくりとしたヒストリーである。
現行Gクラスで安価なG350dの次に売れているのは、車両価格2218万円也の最上級グレードであるメルセデスAMG G63。
……ということで、ある意味「中途半端なグレード」といえなくもないG400dの登場は、もしかしたら大勢に影響を及ぼさないのかもしれないが。
しかしアレだ、2000万円超のG63が飛ぶように(?)売れているメルセデス・ベンツGクラスの日本における人気は、相変わらず非常に高い。
東京の港区界隈を歩いていると、ちょっと大げさに言うなら「通り過ぎる車の20台に1台はGクラス」といった印象を確実に受ける。
G550d。価格は1705万円。搭載されるエンジンは422ps/610Nmを発生する4L、V8ツインターボ
そして高年式の高額輸入車を得意とする中古車販売店で別件の取材をする際も、最近はおおむね2回に1回の割合で「Gクラスの納車」に図らずも立ち会うことになる。本当に、バカ売れしているのである。
そして、いわゆる芸能人各位もGクラスが大好きだ。
ベストカーの調査によれば、まずは明石家さんまさんがGクラスを何台も乗り継いでおり、俳優の玉木宏さんや吉瀬美智子さん、高島礼子さんなどもGクラスユーザー。
そして故人ではあるが「破壊王」の異名をとったプロレスラー橋本真也さんも、当時のG55 AMGに乗っておられた(※G63 AMGだったかもしれない。雑誌のインタビューでご本人の発言を読んだのだが、55か63かの記憶は曖昧だ)。
メルセデス・ベンツGクラスがいつ頃から日本でここまでの人気を博すようになったのかは定かでないが、テレビ番組の企画で、ビートたけしさんが明石家さんまさんのGクラスをペンキ塗れにしたうえで破壊したのが2008年。
しかし破壊ならぬ破壊王の故・橋本真也さんは(筆者の記憶によれば)2000年頃にはすでにAMGのGクラスに乗っており、それどころか、筆者が自動車メディア業界に奉職した1990年代半ばには、もう「Gクラス=芸能人やお金持ちに人気の車」という図式は完全に出来上がっていた。
おそらくは、初代Gクラス(W460)から2代目(W463)へとフルモデルチェンジされた1990年から、日本におけるその人気はスタートしたのであろう。
■なぜ日本ではGクラスがこれほど人気なのか?
ローマ法王のパレード車にも使われているGクラス(写真は2007年)
そして、もちろん世界的に人気のメルセデス・ベンツ Gクラスではあるが、とりわけ日本での人気が高い理由は、基本的な部分では下記のとおりであるはずだ。
1/成功のシンボルとして手に入れたい
「予約が1年先まで満杯のレストラン」や「2時間待ちの行列は当たり前のラーメン店」が、その予約の取りづらさや行列の長さにより、さらなる予約確保の困難や待ち時間の長さを生んでいるのと同じ状況が、Gクラスでも起きている。
つまり「売れているから売れる」という、何事においても日本の市場ではよくある現象である。
メルセデス・ベンツGクラスというクルマが「経済的な成功のわかりやすいシンボル」となったことで、「Gクラスが欲しいというよりも、成功の“シンボル”を手に入れたい。
そのためには、ややわかりにくいディフェンダーとかではなく、どう考えても“ゲレンデ”でしょ」と考える人が多いのだ。
2/普通に使えるSUVだから売れている
上記1のとおりGクラスは「経済的な成功のシンボル」となっているわけだが、同種のシンボルであるフェラーリやランボルギーニは(基本的に)2座式のスポーツカーであるため、乗り手や乗るべきシーンなどがきわめて限定されるプロダクトだ。
しかしGクラスはご存じのとおり定員5名の四角い車であるため、富の象徴であると同時に「買い物や通勤、旅行などにも普通に使える」という側面を持ち合わせている。
例えて言うなら、フェラーリやランボルギーニは「普通のダイヤモンド」で、基本的には家に置いておくか、たまに身につけてデパートやパーティなどに行くぐらいの使いみちしかない。
それに対してGクラスは「ルンバの形と機能を持ったダイヤモンド」だ。富と成功の象徴であると同時に、「お部屋をキレイにする」という実用的な機能も十分に有している。だから、売れるのである。
3/造形や歴史が「日本人好み」である
上記の1と2はもちろんそのとおりであると思ってはいるが、いささか意地の悪い見方でもあるだろう。そういった意地悪な見方以前にGクラスは、もちろん「自動車そのものとして好意的に受け取られているから、よく売れている」のはいうまでもない。
2018年以降の現行型ではやや丸みを帯びたフォルムにはなったが、それでも依然として「スパッと斬り落としたかのような四角四面のフォルム」は、欧州文化的なデコラティブよりも「シンプルな美」を尊ぶ日本人の感性や美意識に強く訴える。
また「NATO軍制式採用の軍用車が源流である」という部分も、ミリタリー系の趣味や文化に惹かれる場合が多い日本人男性の琴線に激しく触れる。
それゆえ、モノコック構造で乗り心地が良い他社製プレミアムSUVと比べれば、さして乗り心地とハンドリング性能が抜群なわけでもないGクラスが、快適な他社製よりもバカ売れするのだ。
Gクラスは過酷なオフロード走行のための頑強な背骨となるラダーフレームを採用。最大3.4mm厚の鋼板製の閉断面サイドメンバーとクロスメンバーによってねじれ剛性が向上。ボディは高強度・超高硬度スチールを使用しアルミニウム製のフェンダー、ボンネット、ドアなどとともに、約170kgの軽量化に貢献
■新車で買うならどのグレード?
ボディサイズは4817×1931×1969mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2890mm。写真はG63AMG
で、そんなメルセデス・ベンツ Gクラスをもしも新車として購入するのであれば、現状のラインナップは下記のとおりとなる。
●G350d|1251万円|286psの3L、直6ディーゼルターボを搭載するエントリーグレード。
●G400d|1289万円|330psの3L、直6ディーゼルターボを搭載する新グレード。G350dよりオプション装備の幅が広い。
●G550|1705万円|422psのガソリン4L、V8ツインターボ搭載の上級グレード
●メルセデスAMG G63|2218万円|585psのガソリンガソリン4L、V8ツインターボ搭載の最上級グレード
これらのうちどれがベストかと問われても、このレベルになると「ご予算とお好みに応じてご自由に……」としか言いようがない。
基本的にはG350dでも何かと十分以上であり、「Gマヌファクトゥーア プログラム」が適用されるG400dはさらに魅力的。
そしてお金があるなら、「一番いいやつ」であるG63が当然ながら一番いい。ただしG550は、このなかではいささか中途半端な存在といえるかもしれない。
とはいえ現在、新車のGクラスは圧倒的大人気であるため、新車の納期はひたすら長い。
販売店のパワーや顧客の「順位」みたいなものにより差はあるようだが、納車まではおおむね1年半から3年はかかるため、一見の新規客がおいそれと普通に注文し、普通に1カ月程度で納車されるという状況ではまったくない。
そのため、新車を買う場合は「注文できるものをとりあえず注文し、あとはひたすら気長に待つ」という作戦を採るか、もしくは昔で言う“新古車”を、街の中古車販売店で購入するしかない。
そういった(昔の言葉で言う)新古車は即納となるのが美点だが、その分だけプレミアム価格となっており、G400dマヌファクトゥーアエディションで2000万円以上、G350d AMGラインで1600万円以上のプライスとなるのが一般的だ。
円形ヘッドライト形状のエアアウトレットや助手席前方のグラブハンドル、3つのディファレンシャルロックを操作するクローム仕上げのスイッチなど継承、デジタルメーターを採用するなど伝統とモダンさを合わせ持つ
■中古車でGクラスを購入する場合、どれを選べばいい?
そういった新車や新古車ではなく「純粋な中古車」としてメルセデス・ベンツ Gクラスを購入する場合は、どのあたりの年式およびグレードを選ぶべきだろうか?
これについても、Gクラスはやたらと長い歴史を持つクルマだけにひと言で端的に「こう!」とまとめるのは難しいのだが、基本的には以下の考え方で臨むのがよろしいとは思う。
■いわゆるイケてる感じのキラキラしたGクラスに乗りたい
■先代末期のG350dロング 中古車相場:760万~1300万円
Gクラスは細かく改良を受けていて、2012年のマイナーチェンジでLEDライトが装着されるなど、内外装が大幅に変更された
★ベストカー厳選中古車 メルセデス・ベンツGクラス 760万円~
乗り味は現行型より若干無骨なニュアンスとなるが、「そこが逆にいい!」とも言え、また現行型以上に四角四面なフォルムにもタイムレスなカッコよさがある。
そして「キラキラしてイケてる感じ」も2016年式以降のG350dなら十分以上であり、ディーゼルターボエンジンのパワーとトルクも、これまた十分以上。
そして数年後の売却額も(距離を大幅に延ばさない限り)なかなかの高値になると予想される。
2012年のマイナーチェンジでインテリアデザインも変更。オーディオやナビを操作するコマンドシステムを採用した
■さらにキラキラした感じのGクラスに乗りたい
■先代末期のG350d ヘリテージ エディション 中古車相場:960万~1400万円
2018年4月に発売された日本限定のG350dヘリテージエディション。当時の新車価格は1190万円
★ベストカー厳選中古車 メルセデス・ベンツGクラス 960万円~
2018年4月に発売された先代Gクラス最後の特別仕様車で、Gクラス39年の歴史をモチーフとした日本限定モデル。
長い歴史のなかで特に人気が高かったボディカラー、プロフェッショナルブルー(原名:チャイナブルー)やライトアイボリーなどの5色を特別設定し、さらにブラックペイント18インチ5ツインスポークアルミホイールと、随所にオブシディアンブラックのアクセントを加える「ナイトパッケージ」も特別装備している。
かなりイケてるエクステリアであり、距離をさほど延ばさなければ、数年後も高値での売却が可能だろう。
ヘリテージエディションのインテリア。本革シート(前席・後席シートヒーター付)やセンターコンソールにHeritage Editionプレートが装着される
■キラキラしてなくていいので、ほどよい予算でGクラスを購入したい
■2000年~2010年頃のG500LまたはG550L 中古車相場:450万~650万円
少し古くても値が落ちず、2000年代のちょっと古いGクラスでも見た目にはあまりわからない。写真は2006年式のG500
★ベストカー厳選中古車 メルセデス・ベンツGクラス 450万円~700万円
先代の中古車でも1000万円オーバーとなるのが一般的なGクラス。それゆえ「そんなカネ、あるはずないだろ!」という各位も多いはず。もちろん筆者もそんなひとりだ。
その場合は、中古車市場でそれなりの数が600万円前後の車両価格で流通している「2000年代のG500(2009年からはG550)」が、ちょうどいい感じの選択肢になるだろう。
2016年以降の末期型と違ってあまりキラキラしていないため、いわゆる富裕層感は特にないが、これはこれで落ち着いており、「逆にシブい」とも言えるだろう。
ただし中古車のコンディションは玉石混交であるため、購入時はメンテナンス履歴や原状などをしっかりと見極める必要がある。
また同時期のG320Lは比較的安価だが、やや非力でかったるいため、価格に惹かれて購入しても、購入後に「ううむ……」と感じてしまうかもしれない。
まぁこのあたりの感じ方は人それぞれなので、もしもG320系を買うという場合は、可能であれば試乗し、その力感をご自身で確かめていただきたい。
2007年式G500のコクピット
以上が「基本的なおすすめグレード&年式」となるわけだが、筆者個人の趣味嗜好からすると「当たり前すぎて、ちょっとつまらないな……」と思ってしまう。
もちろん悪い選択ではないのだが、王道すぎて、同じような車に乗っている人の数が多すぎて、どうにも満足できないのだ。
そして、もしもあなたが筆者と同じような考え方をするタイプであるなら、おすすめはズバリ「ショートボディの先代Gクラス」となる。
ロングボディのGクラスは、なんというかこう「権威!」のようなニュアンスが漂うクルマだが、ショートボディのそれは「軽快!」「普段着!」「若さ!」のような言葉が似合う、スポーティで稀有なプレミアムSUVであるため、ある種の人には大いにおすすめなのだ。
だがロングボディと比べるとタマ数は圧倒的に少なく、そして筆者のようなへそ曲がり各位からの人気はそれなり以上に高いため、ショートボディの中古車相場は決して安くない。具体的には600万円から800万円ぐらい……といったところだ。
安くはないが、「猫も杓子も」といった感じのクルマがどうしても好きになれない人にとっては、その金額を出すに値する素晴らしい選択肢であるとは思う。高いけど……。
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それが運転してる時に出て、一方通行の道を逆走して来ても道を譲れ!などと言う運転者も少なくない現実が有る。