ホンダのミニバン「フリード」に追加されたSUV風のモデル「クロスター」にサトータケシが試乗した。印象はいかに?
車中泊にぴったり
ホンダのフリード+ ハイブリッド クロスターのハンドルを握りながら、このクルマはフツーのミニバンとはちょっと違う、もちろん家族向けのミニバンとしても使うことができるけれど、もっとふさわしい使い方があるのではないかと思った。
それがどんな使い方なのかを記す前に、このモデルについて説明をしておきたい。
5ナンバー枠に収まるフリード/フリード+は、軽自動車を除けばホンダでもっともコンパクトなミニバンだ。フリードが3列シート、フリード+が2列シートで、クロスターというのはフロントマスクや前後バンパーのデザインに手を入れてSUVの風味を加えた仕様。試乗および撮影を行ったモデルはハイブリッドの4輪駆動だから、これ以上付けくわえるものは何もない、てんこ盛りの仕様だ。
ファミリーカー以外の用途を思いついたのは、後席を倒したときの荷室が広大で、これなら寝られる! と、思ったからだ。深夜に出発してはるか彼方を目指し、目的地に到着したら荷室に敷いた低反発マットの上で、寝袋にくるまって明け方を待つ……。
筆者の場合は釣りをイメージしているけれど、サーフィンでもバードウォッチングでもトレイルランニングでも野外フェスでも、なんでも使える。最近の寝袋は高性能だから、スノボやスキーでもいけるかもしれない。
フリード+の後席はただ倒すだけの簡単な構造ではなく、まず座面だけを折りたたんで前席の背もたれの背後に格納する。そこからおもむろに後席背もたれを倒す、いわゆるダブルフォールディング式だから、荷室は広いだけでなく、床がフラットになるのだ。この“車中泊モード”にしたときに、荷室フロアの床下に収納スペースができることも有用だ。
熟成されたi-DCD
でも、ただ荷室が広くて車中泊もできる、というだけだったらそんなクルマはいくらでもある。はるか彼方を目指したいと思ったのは、フリード+が走らせてもなかなかの実力者だったからだ。
まず、ホンダが「i-DCD」と呼ぶシングルモーター式のハイブリッドシステムが、気持ちのいいパワートレインだ。アクセルペダルを踏み込むと、デュアルクラッチ式の7ATがすばやくギアを落とし、小気味よく加速する。
アクセルペダルの踏み加減や走行状況に応じて、パワートレインは、モーターだけで走るEVモード、エンジンだけで走るモード、エンジンとモーターの両方が駆動に関与するハイブリッドモードに切り替わる。
ただし、切り替わっていることはドライバーにはまったく伝わらない。ドライバーが感じるのは、思ったように、気持ちよく加速するということだけだ。
1.5リッターエンジンの最高出力が110ps、モーターが29.5psだから、両方がフル稼働しても決して速くはない。けれど、滑らかさとレスポンスのよさには舌を巻く。そして、「さすがは今年のF1でメルセデスAMGと熾烈な首位争いをしているだけはある」というところまで、考えが飛躍してしまう。
2013年に登場した先代のフィット・ハイブリッドに採用されたこのi-DCDは、スポーティに走れるハイブリッドシステムという位置づけだった。その後、よりモーター駆動の割合を高めたハイブリッドシステムも登場しているけれど、8年の歳月を経てi-DCDも完成の域に達したようだ。
意外なほどしっかり
高速道路やワインディングロードでの安定性も高い。段差や舗装の荒れたところに差し掛かると、4本のサスペンションがしっかりと沈み込んで、路面からのショックを緩和してくれる。路面の状況とスピードから、「これくらいのショックが来るぞ」と身構えるけれど、予想よりショックがはるかに小さいから、いい意味で肩透かしを食らう。
悪路を突破したあとは、上下方向の揺れをビシッと一発で収束させ、後味もすっきりしている。
正直、試乗する前は、「コンパクトなミニバンにSUV風味のお化粧を施した、なんちゃって系」だと、高をくくっていた。けれども試乗を終えたいま、そんな先入観を抱いていたことをお詫びしたい。
気持ちよく加速してくれるパワートレイン、そして懐の深い乗り心地。低反発マットと寝袋、そして釣り道具一式を床下のスペースに積み込んで、地平線の果てを目指したくなる。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
みんなのコメント
ガチで家に居場所が無い人が乗るクルマ。
だから乗ってるのは高齢者が多い