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異形のフェラーリ!! ザガートが手掛けると価格も跳ねる!

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異形のフェラーリ!! ザガートが手掛けると価格も跳ねる!

■フェラーリに有名カロッツェリアが手を加えると価値はでるのか?

 毎年8月中旬に、北米カリフォルニア州のモントレー半島一帯を舞台として「モントレー・カーウィーク」と呼ばれるイベント群が、1週間にわたって開催される。

【画像】異形のスタイル、ザガートが手掛けたフェラーリとは?(27枚)

 この時期、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」や、ラグナ・セカ・サーキットを舞台とする「ロレックス・モータースポーツ・リユニオン」などの超人気イベントに参加するために、全世界から自動車エンスージアストたちが集結する。

 そしてこの1週間には、アメリカ国内のみならずヨーロッパのオークションハウスたちも、大規模なオークションを連日のように開催することになっている。なかでもRMサザビーズ社がモントレー市の中心街で開催する巨大オークションでは、毎年コンクール級のクラシックカーに対して熱烈なビット合戦が展開されるのだが、2020年は新型コロナ禍によって「モントレー・カーウィーク」自体がキャンセルされてしまった。

 そこでRMサザビーズ社は、今年のクラシックカー業界における最新トレンドとなった、ネット上のオンライン限定オークション「SHIFT MONTEREY」を開催。台数・クオリティともに、これまでの対面型オークションにも負けない出品車両を数多く集めた。

 そのなかでもVAGUEが注目したのは、数ある自動車ブランドでも、常にオークションの動静を測るバロメーターとなるフェラーリである。しかも、特別にレアなザガート製ボディを持つ、近現代の超少数製作モデルが2台も出品されていたことだった。

 今回は、その2台ザガート製フェラーリのオークション結果を、「レビュー」としてお伝えしよう。

●1990 フェラーリ348tb ザガート・エラボラツィオーネ

 フェラーリ「348tb ザガート・エラボラツィオーネ」は、アルファ ロメオES30系「SZ」の成功で息を吹き返しつつあったカロッツェリア・ザガートが、さらなる復活を期して企画、1990年から10台限定で製作されたといわれているスペシャルモデルだった。

「Elaborazione」とは「処理」ないしは「推敲」を意味するイタリア語。その名が示すとおり、既存モデルにザガート流のモディファイを加えたコスメティックチューン車で、当時まだデビューから間もない最新モデル「フェラーリ348tb」をベース車に選んでいた。

 1991年の東京モーターショーにおいて、イエローの第1号車が初めて公衆の面前でお披露目される。会場での評価は、なかなか良好だった。

 ところが、この時のザガート社ブースは、筆者の古巣であるコーンズ&カンパニー・リミテッドが設営したフェラーリ社ブースと目と鼻の先。オリジナルの「348tb/348ts」の間近に、そのカスタマイズ車両が展示されたことに、モーターショーのために来日していた当時のフェラーリ首脳陣が不快感をあらわにしていたことを、今でも鮮明に記憶している。

 今回「SHIFT MONTEREY」に出品されたのは、オークションWEBカタログによると、最後に生産された1台とのことである。もっとも有名な第1号車と比べると、エアダムスカートを組み込んだフロントバンパーの意匠がまったく異なっている。

 フェラーリの伝統である楕円形ラジエーターグリルを模したモールドが設けられた初期のモデルと比べると、元来348がフロントにラジエーターを持たないことを強調するかのように、大幅にシンプルなデザインとされている。

 RMサザビーズ社が設定したエスティメート(推定落札価格)は、現況のスタンダードの348tbと比較すると、ほぼ3倍にも相当する22万5000ドル-27万5000ドル(邦貨換算約2400万円-2900万円)という強気なものだったが、希少性や「ザガート製フェラーリ」というストーリー性が加味されることを考慮すれば、妥当と判断されたと推測される。

 はたして2020年8月15日午後(現地時刻)に締め切りとなった競売では、20万5000ドル(邦貨換算約2160万円)まで入札されたのだが、最低落札価格には届くことなく、あえなく流札。「Still For Sale(継続販売)」という残念な結果に終わった。

 さる2019年5月、「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」に際して同じRMサザビーズ社がおこなったオークションでは、もっともアイコニックな第1号「エラボラツィオーネ」が21万8500ユーロ(邦貨換算約2300万円)で落札されたという実績からすると、今回の個体への評価が低かったことには、新型コロナ禍による国際マーケットの冷え込みなどを指摘する声もあることだろう。

 でもこれはあくまで筆者の私見ながら、イエローの1号車と比べてしまうと、今回の出品車両のルックス面の魅力が低いことが、高価落札とならなかった最大の要因と感じられてしまってならないのだ。

■注文主とデザイナー、ふたりの日本人が関係したザガート製フェラーリとは

 フェラーリ「575GTザガート」、通称575GTZは、フェラーリ社が自ら「ワンオフ・プログラム」をスタートさせる直前に、カロッツェリア・ザガートが自主的に製作したスペシャルである。

 企画当時のフェラーリ最上級車「575Mマラネロ」をベースに、ミラノの名門カロッツェリア・ザガートが製作したビスポーク・モデルである。

●2005 フェラーリ「575 GTZザガート」

 この575GTZは、実は日本と深い関わりがあるスペチアーレだ。デザインワークを担当したのは、ザガートにて永らくチーフスタイリストの地位にある日本人デザイナー、原田則彦氏だった。

 そして、当初製作された2台のオリジナルモデルをオーダーしたのは、かつては世界トップクラスの自動車コレクターだった日本人愛好家「Y.H」氏。イタリアのみならず、世界最高峰に位置するブランドであるフェラーリとザガートの「ダブルネーム」作品には、実は2人の日本人が密接に関与していたのだ。

 かねてから原田氏のデザインに惚れこんでいたY.H.氏は、グレー/シルバー2トーンの1号車と、ブラック/グレー2トーンの2号車の2台だけを作らせる条件で、カロッツェリア・ザガートと契約を結んでいたという。

 ところが、製作年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」をはじめとするプレゼンテーションの場で熱狂的な支持を受けたことから、ザガートはもう数台の製作と販売を独断で強行。Y.H.氏を大いに立腹させたと聞いている。

 今回の「SHIFT MONTEREY」オークションに出品されたのは、あとになってザガート主導で作られたうちの1台で、唯一アメリカにデリバリーされた個体とのことである。

 のちに某スーパーカー専門誌の企画で、Y.H.氏のオリジナル575GTZをみっちりと取材、テストドライブする栄誉まで賜った上に、2007年秋に筆者もオーガナイザーの一人として主催した「第1回東京コンコース・デレガンス」では、わざわざ頼み込んで特別展示させていただいた思い出もあるせいか、その兄弟である今回の出品車にいかなる評価が下されるかには、とても興味を抱いていた。

 この個体のオーナーとRMサザビーズ社が設定したエスティメートは、175万ドル-225万ドル(邦貨換算約1億8500万円-2億3800万円)と、現状では史上最後となるザガート製フェラーリに相応しい、高い価格が設定されていた。

 ところが2020年8月14日に締め切られた競売では、150万ドル(邦貨換算約1億6000万円)まで上昇したものの、ここでオークションは終了。この車両のオーナーが秘密裏に示したリザーヴ(最低落札価格)には及ばず、あえなく流札となってしまった。現状では「Still For Sale」となっているので、RMサザビーズの営業部門と個別商談が可能ということだろう。

 ところで蛇足ながら、RMサザビーズのWEBカタログでは、このクルマの創作にも関与したY.H氏のフルネームもローマ字で記されている。でも、若い頃から同氏の薫陶を受けて、本当にお世話になってきた筆者は、ここでは敬意を表するべくあえてイニシャルだけの表記とさせていただいたことを、平にお赦しいただきたい。

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みんなのコメント

3件
  • ザガートって良かったためしがない。
  • ザガートは金持ちには良く見えるのだろうか。

    大抵はノーマルの方が良く感じる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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