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ブガッティの現在と未来 490km/hを突破した人間とのドライブ 車中の話題は電動化の可能性へ

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ブガッティの現在と未来 490km/hを突破した人間とのドライブ 車中の話題は電動化の可能性へ

ブガッティとその公式ドライバー

アンディ・ウォレスの名を知ったきっかけは、ひとそれぞれかもしれない。最近ではブガッティ・シロン・スーパースポーツで490km/hを突破したが、かつてマクラーレンF1で386km/hを超えてみせたことや、初挑戦のル・マン24時間を制したこと、デイトナ24時間で3度優勝したことも、彼の名を世に知らしめた。ブガッティのピロート・オフィスィエル、すなわち公式ドライバーは、そのキャリアをエンジョイしてきた。そして、現在もエンジョイし続けている。

【画像】ブガッティの故郷、モルスハイムを訪ねる 全124枚

彼は最近、愛車のフォルクスワーゲン・ID.3に乗り込んで、英バッキンガムシャーから仏モルスハイムにあるブガッティのファクトリーまで足繁く通う日々を送っている。しかも、フランス北東部のアルザス地方まで、1時間もかからずに走り切る。無駄な休憩時間は少ないほどいいが、彼のそれはおそらくノンストップで走り続ける耐久レースのような感じだ。

モルスハイムに建つファクトリーはクールだ。それはまさしく、ブガッティ本来の拠点である。いまや同じフォルクスワーゲングループのポルシェと、クロアチアのEVメーカーであるリマックが会社の実権を握るが、見た目はなんら変わっていない。

1998年にフォルクスワーゲンがブガッティを復興したとき、グループの首脳陣はおそらく顧客がクルマの注文や受け取り、整備などのためにグループの中枢である独ウォルフスブルグへ足を運ぶだろうと考えた。ところが、そうはならなかった。緑に囲まれたモルスハイムの構内には、小さなミュージアムとレセプションルームが、数少ない厩舎や温室のような建物の合間に置かれる。

ここはもともと貴族の居城だった土地で、近代的なアッセンブリー工場やメンテナンス施設が建設されても、元来あったシャトーはそのままに残され、ここで生産される数百万ポンドのハイパーカーを手に入れたオーナーたちを迎えてくれる。

想像し難い490km/hの世界

フォルクスワーゲングループがドイツに所有するエーラ・レッシェンのテストコースで、ウォレスの手によって490km/hを突破した1台も、ここで造られた。そのときのことを、ウォレスに尋ねると、彼はしばらく考え込み、それからこちらも誘われるような笑みを浮かべた。

「心にもないことを言ってもいいんですよ、ファンタスティックだった、君も絶対やってみたほうがいいよ、ってね。でも、正直なところ、本当にあなたの興味をひく話だと思いますよ。なんといっても、1秒間に140m走るわけですからね。つまり、7秒で1km、1マイルは約11秒ですよ。となると、すべての出来事がとんでもなく素早く起きるんです」。

「想像もできないようなことをひとつ話しましょうか。子供のころ、独楽で遊んだことがありますよね。回すと意志を持ったように動いて、最後は理性を失ったように倒れてしまう。まぁ、それに近いことが、490km/hで走るクルマには起きるんです。タイヤは猛スピードで回って、大きなジャイロスコープのようになります。そこに働く力が非常に強いので、サスペンションジオメトリーを圧倒してしまいます。そうすると、まるでキャスター角がなくなったようになるんです」。

シロンのキャスター角は2.5°。普段は、これがスタビリティの一助となっている。

「クルマが左のほうへ向きはじめて、それを修正したいとき、小さくカウンターを当てれば戻ってくれますよね。ところが、そのまま走り続けていると、それが絶え間なく引き戻されるんです。そうはいっても、450km/hくらいならほとんどどういうこともなくなってしまいますよ」。

本当かと疑いたくなるところだ。しかし、ウォレスの仕事には、顧客やジャーナリストの運転する1600psマシンの助手席に座ることも含まれる。おそらく、それに比べたら自分でステアリングを握るほうがストレスは少ないのだろう。

モーターが内燃機関を凌駕する日

モルスハイムの街なかを走るときも、彼は隣に座ってくれた。ブガッティはこの地で生産されているはずだが、行き交うひとびとは振り返り、驚きに口をポカンと開けていた。

シロン・スーパースポーツの第1陣は、まもなく顧客のもとに届けられる。それはすなわち、シロンの生産も、内燃機関のみを積むブガッティの時代も終わりに近づいている、ということも意味する。なお、500台の生産台数はすべて売約済みだが、突如として破産する注文者もいるかもしれないので、キャンセル待ちリストも存在する。

リマックは、電動化時代のハイパフォーマンスカーで世界をリードしており、ポルシェもその方面には多少の心得がある。今回この地を訪れた建前上の理由は、シロン・スーパースポーツに試乗し、最高回転数で全開にすると1秒間に1000Lの空気を吸い込む、といったような驚くべき数字を堪能することだ。とはいえ、電動化についても、ウォレスと話し合いたいところだ。

このシロンで衝撃的だったことのひとつは、4つのターボのうちふたつが低回転で閉鎖されてレスポンスの改善を図っているにもかかわらず、W16エンジンがリッター200ps近くを発揮することだ。そのため、多少のラグは避けられない。そのパワーのほとばしりかたは、EVではなし得ないものだ。

「EVの加速は強烈で、ゼロ発進ではすべての時点で上回ることができます」とウォレスは述べるが、高い最高速度に達し、それをキープするのは苦手だ。

「どんなクルマであれ、490km/hを出すには、基本的に数秒間の間が空きます。その間、内燃エンジン車ではじつに多くのエネルギーを水とオイルへ送り込んでいますが、冷却システムが温度を安定させてくれるのです。EVでバッテリーからエネルギーを引き出し、インバーターがそれをモーターに必要なパワーへ変換する際には、インバーターが熱を持ちます。エネルギーを引き出すのにも時間は必要ですが、熱から保護するためには電力を削減します。ですから、490km/hに達するほどの長い間、最高出力を出し続けられないのです。とはいえ、いつかはできるようになると確信していますよ」。

電動ブガッティは最強を更新するのか

では、プラグインハイブリッド化されたW16エンジンを積む未来のブガッティは、シロンと同等か、さもなくばそれ以上のトップスピードを出せるのだろうか。

「これまで歴代モデルは、どれもそうでした。今回のプログラムはまだ初期段階で、その答えを知るには早すぎると思います。しかし、新型車が登場するとき、それも新たなブガッティではいつでも、ひとつ前の段階より大きな飛躍をしてみせてきました。それが再現されないと考える理由はありません」。

数ある選択肢からID.3を選んで購入したウォレスは、おそらくその次世代ブガッティをすでにドライブしているのだろう。

「まったく心配はしていません。わたしは電動車がどこをとっても大好きです。電動化の波ははじまっていて、それに抗う術はありません。ですから、それをよろこんで受け入れ、理解すれば、ファンタスティックな出来事があれこれ起きるかもしれませんよ」。

しかしそうしている間に、今乗っているマシンへの集中力が少し削がれていた。われわれはファクトリーへ戻るオートルートの路上にいた。渋滞は軽い。すると、ウォレスがこんなことを口にした。

「もしも空いているところを見つけたら、ギアを2段落として、ひたすら走らせましょうよ」。

もちろん、よろこんで。

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みんなのコメント

4件
  • でっかいエンジン載せて
    空力良ければ速度は出るけど
    凄いのはタイヤですね
    秒速140mだと1秒間に直径679mmのFタイヤが
    66回も回転するんです
    RPMにしたら4000回転です
    ゴムの輪っか回るんです凄いと思いませんか
  • 490km/hを突破した人間とのドライブ

    なんかもうサイヤ人か何かとドライブしているイメージがアタマから離れないんだが…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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