コンパクトSUVの「ヴェゼル」は、ホンダの世界戦略車で、日本では2013年から販売開始された。登場から約6年を経て、今回追加された新グレードが「モデューロX」である。このスポーツ・バージョンは日本でしか購入できない。
「熟練のエンジニアが人の感覚にこだわり、チューニングを施した」とうたうモデューロXは、ガソリン・エンジン仕様とガソリン・エンジン+モーターのハイブリッド仕様が選べる。大きな特徴は、コイル/ダンパーユニットをはじめ、フロントグリルやバンパー、ロワーガーニッシュ、シート、アルミホイールなど、専用パーツが数多く装着されている点だ。
【主要諸元】全長×全幅×全高:4335×1790×1605mm、ホイールベース2610mm、車両重量1390kg、乗車定員5名、エンジン1496cc直列4気筒DOHC(132ps/6600rpm、156Nm/4600rpm)+モーター(22kW/160Nm)、トランスミッション7AT、駆動方式FWD、タイヤサイズ215/55R17、価格367万8400円(OP含まず)。「なぜもっと早く出してくれなかったのか? と、ヴェゼルのオーナーに怒られました」と、開発を手がけたホンダアクセスの担当者はすまなさそうに苦笑した。
従来であれば、6年もたてばモデルチェンジしてもよさそうに思うが、ヴェゼルは、性能もクオリティも、けっして古さを感じさせない。現役で通用するモデルだけに、今、このタイミングでのモデューロX仕様の追加でも違和感はない。
エクステリアはフロントグリルやフロントエアロバンパー、LEDフォグライト、リアエアロバンパーなどが専用デザインになる。センターキャップはモデューロのロゴ入り専用デザイン。モデューロXは、もとになるモデルに比べ洗練されていた。そもそもヴェゼルは、操縦安定性といい、段差ごえなども得意とする足まわりの設定といい、完成度の高いモデルだった。今回はそれら長所をより引き立てるためのチューニングが施されている。
「ハイブリッド仕様はとりわけ直進安定性とフラットライドを重視しチューニングを施しました。ガソリン・エンジン仕様は直進安定性と応答性を重視しました」
開発を指揮したホンダアクセスの苗代圭一郎氏は、そう述べた。さらに、ハンドリング向上のため、ボディの空力特性を改善したという。装着されたエアロパーツによって、風の外乱による速度低下を防ぐとともに、ダウンフォースなどを積極的にうむそうだ。
フロントシートはヘッドレスト一体型。シート表皮は人工皮革。フロアカーペット専用デザイン。モデューロXのアルミ製エンブレム付き。よりシャープに試乗コースは、横浜のみなとみらい周辺。一般道を走り、そのあと横須賀方面に向かう交通量の少ない高速道路を走った。高速道路は、複数のカーブと直線路が組み合わされている。実際走ると、モデューロXの長所がいかんなく発揮される道だった。
カーブでは、すっとノーズが進む方向を向き、ボディの動きは安定している。もとになるヴェゼルよりもステアリングの応答性がよりシャープになっている印象だ。
サスペンションは専用タイプ。最低地上高は170mm。搭載するパワーユニットはエンジン1496cc直列4気筒DOHC(132ps/6600rpm、156Nm/4600rpm)+モーター(22kW/160Nm)。トランスミッションは7AT。最小回転半径は5.3m。足まわりはけっして硬すぎない。路面の段差ごえでは、じつにうまくショックを吸収する。約1.3tという比較的軽量なボディのおかげで、加速のピックアップはよいし、レーンチェンジのときの動きは軽快だ。
ハイブリッド仕様、ガソリン仕様ともに、パワーユニットには手がくわえられていない。どちらもコンパクトなボディに十分な加速力を与える。ただし、実用燃費はハイブリッドのほうがよく、ガソリン仕様より6~7km/Lよかった。しかも、ハイブリッド仕様のほうがガソリン仕様より約5万円安い。経済性を重視する人はハイブリッド仕様を選べばよいだろう。
ガソリン仕様は1.5リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。搭載するエンジンは、1496cc直列4気筒DOHCターボ(172ps/5500rpm、220Nm/1700~5500rpm)。トランスミッションはCVTのみ。ガソリン仕様はFWD(前輪駆動)のみ。高速道路では直進性がよく、“信頼して運転できるクルマ”、という印象だった。ただし、路面からのノイズの侵入が大きいのは気になった。上質な雰囲気のインテリアとマッチしていないのが惜しい。もうひとつは、ダンパーの設定のせいか、路面のゆるやかな起伏が連続するところで、乗員の頭が上下に揺れるのが気になった。
価格上昇分は妥当かヴェゼルはパッケージングが秀逸であるが、その美点はモデューロXでも変わらない。リアシートは着座位置がやや高めに設定され、頭上も足まわりも空間に余裕がある。フロントシート下への足入れ性もよく、長時間乗っていても疲れなさそうだ。それでいてラゲッジルームは広い。
8インチ プレミアム インターナビは20万9000円のオプション。ステアリング・ホイールはパドルシフト付き。カラータイプのマルチインフォメーションディスプレイ付きのメーターパネル。モデューロXと標準モデルのわかりやすい違いはエクステリアだ。とくに、Xの字をモチーフにしたというフロントまわりの違いは大きい。グリル、ヘッドランプ、バンパーは標準モデルと大きく異なる。
フロントまわりは光沢あるグロスブラック仕上げなので、ホワイトの外装色と組み合わせるとよく目立つ。フォグランプまわりの大型ガーニッシュもスポーティな印象を受ける。
リアシートはセンターアームレスト&リクライニング機構付き。リアシートの座面は跳ね上がる。ラゲッジルーム容量は393リッター。リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。価格は、ハイブリッド仕様のFWD(前輪駆動)が346万7200円(標準モデルは258万6018円)、4WDが361万7900円(同280万6018円)。ガソリン仕様はFWDのみの設定で352万8800円(同295万6800円)。価格差はさきに書いたとおりの専用装備のぶん、ということになる。標準モデルより約60~80万円高いが、専用装備の内容を考えれば妥当であると思う。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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