現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > モーターと電子制御テクノロジーの相性は?氷上走行でわかった日産「ノート e-POWER 4WD」の実力

ここから本文です

モーターと電子制御テクノロジーの相性は?氷上走行でわかった日産「ノート e-POWER 4WD」の実力

掲載 更新 8
モーターと電子制御テクノロジーの相性は?氷上走行でわかった日産「ノート e-POWER 4WD」の実力

2021-2022の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した日産「ノート」シリーズ。その寒冷地でのポテンシャルを探るため、長野県女神湖で開催されたノートとノート・オーラの氷上試乗会に向かった。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考過程では、積雪期の性能は未評価だった仲で迎えた今回の試乗会。期せずしてスケートリンク並みに磨き上げられた特設コースでは、最新の4WD技術「eパワー4WD」を搭載した両車がメディアやジャーナリストたちを待っていたのである。

待ちに待っていた恒例イベントが持つ意味

最新の先進運転支援システムを全車に標準装備!2.0ℓTDIエンジン、7速DSGを採用したフォルクスワーゲンの新型「Passat」シリーズ

「義に背けば勝っても勝ちではなく、義を貫けば負けても負けではない」。以前、目にした書道色紙に書かれていた井伊直孝の言葉である。徳川秀忠、家光、家綱と三代にわたって将軍を支え、徳川幕府の礎を築いた直孝の一文が、最近では空しく響くことすらある。

それでも我々の日常には大なり小なり「大義」は必要だと思う。これまでの方針を変えるにしても、新たなビジネスチャンスに踏み出すにしても、いや自らのファッションアイテムを購入するときですら、その行為を必然とする正当な理由のようなもの。その大義さえ整えば、多少の無理や難題はクリアできる。

などと考えながら日産が開催した「女神湖氷上試乗会」の場に立っている。1月下旬、湖面を覆った張った氷の上に2021-2022「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したコンパクトカー、ノート&ノート・オーラを筆頭に、リーフやスカイライン、そしてGT-Rまでが揃い、我々メディアを迎えてくれている。これだけのクルマや参加者の重量、さらに走行時の衝撃を支える氷の状態などを考えると、1年でもっとも冷え込むこの時期がベストなのだろう。確かに空は晴れ渡ってはいるが、吹き付ける寒風が肌を鋭く刺してきていた。

実はここ、女神湖(長野県)は自動車メーカーやタイヤメーカーの氷上テストでは聖地的存在。東京からのアクセスの良さもあり、各社によるテストや試乗会が多く行われる。天候が安定し、良好な氷の状態が確保されれば、コースも広く、エスケープゾーンも広めに確保できることで、アベレージ速度も高く設定でき、日常に近い走りの中で色々なことが試せるわけだ。ただし野外コースだけに天候にも大きく左右され、開催が中止になったり、氷が割れて車両が落ちたりと言うアクシデントに見舞われることもあり得る。

そのような中で日産の「女神湖氷上試乗会」は新型コロナ禍直前まで、まさに恒例ともいえるイベントとして定着していた。そして今回、湖や周辺の環境保全と、可能な限りの感染対策を施した上で、試乗会が行われた。その主役となったのが昨年8年ぶりにフルモデルチェンジされ、「e-POWER」と呼ばれるハイブリッドシステム専用モデルとなったノートシリーズ。エンジンを発電だけに使用し、駆動はすべてモーターが行う「e-POWER」、それも最新の4WD技術である「eパワー4WD」を搭載したモデルの氷上での走りを試せるのである。極限の路面で通常のFFだけでなく、4WDでも試乗できるのであるのだから、そこには試乗会開催の大義がしっかりと存在していたと思う。

すべての動きを安定方向に、ソフトにコントロールする

主役となったのはノートシリーズの「eパワー4WD」を搭載した4WDモデル。これまでも濡れた路面や未舗装路など、滑りやすい路面で高い安定感を見せてきた4WDだが、今回は氷の上に積もった雪を手で払うと、すぐにスケートリンク並みのテカテカの氷が顔を出す特設コース。一般路なら、間違いなく通行止めになるレベルの路面状況だ。さすがに少々ナーバスになっていると、日産自動車のチーフマーケティングマネージャーの丸地隆史氏が、

「まぁ安心して走ってください」と笑顔で話しかけてきた。

「高度な電子制御により“滑りを事前に察知しながら、いかに安定して走らせるか”を追求した4WDシステムです。その安定感の高さにはびっくりしますよ」と自信たっぷりにスタートをうながすのだ。

さっそくコースに走り出して加速。少しアクセルを踏み込みすぎたかと思った瞬間、4輪が制御され。タイヤが極力空転しないようにコントロールして路面を掴んでいることがこちらにも伝わってくる。姿勢も可能な限り進行方向に向いたまま、まっすぐに加速していく。

つぎに迫ってくるのはコーナー。加速以上に気を遣うブレーキングだが、アクセルを緩めるだけで、過剰なブレーキにならないようにスリップを抑えながら、確実に減速する。これはアクセルペダルだけで加・減速から停止まで回生力を利用して操作できる「e-PEDAL」による走行フィーリングそのもの。懸念していたギクシャク感やコーナーの外に滑っていってしまうアンダーステアが極力抑えられ、ツルツルの路面をしっかりと捉えながら、走ることが出来たのである。さすがこれだけ滑りやすい氷上ではFFのコントロールでは少々手こずったのだが、4WDの威力はさすがの安定感である。

以前、パワートレーン担当主幹の羽二生倫之氏の、

「e-PEDALを含め、フラットな走りを実現するためのサスペンション開発など、本当に苦労しました。そして、あらゆる路面状況でも、自然で違和感のない走りに仕上げたつもりです」という言葉を思い出した。アクセルを緩めれば、コーナリングでは無理をしない限り、しっかりと狙ったラインをトレースしていく感覚は安心感があった。

そこで、つぎの周回ではそうした高度な電子制御をカット。するとこれが、まっすぐ加速しないし、カーブでは曲がり切らず外に飛び出したり、逆にオーバーステアとなってドリフト状態になったり、スピンしたりと、もう大変。電子制御の重要性を思い知るのだが、実は、白状すればこれも楽しみなのである。主役のノートのFFと4WDの違いだけでなく、スーパースポーツのGT-Rまで試せるのであるから、その面白さは格別だ。

一般路でこんな走りをすれば社会的に許されないどころか、事故が起きれば一大事である。しかし、サーキットやクローズドの特設コースなら、ルールを守りながら自己責任で何でも試せる。つまり一般路では自己に結びつくような極限状況をも試せる貴重な機会なのだ。誰もが自らの運転スキルを競うようにコースインし、つるつるの状態で電子制御に頼らず、どこまで走れるかを試す。同時に優れた電子制御と、FFとの比較で4WDの恩恵がどれほどのものかを、改めて確認できるのである。こうしたクルマの安全性向上というサスティナブルな大義があるお陰で、ドリフトを楽しんだりする小さな背徳も許されるような気になる。次回も屈託なくこのイベントが開催できることを祈りながら、帰路に就いた。

ノートシリーズの他、GT-R、EVのリーフ、コンパクトSUVのキックス、FRのスカイランなどが揃えられた。

「NISSAN Intelligent Winter Drive」と名付けられた試乗会。一般道路を模したコースや8の字旋回、定常旋回と八の字、そしてパイロンスラロームなどのコースで多くのテストが出来た。

試乗日はマイナス10度という冷え込み。氷上コンディションは良好だった。

無理をせず、電子制御に頼って走っていると滑りやすい路面でも安定感が高くなる。

リアを滑らせ、ドリフト状態での安定感なども特設コースだからこそ試せる“非日常”。

定常円コースではいかにクルマをコントロールしながらパイロンを中心にドリフト状態を継続できるか、を試す。

定常円コースを上から見た状態。アスファルト路面とは比べようもないほど繊細なアクセル操作が求められる。

主役のノート並みに試乗希望が多かったGT-R。ハイパワースポーツのドライビングも高度な制御で安定感がある。

(価格)
2,445,300円(ノート X FOUR/税込み)

<SPECIFICATIONS>

ボディサイズ全長×全幅×全高:4,045×1,695×1,520mm
車重:1,340kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:モーター
発電用エンジン:直列4気筒DOHC 1,198cc
最高出力:60kw(82PS)/6,000rpm
最大トルク:103Nm(10.5kgm)/4,800rpm
モーター(前)最高出力:85kw(116PS)/2,900~10,341rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/0~2,900rpm
モーター(後)最高出力:50kw(68PS)/4,775~10,024rpm
最大トルク:100Nm(10.2kgm)/0~4,775rpm
問い合わせ先:日産:0120-315-232

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

【欧州】トヨタ“2代目”「C-HR」なぜ日本で売らない!? 最新版は“プリウス顔”の超カッコイイ「クーペSUV」に! 初代「大ヒット」でも未導入な理由とは
【欧州】トヨタ“2代目”「C-HR」なぜ日本で売らない!? 最新版は“プリウス顔”の超カッコイイ「クーペSUV」に! 初代「大ヒット」でも未導入な理由とは
くるまのニュース
三菱ケミカルの植物由来プラ、ホンダ『X-ADV』に初採用
三菱ケミカルの植物由来プラ、ホンダ『X-ADV』に初採用
レスポンス
これが新型プレリュードの市販型!?マジカルシフト「Honda S+ Shift」をひっさげて、北米には2025年後半、欧州市場には2026年初頭から投入
これが新型プレリュードの市販型!?マジカルシフト「Honda S+ Shift」をひっさげて、北米には2025年後半、欧州市場には2026年初頭から投入
Webモーターマガジン
日産の軽&コンパクトカー!! [ルークス]と[ノート]買うならどっちだ!?
日産の軽&コンパクトカー!! [ルークス]と[ノート]買うならどっちだ!?
ベストカーWeb
1/22申込締切【Season3】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.2「水素社会実現に向けたトヨタの取組み」
1/22申込締切【Season3】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.2「水素社会実現に向けたトヨタの取組み」
レスポンス
“ランクル顔”のトヨタ「ルーミー」が完成!? まるで本格四駆な「ランドクルーミー」ESBのカスタム仕様! 東京オートサロン2025で公開へ!
“ランクル顔”のトヨタ「ルーミー」が完成!? まるで本格四駆な「ランドクルーミー」ESBのカスタム仕様! 東京オートサロン2025で公開へ!
くるまのニュース
「ミニバンなんて一生乗るかよ」なライターが一瞬で虜に! 15年落ち16万kmのヴォクシーを買ったらあまりの快適さに感動不可避だった!!
「ミニバンなんて一生乗るかよ」なライターが一瞬で虜に! 15年落ち16万kmのヴォクシーを買ったらあまりの快適さに感動不可避だった!!
WEB CARTOP
ブガッティの新境地! スーパーカーを飾る超ラグジュアリーなガレージ「ブガッティ・エディションFG-01ガレージ」が発売
ブガッティの新境地! スーパーカーを飾る超ラグジュアリーなガレージ「ブガッティ・エディションFG-01ガレージ」が発売
VAGUE
スズキ スイフトスポーツの最終モデルを2025年に発売
スズキ スイフトスポーツの最終モデルを2025年に発売
Auto Prove
「ネオクラシック」バイクの傑作! カワサキ「Z900RS」“フルカスタム”車両登場! 漆黒ブラック×鮮烈イエローボディが”渋い”! ストライカーワークスから発売
「ネオクラシック」バイクの傑作! カワサキ「Z900RS」“フルカスタム”車両登場! 漆黒ブラック×鮮烈イエローボディが”渋い”! ストライカーワークスから発売
くるまのニュース
日本でのMotoGP人気を上げるために「これまでできなかったこと」をやりたい。中上貴晶が考える”開発ライダー”以外の新たな役割
日本でのMotoGP人気を上げるために「これまでできなかったこと」をやりたい。中上貴晶が考える”開発ライダー”以外の新たな役割
motorsport.com 日本版
キャデラックF1は経験あるドライバーとアメリカ人のラインアップを目指す。ファンが期待するリカルドは加入説を否定
キャデラックF1は経験あるドライバーとアメリカ人のラインアップを目指す。ファンが期待するリカルドは加入説を否定
AUTOSPORT web
トヨタ育成のホープ、それぞれのSFテスト。昇格目指し「人生をかけて」臨んだ野中誠太、胃もたれ寸前の“特濃”経験を消化中の小林利徠斗
トヨタ育成のホープ、それぞれのSFテスト。昇格目指し「人生をかけて」臨んだ野中誠太、胃もたれ寸前の“特濃”経験を消化中の小林利徠斗
motorsport.com 日本版
スズキ、「スイフトスポーツ」にファイナルエディション 2025年11月まで期間限定生産
スズキ、「スイフトスポーツ」にファイナルエディション 2025年11月まで期間限定生産
日刊自動車新聞
最新は最良か!? BMWのツーリングウエッポン 新型「R 1300 GSアドベンチャー」をスペインで試す!
最新は最良か!? BMWのツーリングウエッポン 新型「R 1300 GSアドベンチャー」をスペインで試す!
バイクのニュース
「水平対向エンジン搭載」スバルの個性派SUV「レヴォーグ レイバック」が着実進化! 全身“黒コーデ”の精悍な特別仕様車に注目です
「水平対向エンジン搭載」スバルの個性派SUV「レヴォーグ レイバック」が着実進化! 全身“黒コーデ”の精悍な特別仕様車に注目です
VAGUE
「このルックスの良さは反則でしょ!」BMWの新型レトロスポーツ『R 12 S』に、SNSでは絶賛の声
「このルックスの良さは反則でしょ!」BMWの新型レトロスポーツ『R 12 S』に、SNSでは絶賛の声
レスポンス
「ハチロク顔4ドアセダン」がスゴかった! 前から見たら初代86も…横からはセダン!? 学生手掛けた「謎のハチロクカスタム」とはなんだった?
「ハチロク顔4ドアセダン」がスゴかった! 前から見たら初代86も…横からはセダン!? 学生手掛けた「謎のハチロクカスタム」とはなんだった?
くるまのニュース

みんなのコメント

8件
  • E-Power四駆はかなり出来が良く、自動車ジャーナリストも絶賛しているね。
    ただ、日産の悪癖でこういう良い評判のデバイスを既存車種にフィードバックするのが遅く、販売に結びつけることが出来ていないね。キックスやリーフになぜ導入しないのか理解に苦しむね。
  • 桜が咲き始める時期に宣伝して草
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

229.9306.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0310.0万円

中古車を検索
ノート e-POWERの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

229.9306.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0310.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村