2021-2022の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した日産「ノート」シリーズ。その寒冷地でのポテンシャルを探るため、長野県女神湖で開催されたノートとノート・オーラの氷上試乗会に向かった。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考過程では、積雪期の性能は未評価だった仲で迎えた今回の試乗会。期せずしてスケートリンク並みに磨き上げられた特設コースでは、最新の4WD技術「eパワー4WD」を搭載した両車がメディアやジャーナリストたちを待っていたのである。
待ちに待っていた恒例イベントが持つ意味
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「義に背けば勝っても勝ちではなく、義を貫けば負けても負けではない」。以前、目にした書道色紙に書かれていた井伊直孝の言葉である。徳川秀忠、家光、家綱と三代にわたって将軍を支え、徳川幕府の礎を築いた直孝の一文が、最近では空しく響くことすらある。
それでも我々の日常には大なり小なり「大義」は必要だと思う。これまでの方針を変えるにしても、新たなビジネスチャンスに踏み出すにしても、いや自らのファッションアイテムを購入するときですら、その行為を必然とする正当な理由のようなもの。その大義さえ整えば、多少の無理や難題はクリアできる。
などと考えながら日産が開催した「女神湖氷上試乗会」の場に立っている。1月下旬、湖面を覆った張った氷の上に2021-2022「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したコンパクトカー、ノート&ノート・オーラを筆頭に、リーフやスカイライン、そしてGT-Rまでが揃い、我々メディアを迎えてくれている。これだけのクルマや参加者の重量、さらに走行時の衝撃を支える氷の状態などを考えると、1年でもっとも冷え込むこの時期がベストなのだろう。確かに空は晴れ渡ってはいるが、吹き付ける寒風が肌を鋭く刺してきていた。
実はここ、女神湖(長野県)は自動車メーカーやタイヤメーカーの氷上テストでは聖地的存在。東京からのアクセスの良さもあり、各社によるテストや試乗会が多く行われる。天候が安定し、良好な氷の状態が確保されれば、コースも広く、エスケープゾーンも広めに確保できることで、アベレージ速度も高く設定でき、日常に近い走りの中で色々なことが試せるわけだ。ただし野外コースだけに天候にも大きく左右され、開催が中止になったり、氷が割れて車両が落ちたりと言うアクシデントに見舞われることもあり得る。
そのような中で日産の「女神湖氷上試乗会」は新型コロナ禍直前まで、まさに恒例ともいえるイベントとして定着していた。そして今回、湖や周辺の環境保全と、可能な限りの感染対策を施した上で、試乗会が行われた。その主役となったのが昨年8年ぶりにフルモデルチェンジされ、「e-POWER」と呼ばれるハイブリッドシステム専用モデルとなったノートシリーズ。エンジンを発電だけに使用し、駆動はすべてモーターが行う「e-POWER」、それも最新の4WD技術である「eパワー4WD」を搭載したモデルの氷上での走りを試せるのである。極限の路面で通常のFFだけでなく、4WDでも試乗できるのであるのだから、そこには試乗会開催の大義がしっかりと存在していたと思う。
すべての動きを安定方向に、ソフトにコントロールする
主役となったのはノートシリーズの「eパワー4WD」を搭載した4WDモデル。これまでも濡れた路面や未舗装路など、滑りやすい路面で高い安定感を見せてきた4WDだが、今回は氷の上に積もった雪を手で払うと、すぐにスケートリンク並みのテカテカの氷が顔を出す特設コース。一般路なら、間違いなく通行止めになるレベルの路面状況だ。さすがに少々ナーバスになっていると、日産自動車のチーフマーケティングマネージャーの丸地隆史氏が、
「まぁ安心して走ってください」と笑顔で話しかけてきた。
「高度な電子制御により“滑りを事前に察知しながら、いかに安定して走らせるか”を追求した4WDシステムです。その安定感の高さにはびっくりしますよ」と自信たっぷりにスタートをうながすのだ。
さっそくコースに走り出して加速。少しアクセルを踏み込みすぎたかと思った瞬間、4輪が制御され。タイヤが極力空転しないようにコントロールして路面を掴んでいることがこちらにも伝わってくる。姿勢も可能な限り進行方向に向いたまま、まっすぐに加速していく。
つぎに迫ってくるのはコーナー。加速以上に気を遣うブレーキングだが、アクセルを緩めるだけで、過剰なブレーキにならないようにスリップを抑えながら、確実に減速する。これはアクセルペダルだけで加・減速から停止まで回生力を利用して操作できる「e-PEDAL」による走行フィーリングそのもの。懸念していたギクシャク感やコーナーの外に滑っていってしまうアンダーステアが極力抑えられ、ツルツルの路面をしっかりと捉えながら、走ることが出来たのである。さすがこれだけ滑りやすい氷上ではFFのコントロールでは少々手こずったのだが、4WDの威力はさすがの安定感である。
以前、パワートレーン担当主幹の羽二生倫之氏の、
「e-PEDALを含め、フラットな走りを実現するためのサスペンション開発など、本当に苦労しました。そして、あらゆる路面状況でも、自然で違和感のない走りに仕上げたつもりです」という言葉を思い出した。アクセルを緩めれば、コーナリングでは無理をしない限り、しっかりと狙ったラインをトレースしていく感覚は安心感があった。
そこで、つぎの周回ではそうした高度な電子制御をカット。するとこれが、まっすぐ加速しないし、カーブでは曲がり切らず外に飛び出したり、逆にオーバーステアとなってドリフト状態になったり、スピンしたりと、もう大変。電子制御の重要性を思い知るのだが、実は、白状すればこれも楽しみなのである。主役のノートのFFと4WDの違いだけでなく、スーパースポーツのGT-Rまで試せるのであるから、その面白さは格別だ。
一般路でこんな走りをすれば社会的に許されないどころか、事故が起きれば一大事である。しかし、サーキットやクローズドの特設コースなら、ルールを守りながら自己責任で何でも試せる。つまり一般路では自己に結びつくような極限状況をも試せる貴重な機会なのだ。誰もが自らの運転スキルを競うようにコースインし、つるつるの状態で電子制御に頼らず、どこまで走れるかを試す。同時に優れた電子制御と、FFとの比較で4WDの恩恵がどれほどのものかを、改めて確認できるのである。こうしたクルマの安全性向上というサスティナブルな大義があるお陰で、ドリフトを楽しんだりする小さな背徳も許されるような気になる。次回も屈託なくこのイベントが開催できることを祈りながら、帰路に就いた。
ノートシリーズの他、GT-R、EVのリーフ、コンパクトSUVのキックス、FRのスカイランなどが揃えられた。
「NISSAN Intelligent Winter Drive」と名付けられた試乗会。一般道路を模したコースや8の字旋回、定常旋回と八の字、そしてパイロンスラロームなどのコースで多くのテストが出来た。
試乗日はマイナス10度という冷え込み。氷上コンディションは良好だった。
無理をせず、電子制御に頼って走っていると滑りやすい路面でも安定感が高くなる。
リアを滑らせ、ドリフト状態での安定感なども特設コースだからこそ試せる“非日常”。
定常円コースではいかにクルマをコントロールしながらパイロンを中心にドリフト状態を継続できるか、を試す。
定常円コースを上から見た状態。アスファルト路面とは比べようもないほど繊細なアクセル操作が求められる。
主役のノート並みに試乗希望が多かったGT-R。ハイパワースポーツのドライビングも高度な制御で安定感がある。
(価格)
2,445,300円(ノート X FOUR/税込み)
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,045×1,695×1,520mm
車重:1,340kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:モーター
発電用エンジン:直列4気筒DOHC 1,198cc
最高出力:60kw(82PS)/6,000rpm
最大トルク:103Nm(10.5kgm)/4,800rpm
モーター(前)最高出力:85kw(116PS)/2,900~10,341rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/0~2,900rpm
モーター(後)最高出力:50kw(68PS)/4,775~10,024rpm
最大トルク:100Nm(10.2kgm)/0~4,775rpm
問い合わせ先:日産:0120-315-232
TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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みんなのコメント
ただ、日産の悪癖でこういう良い評判のデバイスを既存車種にフィードバックするのが遅く、販売に結びつけることが出来ていないね。キックスやリーフになぜ導入しないのか理解に苦しむね。