“300”と同じプラットフォームを採用
「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」のフレーズが有名なトヨタの本格クロスカントリーモデル「ランドクルーザー(ランクル)」には、フラッグシップのステーションワゴン系“300”、日常用途もカバーするライトデューティー系“250”、ヘビーデューティー系“70”の3兄弟がラインナップされている。
今回試乗したのは、その中でも「中核を担う」とトヨタがうたう“250”シリーズだ。用途の9割くらいを占めると思われる街中の一般道や高速でのフィーリングを確かめてみた。
“250”の開発コンセプトは、「質実剛健を追求し、生活と実用を支え、ユーザーに信頼されるクルマ」というもの。先代となる「ランドクルーザー プラド」がハイクラスな豪華路線を求めていたのに対して、ランクルの「原点回帰」を追求したのが今回の“250”だ。
採用したのは、トップモデルの“300”と同じ「GA-Fプラットフォーム」。ボディサイズの全長4925mm、全幅1980mm、全高1925mm(ZXは1935mm)は、長さが“300”よりわずかに短くなったぐらいで、あとはほぼ同じ。ということは、“250”はなかなか大きな体躯を備えていることになる。
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搭載する1GD-FTV型2.8L直列4気筒ディーゼルターボエンジン(自然吸気2.7Lガソリン版もあり)は、最高出力150kW(204PS)/3000~3400rpm、最大トルク500Nm/1600~2800rpmを発生。このエンジンはアドブルーを使用する環境対策万全の最新ディーゼルで、電子制御8速オートマチック(Direct Shift-8AT)を組み合わせて、前後のトルク配分をコントロールするトルセンLSDのフルタイム4WDシステム(ローレンジ付き)を駆動する方式だ。
3.4Lガソリンと3.3LディーゼルのV6に10速ATを組み合わせた“300”に比べたら、エンジンの気筒数と、変速機の段数が2つ少ない、ということから、“300”のワンランク下に位置しているという“250”の立ち位置というか、ヒエラルキーが明確にあることが理解できる。
さすが最新設計、走りがモダン!
ではその走りはどうかというと、とてもいいのだ。試乗車は、最上位グレードのZX(3列シート7人乗り)。車重が2.4t以上あるにも関わらず、スタート時はボディがスッと前に出る。8段ギアの1速が低いギア比であるのと、直列4気筒ディーゼルエンジンが発揮する低回転域からのトルクによって、駆動力がしっかりと路面に伝わっている感覚がダイレクトにわかる。
そして、ラダーフレーム&リジッドアクスルサス特有のクセであるボディの揺らぎが上手に押さえ込まれているので、まるでモノコックボディの普通車に乗っているような、快適な乗り味が実現できているのだ。これは、高速道路を走っても同じ。直進性が優れているので、当て舵を与える必要がなく真っ直ぐ走る。 “300”や“70”で感じた、加速時のノーズアップや減速時のノーズダイブというピッチングの動きは影を潜め、さらにコーナリング時に顔を出していたボディの上下が捩れるようなヨーイングが感じられない。
唯一“250”だけが採用した電動パワステのチューニングの良さも効果を発揮していて、さすが、ランクル兄弟の中で最も設計年次が新しいことを証明している。
発進時や、高速への合流時にアクセルを強く踏み込むと、「ガラガラ」というディーゼル音は、結構車内に侵入してくる。ただしこれは、大きなクロカンモデルを操っているというエンターテインメントの一つと考えればいいわけだ。一方でクルージングを始めると、エンジンは低回転で粛々と回り始めるので、音は全く気にならなくなる。
ブラック塗装の20インチホイールに装着したダンロップ製SUV用「グラントレックPT22」(265/60R20サイズ)はトレッドデザインが細かなサマータイヤなので、それも静かな走りに寄与している。ZXは14スピーカーの「JBLプレミアムサウンドシステム」を搭載していて、それを楽しむことができる余裕の静粛性能を身につけている。
2時間ほど走り回った時の燃費は9.8km/Lを表示(WLTCモード燃費は11.0km/L)。80Lの燃料タンクを軽油で満たせば、相当な航続距離が見込める。
内外装だってモダン
試乗車が纏うアバンギャルドブロンズメタリックという長い名称のボディカラーは、雨天でほの暗かった試乗日の天候にマッチしていて、渋く輝いている。ボディは垂直と水平な面を基調にした四角いもので、他のランクルにないモダンなスタイルだ。販売店装着オプションとして丸目モデルも選べるようで、こちらはお好みで。
高い位置にあるドライバーズシートに収まった時の視界は、中央が凹面になったボンネット形状と水平のダッシュボード、低い位置にある左右のウエストラインのおかげで大きく開けている。縦長のドアミラーに映るボディサイドの位置も、わかりやすい。
フルデジタルの表示部(ZXは12.3インチTFTカラー式)はスタイルが選べるし、グラフィックが見やすいので、新しいもの感がある。シートの2列目はタンブル&リクライニング式。3列目は電動(ZX)の格納・展開式で、畳んでしまえば広大な荷室空間が出現する。ZXのシート素材はチェスナットカラーの本革だ。
ゴツいシフトレバー右側には、ドライブモード(エコ、ノーマル、スポーツ)、MTS(オート、ダート、サンド、マッド、ディープスノー、ロックのマルチテレインセレクト)、CRAWL(悪路走行時に使用するクロールコントロール)などの電子制御系、センターコンソールにはSDM(スタビライザーディスコネクトメカ)、電動デフロック(センターとリア用)、トランスファーギア選択レバー(H4/L4)などのドライブメカ系が合理的かつ整然と並んでいて、それらの選択がとてもしやすくなっている。
加飾もギラギラしていないパーツを使用していて、モダンな仕上がりになっている。
ランクル兄弟で“250”を選ぶ理由とは?
何が何でもフラッグシップを、という方なら“300”を、クラシカルなスタイルと走りに憧れるなら“70”を。だとしたら、“250”を選ぶ理由は、といわれると、そのユーザーフレンドリーな性格と、今時のクルマらしい走りを実現しているところだろう。
ZXの735万円という価格は上位の“300”に丸被り、という部分があるけれども、その作り分けの差から考えて、悩むこともないと考える。あとはいつ手に入るのか、ということだけだ。
SPECIFICATIONS
トヨタ ランドクルーザー“250” ZX|Toyota Land Cruiser“250” ZX
ボディサイズ:全長4925×全幅1980×全高1935mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2410kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:2.8リッター直列4気筒ディーゼル
最高出力:150kw(204PS)/3000-3400rpm
最大トルク:500Nm(51kgf-m)/1600-2800rpm
トランスミッション:電子制御8段AT
価格:735万円(税込)
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ガソリンはオンロードもっさいぞ