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日産「スカイライン」が紡いできた日本のスポーツセダンヒストリー

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日産「スカイライン」が紡いできた日本のスポーツセダンヒストリー

約一ヶ月前、日産自動車が開催した新型車(ノート オーラ e-POWER)の発表披露会の席上で、執行役副社長である星野朝子氏から、まったく関係のない車についてのコメントが発表された。「日産自動車は決してスカイラインを諦めません。この場をお借りして申し伝えておきたいと思います」という内容であり、これはまさに異例のことだ。実はその数日前、一部新聞により報道された「スカイライン開発中止」に対する否定コメントだったのだ。

確かに国産セダンの窮状を見れば、こうした報道が出ることも不思議ではない。約1年半前には、スカイラインのよきライバルであったトヨタ・マークXが、前身のマークII(1968年登場)から通算して51年の歴史に幕を下ろしていたし、国産スポーツセダンに対する期待値は総じて低いのが実状だ。それでも生産を継続するコメントが出たことは、スカイラインに対して並々ならぬ想いがあるからだろう。

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一朝一夕では生まれない伝説

その想いを支えているのは1964年に開催された第2回日本グランプリで誕生した“スカイライン伝説”へのリスペクト。メインレースであるGT-IIクラスには、プリンス・スカイラインGTが並んでいた。ドライバーには生沢徹氏や砂子義一氏、社員レーサーだった古平勝氏を始めとした名手を揃え、必勝を期していた。そんなところに突然参戦してきたのは式場壮吉氏が駆るスーパーカー、ポルシェ904。その衝撃は「ジェット戦闘機に零戦で立ち向かうようなもの(砂子義一氏)」だったそうだ。

下馬評で最有力だったスカイラインGTは2ℓの6気筒エンジンを、4気筒エンジンのボディに無理やり搭載するため、ツギハギだらけ。まるでダックスフンドのようなボディの車重は1トンを超えていた。それでもチューニングによって最高出力は165馬力まで向上し、その最高速は国産最速の時速170km/hだった。

一方のポルシェ904といえばレース専用といっていいほどのGTマシンであり、スカイラインGTより30センチも背が低く、まさにエイのようなスタイルの専用ボディを持っていた。その車重はわずか650kgであり、最高出力180馬力のエンジンが与えられたことによって最高速は260km/hに達していた。走る前から勝敗は決まっていたようなものだった。

「昨日まであれほどたくましく見えていたスカイラインGTが一気に貧弱に見えるから不思議だ(砂子義一氏)」ということだった。

ところがポルシェ圧倒的有利の状況でもスカイラインGT軍団は善戦し、ポルシェ904を苦しめただけでなく、7周目には生沢徹氏が先頭に立ったのである。この時は「地の底から湧き上がるような大声援だった(古平勝氏)」と、参戦していた名レーサーの証言もあるほどの衝撃と興奮がサーキットを支配した。すぐに抜き返されたのだが、この時にスカイライン伝説が誕生したのである。結果的にレースはポルシェにこそ負けたが、ロータスやMGという世界屈指のスポーツカーを抑え、2位から6位までスカイラインGTが独占。そして、あまり注目されていないが、T-Vクラス(ツーリングカー1600cc)でもスカイライン1500が1位から7位まで独占し、伝説に花を添えたのだ。

その後、スカイランは日本初のプロトタイプレーシングカー、プリンスR380誕生のきっかけとなり、さらにはGT-Rを誕生させ、数え切れないほどの勝利と共に日本のレース界を席巻してきた。

伝説に秘められた多くの物語も楽しめる。

いまとなってはサーキットの主役の座を独立ブランドとなったGT-Rに譲り、スカイラインの名はほとんどレース界の表舞台から消えている。それでも伝説は健在であり、日産が決して諦めないと公表するほどの価値を持っているのである。

「いまさら伝説なんて」という人もいる。しかし、スポーツカーや走りにこだわるクルマほど、どんなに金を積んでも手に入らない伝説が散りばめられた歴史が重要な意味を持ってくるのだ。これはファッションや時計などのプレミアムブランドにも共通する価値観だと思う。スカイラインは、その意味からいっても、貴重な歴史とストーリィを持つ存在であり、日本車を象徴する1台として、いまもなお健在なのである。

そのイメージリーダーとなっているのが「スカイライン400R」だ。すでにGT-Rはべつのモデルであるため、405馬力を発生する3.0L V6ツインターボエンジンを搭載している400Rこそ、歴代スカイライン最強ということになる。このエンジンはノーマルのGTモデルに搭載されている最高出力304馬力のエンジンをチューニングによって101馬力パワーアップした専用エンジン。

そのフィーリングが分からないため、まずはゆっくりとアクセルを踏み込んでみる。拍子抜けするほどスムーズに、静々とスタートする。だが、そのトルク感は極低速から十分に感じあれるため、市街地でストレスをまったく感じることなく、走り抜けていく。さらに信号待ちの先頭に立ったとき、試しにアクセルをググッと踏み込んでみると、実にスムーズかつパワフルにあっという間に制限速度まで加速していく。それでも凶暴な素振りなど微塵もなく、あくまでもジェントリーに振る舞うのである。

高速に乗り込んでみた。アクセルに対する反応がほとんどタイムラグを感じることなく、レスポンスよく速度コントロールへと反映される。その感覚は400Rをより小さく感じさせてくれるのだ。まさにピタリと体にフィットしたスポーツウエアのごとくの着心地なのである。一方で406馬力といえば十分に強烈なのだが、パワーを持て余すこともなく、すべてが手の内にある感覚のまま、快適なドライブが続く。

世界初のステアバイワイヤ機能である「ダイレクトアダプティブステアリング(DAS)」の思いのままに正確に切れていく。これはステアリングの動きを電気信号に置き換え、タイヤを操舵するというシステムだが、まったく違和感なく運転できる。このフィーリングが実に自然にしてレスポンスがよく非常に優れた直進安定性を実現している。ハンドリングの楽しさばかりか、ロングドライブでの疲労感低減にも寄与している。あいにくの天候ではあったが、後輪は路面を確実に掴み、お尻を振るようなこともなければ、ステアリングが路面のうねりに取られることもなく、加速と減速を繰り返していく。気が付くとすっかり400Rの軽快でいかにもスポーツセダンという走りに夢中である。

少し開けた場所にクルマを滑り込ませた。トランクリッドには「赤いR」の文字を組み込んだエンブレム。伝説に従えば「赤いバッジ」は走りに特化したグレードの証。さらにスカイラインといえば「ボディサイドのサーフライン」と「丸型4灯式リアランプ」といわれるほど象徴的なアイテムのひとつが復活した。この400R、ひょっとすると“21世紀のハコスカ復活”といっていい存在であると同時に、日本が失ってはいけないブランドだと思う。

現行13代目モデルは2014年にデビュー。2019年にビッグマイナー、さらに昨年も変更を受け、つねに進化を続けている。

コクピット感の強い運転席は体との高いフィット感が心地いい。

新設定のホワイトでまとめられたサポート性に優れたレザーシート。ダイヤキルティングが上質さを演出。

プレミアムサルーンとして不満のないスペースと雰囲気を実現したリアシート。

405馬力の大パワーを上質なフィーリングでリアタイヤに伝える7速AT。

レスポンスのよさと、高回転までトルク感が維持する気持ちのいいエンジン。

赤いRのエンブレムと丸型のリアランプもスカイライン伝説の一部。

スペック

モデル名:スカイライン 400R
価格:5,625,400円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,810×1,820×1,440mm
車重:1,760kg
駆動方式:FR
トランスミッション:7速AT
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 2,997cc
最高出力:298kw(405PS)/6,400rpm
最大トルク:475Nm(48.4 kgm)/1,600~5,200rpm
問い合わせ先:日産自動車:0120-315-232

TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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みんなのコメント

6件
  • 執行役副社長で車に興味がない星野朝子が居座るから仏産が凋落し続けてるって誰かこの老害に言ってあげないと
  • DASの轍にバンドル取られないのは感動した。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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