600馬力のRB25DETを搭載するネオ旧車チューンド
美麗なワイドボディをビビットなガルフカラーで包み込む
「鮮烈なガルフカラー仕様の240Z」プライベーターの意地と創作意欲が作り上げた大作
プライベート・ビルダーであるリチャード・マドランバヤンが、手塩にかけて作ったダットサン240Z。見た目の派手さからショップのデモカーかと思われがちだが、エンジンスワップやパーツの取り付けなど、主な作業はリチャード本人が行っている。
とはいえ、リチャードはクルマとは無縁の仕事を生業としており、決してプロのビルダーというわけではない。それでも子供の頃からとにかくクルマが好きで、今も寝る間を惜しんでクルマについて考えるのが日課という、生粋のエンスージアストでもあるのだ。
アメリカでは“Z-Car”のファンによってネット上に立ち上げられたフォーラムが数多く存在する。そこでは有名なメーカーの製品に限らず、技術のあるアマチュアが製作したオリジナルパーツが紹介されたり、純正流用や他車種流用術、どこかの誰かが実践したカスタムの実例など、様々な情報が掲載されている。
そうした情報源からリサーチを重ね、知識をアップデートさせてきたリチャード。「人とは違うクルマを作りたい」という強い信念にも支えられ、脳内に渦巻く様々なアイデアを自らの腕で具現化してきた。
エンジンは、北米には輸出されていなかったR33/34スカイラインなどに搭載されたRB25DETをチョイス。オイルパンの加工と移設に必要な切断や溶接の作業も覚え、CX Racingからリリースされているマウントキットを利用しながらエンジンスワップを実行した。
トランスミッションは日産純正5速MTを使い、カスタムメイドのプロペラシャフトで長さを合わせ、ファイナル3.9のLSDを備えるスバルWRX STI純正デフにジョイント。デフマウントにはオリジナルの製作者であるRon Tylerという人物にちなみ、Zファンの間でRTマウントと呼ばれている吊り下げ式マウントを使用している。
エンジン本体にはワイセコのピストン、イーグルのコンロッド、東名パワードのポンカムなど日米の高品質なパーツを投入。ターボはリチャードが住むカリフォルニア州オックスナードにあるAPEXパフォーマンスがカスタムしたφ62mmタービンを、サスタワーとのクリアランスを避けるように少し高めにマウントする。
セラミックコートされたCX Racingのエキマニ、TREADSTONEのインタークーラー、Tialのウェイストゲート&ブローオフバルブ、GReddyのインテークマニホールドなど一流メーカーのパーツをふんだんに投入。これらは、同じくオックスナードにあるRDエンジニアリングがチューニングを担当した。パワーは現在の仕様になってからは計測していないそうだが、過去のデータから考えると600ps前後は出ていると推測される。
一方で日産純正のN1ウォーターポンプ&オイルポンプ、アメリカンV8のLS2用イグニッションコイル、GMのセンサーなど、様々な純正流用術も活用。AEMのECUとウォーターメタノールインジェクションシステムも備え、燃料ラインもオリジナルで構築した。使用燃料はE85ではなく通常のガソリン。
エクステリアはZTrixのワイドボディキットとRetro-Specのカーボンパーツ、そしてリチャード自ら製作したワンオフのカーボン製サイドスプリッターやカナードで武装。リヤディフューザーはRE雨宮スタイルのマツダRX-7用を加工して取り付けている。ヘッドライトやフロントウインカーはLEDで、電飾のようにユニークな光り方をするzLEDs製カスタムLEDテールライトも装備。
往年のポルシェがレーシングカーに使用していたガルフカラーでペイントし、他のどの240Zとも違うオリジナリティを演出した。
ワイドフェンダーに収まるホイールはニスモのLM GT2をリバレルした3ピース仕様。リム幅12.5J、インセット40という超絶ワイド&深リム化を実現し、315/30R18という極太タイヤを装着している。
サスペンションとブレーキはともにノンプロの製作者がZのコミュニティを通じて市販しているキットを使用し、S13シルビア純正コイルオーバーとウィルウッドのビッグブレーキにコンバージョン。ステアリングはRB純正の油圧ポンプ、トヨタ・ターセルのラックとスープラのタイロッドを利用してパワステ化した。
ダッシュボードとセンターコンソールにはMSAのカバーを装着してリフレッシュ。シートもレザートリムに張り替えられたNRGのバケットシートを備える。
メーターホルスターの中には、Speedhutの各種メーターや燃調を司るZeitronixのワイドバンドゲージをインストール。オーディオシステムもオリジナルで組まれ、カスタムインストールされたドアスピーカーはインフィニティの純正品が使用されている。
数限りないアイディアを現実のものとしてきたリチャードだが、実は次なるプロジェクトも既に進行している。聞けば、ダットサン240ZにR35GT-RのVR38DETTを載せるというではないか。尽きることを知らないリチャードの情熱と探究心が、今度はどんな形で昇華されるのか。完成の時をじっくり待つこととしよう。
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI
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