微より大なるは無し! 偏愛視線でフェチれるあのクルマのココ
よく「神は細部に宿る」とか「神ってる」と言いますが、やおよろずの神をあちこちに見出して情緒的に神格化していると「木を見て森を見ない」シンドロームに陥りやすいものです。むしろクルマの場合、入念に仕上げられたディテールは、豪華一点主義や魂を込めんがためにトップアップされたのではなく、全体の成り立ちや存在理由そのものを語ってしまう、そんな雄弁さを秘めているものです。今回は偏愛視線でフェチれるあのクルマのココに焦点を当てるべく、アウディ「RS 6 アバント パフォーマンス」のオプションの22インチホイールについて語ります。
およそ1億円でもリーズナブルと思われる理由は? ラリーで超有名なアウディ「クワトロS1 E2」にはWRCチャンピオンたちのサインがたくさん!
リアルGO FAST仕様の2次元的カッコよさがある
先般、「RSパフォーマンス」という進化バージョンが登場したアウディの「RS 6 アバント」に、オプションで用意される22インチの大径ホイール×5種類のうち、4つは5スポークYブランチの同型だ。これらは色/仕上げの違いなのだが、10.5J×22インチの極太リムかつ大径で、奥まであけすけに見せてしまう細スポーク仕様だったりする。純正では空力や低CO2化を意識したフラットに近いスポーク面のデザインがやたら多く、サードパーティものでも70~80年代的なディープリムが死滅した昨今、ここまで深リムの魅力を掘り下げたタイプは珍しい。
当然、ブレーキディスク&キャリパーも露わになって丸出しなので、ホイール内径にみっちり詰まったブレーキを静的観察するのも楽しい。ちなみにオンラインのコンフィギュレーターではブレーキローターの選択肢が出てこないのだが、末尾の方で「※スピードリミッター305km/hはセラミックブレーキの選択が必須です」という一言が添えられている。なんだかもう隠しメニューのような密やかさだ。
デザイナーがスケッチを起こす時、タイヤ&ホイールをデカく描くのは知られた話だが、実際の開発ではせいぜい初期レンダリングまで。リアルになっても2次元の時のサイズ感をここまで実現しちゃった車は、ちょっとない。だからRS 6 アバントは、写真で見てもプロポーションや雰囲気が出にくいところがある。実車を目の前にするとフェンダーから足元にかけて、その圧倒的ボリュームの異様さに即、気づかされるのだが。
もうひとつRS 6 アバントの2次元っぽいところは、欧州の反社会的勢力に重宝がられてしまう存在感ゆえ。欧州には「Go Fast」と呼ばれる麻薬の運び屋が、地中海・アフリカ方面もしくはバルカン半島から定期的に現れては摘発される。ときどきカーチェイス・アクション映画のネタになっているほどだ。リアルではたいてい盗難車で、ヤバい積み荷をいっぱい抱えての長距離行、いざとなれば警察の追撃から全力で逃げる必要アリ。そんな連中が仕事道具にしたがる高性能ドイツ車の中でも、全天候型かつ緻密でトゥーマッチなほど強大な高速スタビリティを備えたアウディは、極上モノなのだとか。
ハイトワゴンやSUVの巨大フロントメッキグリルで十分オラつける平和な日本では理解されづらいが、RS 6 アバントのモノホンっぷりはそう、足元ににじみ出ているのだ。
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