ブガッティが作るクルマに大きな影響を与えた作品たち
ブガッティは2024年7月24日に開催されたボナムズのオークションに、芸術家一家のブガッティ一族が手がけた家具や彫刻の数々を出品しました。これらはいずれもアメリカの著名な実業家であり慈善家であった故ピーター・マリン氏が所有していたものですが、そのコレクションはクルマだけにとどまらず、ブガッティ家の豊かな歴史とストーリーを反映したものです。
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故ピーター・マリン氏のコレクション
ブガッティは、エットーレ・ブガッティの創造的なビジョンにインスパイアされた、美とクラフツマンシップの上に築かれたブランドである。父のカルロは著名な家具デザイナーであり、弟のレンブラントは有名な彫刻家だった。エットーレのクルマがそうであるように、父も兄も時代を超越した芸術作品を創り出し、今日もなお人々の心に響き続けている。そして、これらの作品のなかでも最高傑作とされるマリン・コレクションが、ボナムズによってオークションにかけられた。
アメリカの著名な実業家であり慈善家であった故ピーター・マリン(1941年~2023年)は、ブガッティの世界に深い憧れを抱いていた。「ミスター・ブガッティ・イン・アメリカ」と親しみを込めて呼ばれた彼の情熱と深い理解は、国際的なメディアの注目を集め、世界最大級のブガッティ・コレクションにつながった。
彼は非常に希少な「タイプ57SC アトランティック」から1925年式「タイプ22 ブレシア」まで所有し、これらのクルマに対する愛情を、他の愛好家たちと分かち合いたいと感じていた。そして、ピーターは2010年、ブガッティをはじめとするフランスの名車を中心に、極上の自動車を紹介するミュージアムを設立したのである。
しかし、彼のビジョンはそれだけにとどまらなかった。ブガッティ一族による貴重な作品を広く収集し、これらのポートフォリオの中で自動車の創造的な系譜を記念することを望んだのである。カルロ・ブガッティが手がけた家具、レンブラント・ブガッティの彫刻、アール・ヌーヴォーとアール・デコの作品など、オークションに出品されるのは、これらの極上の品々である。ブガッティの豊かな伝統と比類なきクラフツマンシップに敬意を表するにふさわしい、特別なポートフォリオである。
世界中の一流美術館で賞賛された作品
カルロ・ブガッティ(1856年~1940年)の傑作は、ピーターの情熱だけでなく、優れたデザイナーたちの想像力を刺激した。制作から1世紀以上経った今日でも、カルロの家具はマーティン・ローレンス・ブラードをはじめとする現代のインテリアデザイナーたちに影響を与え続けている。
ボナムズ・オークションで出品された作品は、カルロの比類なきスタイルの最大の特徴である、複雑に細工された椅子、机、テーブル、陳列棚が、木、絹、ベラム、銅といったカルロのトレードマークである素材と融合している。
どのアイテムもカルロ・ブガッティの卓越した芸術性を体現しており、シカゴ美術館やパリのオルセー美術館など、世界中の一流美術館で賞賛されている。
とくにカルロ・ブガッティの鏡張りのホールツリー(1888年頃)は、彼の包み込むような作品の代表例である。ウォールナット、エボニー加工された木材、コルク、骨、鎚目銅、象眼されたピューター、鏡面ガラスで作られたこの驚くべきホールツリーは、2万ドルから3万ドルで落札されると見積もられており、実際は3万5000ドル(約536万円)で落札された。現代のブガッティが独特の素材と複雑なデザインを融合させた先駆者であるように、このエレガントな家具もまたそうである。
この家具シリーズを補完するのが、20世紀初頭の最も重要な彫刻家のひとりであり、エットーレ・ブガッティの弟でもあるレンブラント・ブガッティ(1884年~1916年)による壮麗な彫刻作品である。動物をこよなく愛したレンブラントは、おもに野生動物からインスピレーションを得た。その結果、彼は「踊る象」のようなエキゾチックな動物を描いたダイナミックなブロンズ彫刻で有名になった。彼の最初の作品のひとつであるこのモチーフは、ブガッティ「タイプ41」のラジエターキャップとなり、「ロワイヤル」と呼ばれた。豊かな出自と卓越した品質を備えた彼の彫刻は、コレクターの垂涎の的となっている。
ブガッティ・ブランドへの深い理解を証明するアイテムばかりだった
オークションの目玉のひとつは、85/8インチ×45/8インチ×14 1/4インチのブロンズ彫刻「Petite Panthère Assise」である。1912年頃に考案され、A.A.エブラール鋳造所によって鋳造されたこの精巧な作品には、サイン、シリアルナンバー、鋳造所の刻印があり、15万ドルから25万ドルで落札されると見積もられ、実際は、19万1000ドル(約2922万円)でハンマーが叩かれた。
もちろん、エットーレ・ブガッティ自身もこのオークションの中核を成しており、1927年製の「タイプ52」、ブガッティ「ベイビーカー」もそのひとつである。
エットーレ・ブガッティが息子のためにブガッティ「タイプ35 グランプリカー」のレプリカとしてデザインしたこのクルマは、12ボルトの電気モーターを搭載し、ブガッティの真髄であるブルーのカラーリングとリッチなレッドのレザーインテリアで仕上げられている。こちらは、10万ドル~12万5000ドルのエスティメート(推定落札価格)が掲げられていたが、10万2100ドル(約1564万円)で落札された。
エットーレ・ブガッティがかつて所有していたトランクは、籐のフレームに含浸キャンバスを貼り、角を補強したレザーで作られている。象徴的な「EB」のイニシャルが刻印され、レザーの蓋のトリムにはブガッティのロゴが見える。3000ドル~5000ドルの推定落札価格が掲げられたが、実際は1万9200ドル(約293万円)で落札された。
ピーター・マリンのコレクションは、自動車界にとどまらず、ブガッティ・ブランドへの深い理解を証明するにふさわしいものだ。このコレクションは、1909年から今日に至るまで、ブガッティ家の豊かなストーリーと、ブランド全体に注ぎ込まれた抗いがたいセンスを反映している。ボナムズのユニークなオークションの作品は、ブガッティの不朽の遺産へのオマージュであり、芸術家一家としての才能を持つ家族の力が、エットーレ・ブガッティとジャン・ブガッティの作るクルマに大きな影響を与えたことを明らかにしている。
AMWノミカタ
ボナムズのオークションサイトを見ると、今回プレスリリースで紹介された以外にもかなりたくさんの作品が出品されていることがわかった。
カルロの家具、レンブラントの彫刻に加え、エットーレの次女であるリディアの彫刻や絵画も出品されている。これを見ると本当にブガッティ一族が芸術一家であったことが分かるとともに、これをコレクションしたピーター・マリン氏がブガッティのすべてを愛していたのかが分かる。
これらの作品はピーター・マリン氏の情熱と一緒に、次のオーナーに受け継がれていった。
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