もくじ
どんなクルマ?
ー 遅ればせながらの真打ち登場
ー PHEVが抱える課題を解決
どんな感じ?
ー ツインモニターの4輪駆動で3段階の航続距離
ー メルセデス・ライクなインテリア
ー 他に類を見ない静寂性と優れた乗り心地
ー 複雑な回生モードとドライビングモードの組み合せ
「買い」か?
ー 一歩先をいく装備と豪奢さ
スペック
ー メルセデスEQC 400 4マティック・スポーツのスペック
どんなクルマ?
遅ればせながらの真打ち登場
これまで革新的な技術を積極的に取り入れてきたメルセデス・ベンツだが、純EVの発表はいつになく後手に回った感がある。満を持して、とでもいうべきか、やっとEQCを運転する機会を得ることになった。
国際記者発表の場となったのは、ノルウェーはオスロ。環境意識の強い街は、遅れ気味なEVにハイライトを当てるのには、とっておきの場所だといえる。これが充電設備の不十分なロンドンなら、1日乗り回したあと、充電待ちの長い行列ができてしまったかもしれない。ゆっくりお湯を沸かして、お茶を楽しんでもいいけれど。
世界でも最も古い自動車メーカーでもあるメルセデス・ベンツ。自動車として最もリスペクトされる存在のひとつでもあり、プレミアムブランドとして最も好調な販売を世界各国で繰り広げている。メルセデス・ベンツがなにか新しいことをする時はいつも、大きな話題を生むものだ。
メルセデス・ベンツとして初めての量産EV
正確に述べるのなら、今回のEVはメルセデス初、とはいい切れない。台数は僅かながら、すでにスマートEDという存在があることは、熱心な読者ならご存知だろう。また10年ほど前には、電動化されたAクラス「Eセル」が、ごく少数販売されたという過去もある。
そういう意味では、初めて数10万台という量産が行われる、メルセデス・ベンツ製のEVというべきだろう。メルセデス・ベンツが立ち上げたサブブランド、「EQ」からのリリースとなるが、EQCは充分メルセデスに見える。内面での関係性の強い、GLCに似ているように感じるが、いかがだろうか。
一方で、中型のクロスオーバーSUVとしては、ジェネリック薬品のように、どこか際立った特徴がないことも確か。ぱっと見では、ルノーかヒュンダイか、はたまたサーブがデザインしたクルマにも、見えなくはない。エクステリアデザインは、ますます自動車の重要な購買動機になろうとしている現在、大丈夫か少し心配してしまう。あるいは今後、更にこの感覚は変化していくのかもしれない。
おそらく一般のひとの場合、クルマに近づいてフロントグリルに収まるスリー・ポインテッド・スターを見るまで、メルセデス・ベンツだと気づかないのではないだろうか。メルセデス・ベンツというブランドに求められている、周囲へアピールできる堂々とした佇まい、が満たせていないかもしれない。
インテリアや走りの仕上がりが気になる。
どんな感じ?
ツインモニターの4輪駆動で3段階の航続距離
EQCHは今回の発表時点では5シーターのみの設定だった。しかし、メルセデス・ベンツGLCよりも全長は100mmほど伸ばされた中サイズのSUVだから、更に数名、定員が増える可能性もある。
前後でわずかに異なるモーターが搭載され、トルクベクタリング機能を備えた4輪駆動システムを搭載する。フロントモーターは回転効率をより高めるため、リアよりも巻き数の少ないコイルが採用されている。リアはコイルの巻数が多く、フロントより太いトルクを生み出せるようになっている。
クルージング時は、基本的にフロントのモーターがクルマを引っ張ることになる。しかしアクセルを強く踏み込むと、即時的に主役はリアモーターへと推移。フロントと合わせて407psと77.8kg-mというパワーとトルクが発生する。
メルセデス・ベンツによれば、ジャガーiペースやアウディEトロンよりも最大トルクは大きいとしている。しかし、メーカー公称の静止加速力を比較すると、ジャガーiペースの方が若干鋭いようだ。この直接的な2台のライバルモデルと比較すると、EQCの姿もより鮮明にわかるようになる。
EQCは、航続距離で異なる価格が用意されている。3モデルの中で最も容量では少ない、80kWhバッテリーを搭載するモデルの場合でも、ボディサイズが大きく重たいアウディEトロンよりも航続距離では上。WLTPテストの数字では、EQCが416kmなのに対し、Eトロンは400kmとなっている。
メルセデス・ライクなインテリア
ドアを開けて乗り込んでみる。インテリアの雰囲気は、エクステリアよりもメルセデスとの共通性が強く感じられる。ダッシュボードには大きな2面のデジタルモニターが並び、ステアリングホイールのスポークは様々なスイッチ類がぎっしり並んでいる。
よく観察すると、デザイン的にはそこかしこで新しくなっており、アンビエントライトやEV仕様のディスプレイ表示、新しい素材などがインテリアを彩る。細かいスリットの入ったスピーカーグリルや、長方形状になったスタイリッシュなエアベントが特徴的だ。
ダッシュボード表皮は柔らかい合成素材で覆われている。環境に配慮したクルマだけに、リサイクルされたウェットスーツの素材のようだと理解すると、安っぽくは見えないだろう。
乗員空間は中型SUVとしては一般的なサイズ感。リアシートは、クラス標準で見るとわずかに上下方向に狭いことがわかる。理由は駆動用バッテリーが床下に埋め込まれているため、室内のフロアが嵩んでいいることと、ルーフラインが低めなことがあるだろう。ラゲッジスペースは500ℓとなっており、ライバル3台の中では最大だが、大きいわけではない。
他に類を見ない静寂性と優れた乗り心地
運転感覚としては、内燃機関を搭載したSUVと比較して、何か欠けているものがあるわけではない。すでにEVを運転したことがあったり、試乗記を呼んだことがある読者なら、何となく想像がつくものだと思う。しかし、Eトロンやiペース、あるいはテスラ・モデルXと比較すると、はるかに洗練度は高い。
ところで読者は、すべてのEVが極めて静かに走行するとお考えだろうか。必ずしもそうではない。しかし、このEQCほど一切の音を立てずに走行するEVを、いや、自動車を、今まで運転したことがなかった。空力的に磨き上げられたボディデザインが、高速走行時の風切り音を軽減し、ロードノイズもシャシー側でしっかり遮断してくれている。
加えて低速域でも高速域でも、乗り心地は極めて良い。スロットルレスポンスも極めて良好ながら、アドレナリンが放出されるような、テスラほどではない。ドライバビリティも優れており、走行パフォーマンスは全般的に優れている。反面、ジャガーiペースと比較すると、ペダルを深く踏み込んで運転させた時の反応は、やや劣っているようだ。
正確性やレスポンスの鋭さという点では、SUVという括りの中でも、特に際立ったものではない。しかし、クルマの挙動自体も落ち着いており、予想通りに振る舞ってくれるから安心感がある。メルセデス流といったところ。
そんないいところ尽くめのEQCだが、その複雑さは、購入動機を減退させてしまう要因にはなりえそうだ。ドライブモードは、コンフォート、スポーツ、エコ、インディビジュアル、マキシマムレンジの5種類が用意されている。さらにそこにステアリングホイール裏のパドルで選択が可能な、バッテリーの回生充電プログラムが5段階も用意されている。
複雑な回生モードとドライビングモードの組み合せ
クルマの真っ当な性能として平均を知るなら、デフォルト設定のコンフォートモードのままでも、一切の不満なく走ってくれる。スロットルを緩めると、直感的な割合で減速し、回生充電もしてくれる。標準モードに飽きて、自身のベストと思えるようなプリセットを見つけるまでには、しばし試走の時間が必要となるだろう。むしろ、ワーストと思えるセッティングになってしまうことの方が多そうだ。
メルセデス・ベンツが味付けした「オート」回生モードでは、道路標識の制限速度を認識し、レーダー・クルーズコントロールとナビゲーション・システムのマップ情報などを利用。自動的にモーターでの回生ブレーキの効きの強さを上げたり下げたりする。実際使ってみると、8割方は良好ながら、時折状況に対応できていない場合があった。
このオート回生モードに、「マキシマムレンジ(最大航続距離)」ドライビングモードを選択してみる。EQCは半自律運転に自動的に切り替わり、モーターの出力を抑制するようになる。アクセルペダルを踏み込むと、ストローク途中にラッチのような段階的な感触がうまれ、不用意に強く踏み込まないようにガイドしてくれる。
クルマのすべては航続距離を最大限に伸ばすために機能し、数多く搭載されたセンサー類の膨大な情報を処理。クルマ自らの責任のもとでスピードを上下させながら、電気として蓄えられたエネルギーを効果的に運動エネルギーへと変換してくれる。
しかし個人的には、運転支援システムとしては少し介入し過ぎに感じる。システムの動作が気になり、円滑に自分の運転を助けてくれるというより、どこかチグハグな印象を受けてしまった。
「買い」か?
一歩先をいく装備と豪奢さ
ドライブモードも回生モードも、EQCのデフォルトが最も賢い状態だと、少し運転してみると理解できるはず。一部の道路環境などを除いては。一方で、ドライバー自身の感覚にあった不安感のないモードの組み合わせが、必ずしも最もリラックスでき、運転がしやすい設定だとも限らないようだ。
しかし、このEQCほど上質で充実した装備を持ち、ラグジュアリーでゆとりのあるEVは見たことがない。しばらくは、これを超えるモデルは登場しないのではないだろうか。
メルセデス・ベンツが立ち上げたサブブランドの「EQ」が試される初めてのクルマだけのことはある。またEVとしてだけでなく、多少のリスクを犯してでも半自律運転の実現に向けて、テスラを追い上げることを表明したモデルだともいえる。
EVに乗りたいと考えているひとだけでなく、先進技術のアーリーアダプターにとっても、明らかに理想的なクルマとなりそうだ。きっと、EQCの良さが理解できるだろう。ひとつ付け加えるとするなら、もう少しパワーオフの方法がわかりやすければ、一層良かったのかもしれないが。
メルセデスEQC 400 4マティック・スポーツのスペック
■価格 6万5650ポンド(951万円)
■全長×全幅×全高 4762✕1884✕1624mm
■最高速度 178km/h
0-100km/h加速 5.1秒
■航続距離 416km (WLTP)
■CO2排出量 −
■乾燥重量 2425kg
■パワートレイン 非同期ACモーター2基
■バッテリー 80kWhリチウムイオン
■最高出力 407ps
■最大トルク 77.8kg-m
■ギアボックス ダイレクトドライブ
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