■誰が決めている? 速度規制について警察庁に聞いてみた
クルマはかなりのスピードが出る乗り物ですが、実際にはサーキットなどでない限り、走行する道路によって出せる速度が制限されています。交通量を含めた道路環境に応じて、安全な速度に規制する必要があるからです。この「速度規制」はどのように決められるのでしょうか?
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道幅が広く見通しの良い高速道路や幹線道路では、規制される速度が不自然に低く感じることがあります。また狭い裏通りなどでは、規制されている速度が高すぎて、規制速度で走ると危険に思えることもあります。規制速度を下まわって走っても違反にはなりませんが、安全面を考えると、危険な場所などは規制速度をさらに低くすべきです。
そこで速度規制について、警察庁に聞いてみました。
まず規制する速度は誰が決めているのでしょうか。市街地などは、その地域の交通環境に精通していないと、正確な規制速度を決めることができません。
この点について警察庁は「速度規制の実施については、各都道府県の公安委員会が、各地域における交通状況などを総合的に勘案して、実施しています」といいます。
速度規制について警察庁では、市街地の2車線道路は時速40キロか50キロ、4車線以上の非市街地は時速50キロか60キロを基本としています。この規制速度を、どのような方法で決めているのかも気になります。速度規制を決める「85パーセンタイル」も分かりにくいです。この点も尋ねました。
「現在の一般道路における最高速度規制の実施基準は、平成18~21年度の有識者委員会による調査研究を経て策定されました。具体的には、警察が保有する速度感知機から得られる実勢速度(道路を実際に走っている速度)、交通事故のデータ、交通規制情報、平成17年度道路交通センサスから得られる交通現況、道路構造や沿道土地利用状況の現地調査、その統計分析を行うことにより、各道路環境ごとの最適な基準速度を算出しております。
なお85パーセンタイル速度とは、ある区間を走行する車両の速度を低い順番から並べた場合に、全体の85%が含まれる速度の値を示しています」とのことでした。
85パーセンタイル速度については、車両の速度を低い順番から並べて全体の85%が含まれるなら、多くのユーザーが納得できて安全性も守られるという考え方のようです。
市街地の速度規制では、低速域が粗い印象を受けます。裏道など時速30キロでは高すぎるが、時速20キロでは低く、時速25キロが妥当に感じる場所もあります。それなのに日本の速度規制は時速10キロ刻みで設定され、大雑把な印象を受けます。この点も聞いてみました。
「運転者に対して、できる限り簡単明瞭な交通規制とするために、『交通規制基準』において、規制速度値は時速10キロを単位として指定することにしています」とのことです。
要は分かりやすくするために、時速10キロが単位になっていますが、速度が下がると正確性や綿密性に欠けます。海外には速度規制値を細かく設定している地域も多く、そうなれば示される速度の信頼性も高まります。
■多くの人が疑問、55年前から変わらない高速道路の速度規制
そして多くのユーザーが疑問に感じる速度規制は、高速道路ではないでしょうか。多くの高速道路に適用される「時速100キロ」の速度規制は、1963年に開通した名神高速道路から始まりました。
この時からすでに55年が経過しており、高速道路で重要なクルマの走行安定性とブレーキ性能は、商用車を含めて格段に向上しました。それでも規制速度はいまだに時速100キロが上限で、一部区間の新東名高速道路と東北自動車道が限定的に、時速110キロへ引き上げたにとどまります。クルマの性能が大幅に高まったのに、高速道路の速度規制がほとんど変わらない理由を尋ねました。
「高速道路の規制速度は、本線の車線数や方向別の分離状況に応じた上限速度(時速100キロ)の範囲内で行われます。勾配、カーブ、幅員などの道路構造要素によって算出される構造適合速度を尊重しつつ、交通事故の発生状況や渋滞の発生状況等も踏まえて決定されます。
なお、現在一部区間において規制速度を時速110kmに引き上げる試行を実施しており、今後はこれに伴う交通事故実態、実勢速度の変化などを分析した上で、時速120キロへの引き上げについても検討することとしています」とのことです。
55年にわたり「上限速度は時速100キロ」が前提であり続けましたが、今になってようやく見直しが開始されました。
高速道路では、速く走ることで移動時間を節約するクルマの機能が、最大限度に発揮されます。そこを重視するなら、車両の安全性の向上に合わせて、規制速度はなるべく高く設定すべきです。
しかし最近は、燃料消費量やCO2を含めた排出ガスの発生を抑える観点から、規制速度に対する考え方が変わってきています。高速で走ると空気の抵抗が増し、燃料消費量や排出ガスの発生量が増えるからです。それでも高速道路の実勢速度を考えると、時速100キロキロでは低すぎると感じるユーザーが多いでしょう。高速で移動するメリットも踏まえて、バランスの取れた速度規制を実施する必要があります。
現在、運転免許の保有者が8200万人を超えており、クルマは日常生活のツールとして定着しました。公共の交通機関を利用しにくい地域では、クルマは生活する上で欠かせない移動手段です。規制速度は、従来以上に地域に密着した考え方で決めて欲しいものです。
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