エンジンの官能性能が高いのに70万円以上リースナブルなモデルも
ミニバンの絶対王者といえばトヨタ・アルファードだ。2020年には9万748台も売れ、乗用車販売ランキング(軽自動車を除く)でナンバー5となった。とくに昨年、すべてのトヨタのディーラーで販売されるようになってから販売台数が上昇。3代目となる現行型のデビューは2015年1月、大掛かりなマイナーチェンジは2017年12月と決して新しいとはいえないモデルにもかかわらず、2020年の販売台数は2019年から約2万2000台も増えたのだから驚くばかりである。
日本では敵なしのトヨタ アルファード! 世界の「オラオラ顔」ライバル車5選
そんなアルファードの魅力を端的にいうと、”安定”と”安心”ではないだろうか。スタイリングはまさに威風堂々といえる”安定感”。室内の広さや上級装備がもたらす快適性もアルファードを選んでおけば外さないという安心感があり、さらにはリセールバリューも確実だ。いま、日本のミニバン界において「アルファードを選んでおけば間違いない」といえる状況なのだから、売れるのも当然である。
しかし、ミニバン選びはアルファードだけを見ておけば絶対に外すことがないのか?
そうとは言えないだろう。
たとえば、ラージミニバンのなかでもV6エンジン搭載車を買おうと思った場合。日産エルグランドなら「350Highway STAR」の447万8100円からで、アルファードのもっともベーシックなV6搭載モデルである「GF」の520万2600円に対して70万円以上もリースナブルだ。
エンジンを味わう歓びを知っているドライバーにとって、4気筒エンジンと6気筒エンジンの差は大きい。アルファードやエルグランドで両エンジンを比べた場合、単にトルクがあってパワフル(それらは気筒数というよりは排気量の差によるもの)なだけでなく、音、滑らかさ、吹き上がりの躍動感、そして高回転の爽快感といった官能面において大きな差があるのだ。アルファードのV6である2GRエンジンも気持ちいいが、エルグランドが積むVQ35も負けず劣らず官能性能が高い。奏でる音や躍動感は芸術的なレベルだ。それを新車で70万円以上安く買えるのだから、検討の価値はある。
ハンドリング性能や悪路走破性でアドバンテージを持つものも
走りの楽しさといえば、ホンダ・オデッセイはコーナリングが素晴らしい。オデッセイは車体サイズ的にはアルファードよりひとまわり小さなミニバンで、居住性やラゲッジスペースなどの実用面はやはりアルファードに分がある。パワフルなV6エンジンもオデッセイでは選べないアルファードのアドバンテージのひとつだ。
ただ、走り好きのドライバーが運転を楽しむのに欠かせないハンドリング面は、オデッセイが圧倒的に優位。単に限界性能が高いというだけでなく、ターンインから旋回、そして直進へともどっていく動きとそのつながりは見事で、スポーツカーかと思うほど運転が楽しい。世界中のスライドドア付きミニバンを見回しても走りの楽しさはナンバーワンだ。
その理由のひとつがミニバンとは思えない低い重心だが、単にそれだけではなく操縦性にこだわったサスペンションの味付けも大きく効いている。
走りにこだわるドライバーが選ぶなら、アルファードではなくオデッセイという選択は十分にアリだ。
アウトドアを楽しもうというユーザーにとっては、三菱デリカD:5も魅力的な選択肢。車体サイズはアルファードに比べると小さいが、トヨタ・ノアや日産セレナに比べるとひとまわり大きく、2列目や3列目の居住性もそれらを超える。実用的なパッケージングだ(アルファードには届かないが)。
そんなデリカD:5を、アルファードではなく選ぶ理由。それは道を選ばない、悪条件での走行性能に尽きる。デリカD:5はミニバンとしては異例の最高地上高の高さで荒れた路面や段差に対応するだけでなく、4WDシステムは電子制御による切り替え式で「4WDロック」モードを備えた本格派。その結果として昨今のミニバンの中でもっともトラクション能力が高い。そんなミニバン、現行車の中ではちょっと見当たらない。
キャンプなどアウトドアを楽しむ人はもちろん、雪道も得意だからスキーヤーやスノーボーダーにも強くオススメしたい。
大型ミニバン市場はいま「アルファードを選んでおけば安心」という状況ではある。しかし、あえて選びたくなる”強い理由”を備えたライバルの存在も見逃せない。
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みんなのコメント
デリカはオフローダーミニバンという唯一無二の個性を作ったお陰で生き残った。
エルグランドはこの分野の先駆者として、指名買いするファンが一定数いる。
対して、先駆者でもないのに個性を捨てたオデッセイ。まあ、消えて当然。