2019年12月「ながら運転」が厳罰化された今でも、運転中にスマホを操作している、ながら運転ドライバーを見かけることは多い……。警察庁の発表によると、令和3年における年間交通取り締まり件数約600万件ののうち運転中のスマホをはじめとした携帯電話使用などに関わる取り締まり件数は約30万件で、全体の約5%を占めているというゆゆしき事態。
実際、「ほんのちょっと見るくらいならいいじゃん」と思っている人も多いのではないだろうか? しかし、スマホをほんの数秒チラ見しただけでも大事故を引き起こす恐れは十分にあり得る。今回は、そんな危険な「ながら運転」をはじめとした、スマホにまつわる違反行為に関して検証していきたい。
チラ見なら…いいワケないでしょ!! 知っておきたい「スマホにまつわる違反行為」
文/藤原鉄二、写真/写真AC、宮田幸司
ながら運転の罰則は?
運転中に通話、動画視聴をしたり、インターネット、メールを使用したり、ゲームなどのアプリ操作をすると「携帯電話使用等(保持)」に問われ、罰則は「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」、違反点数は3点で普通車の反則金は1万8000円。さらに「交通の危険」を生じさせた場合は「携帯電話使用等(交通の危険)」に問われ、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」で違反点数は6点。反則金規定はなく直ちに刑事手続きの対象となる。
罰則金も意外と高額、引かれる点数も大きい。特に、事故を起こした場合には、かなりの厳罰に処せられる可能性もあるのだ。
どこからが「ながら運転」と見なされる?
カーナビがわりにスマホを使用している人を見かけるが、これは非常に危険! これは完全に「注視」に当てはまる
「自動車又は原動機付自転車を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」(道交法第71条第5号の5)
道交法では、ながら運転は上記のように規定されている。
ここで気になるのは「注視」という表現。実際、注視という表現は実に曖昧で、本人はチラ見と思っても取り締まる側が注視と判断すれば違反となってしまうことになる。
「2秒以下なら注視とは見なされない」という情報がネットでは散見されるが、これは誤情報だ。クルマが少しでも動いていたら、2秒以下のチラ見であっても取り締まりの対象になる。
たしかに、警察庁のHP「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」では、「運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なりますが、各種の研究報告によれば、2秒以上見ると運転者が危険を感じるという点では一致しています」という表記をしているが、これはあくまでも参考資料ということで、2秒以下のチラ見だったら違反ではないと言っているわけではないのだ。
2秒といっても、進む距離は速度によっても大きく変わってくるので、2秒なら安全とは言い切れない。この点に関しては同HP上でも注意喚起されているものの、それでも2秒以下ならOKと早とちりをしている人がいるということだ。
ただ、実際に注視していたかの判断は取り締まりを行う警察官に一任される。路上で止められて、見ていないと否定しても、警察官に「いや、画面を見てたよね」と言われれば基本はアウト。ということで、疑わしい動きはしないことが賢明だ。
信号待ちで停止中のスマホ操作は取り締まりの対象外だが……
渋滞でノロノロと進んでいる時など、スマホを見ている人をよく見かけるが、どんなにゆっくり進んでいても、完全に停止している状態でなければアウト
ながら運転が適用されるのはあくまでも「運転中」であり、停車中は除外となる。つまり信号待ちなどでクルマが完全に止まっている状態なら、スマホを操作しても違反にはならないということだ。ただし、クルマが少しでも動いていたらアウト。たまたまクリープ現象で前に進んでしまったといった言い訳はいっさい通用しない。取り締まりの対象にならないのはクルマが「完全に」停止していたと判断された時のみだ。
ちなみに、信号待ちでスマホ操作に夢中になっていて青信号になったことに気づかず、後続車にクラクションを鳴らされて慌てて発進するドライバーをよく見かける。これは非常に危険な行為で、周囲の安全確認をしないまま発進することで、不意の飛び出しなどに対応できなかったり、前方のクルマに追突したりする危険が高まるからだ。
いくら違反にならないとしても、信号待ちでのスマホ操作は危険。よほどの緊急事態でない限り、信号待ちでは操作しないことを心掛けたい。
ハンズフリーやイヤホンでの通話はOK?
東京都をはじめとして、イヤホンを使用してる時点で条例違反となる自治体もあるので注意しよう
手に持っていないからといって、違反になる危険性がゼロというワケではない。受話器を持たずに、ハンズフリー機能やイヤホンを使い、通話することは道交法では禁止されていないものの、イヤホンの使用を条例で禁止している自治体もある。
例えば東京都では、「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない」という条例(東京都道路交通規則 第8条 5項)が規定されている。つまり、イヤホンを使っての通話はNGということになる。
違反した場合は、5万円以下の罰金が科せられる。東京都以外でも大阪府、愛知県など、全国の自治体で同様の条例を規定しているところは多い。ちなみに、この条例は自転車にも適用される。
ハンズフリーやイヤホンを使用したとしても、注意力が散漫になることは間違いない。海外では、ハンズフリー機能を使用した通話も取り締まりの対象になるという国もあるくらいだ。そのため、運転中にはたとえハンズフリーであっても通話は必要最小限に、間違っても長電話をしたりしないようにしよう。
スマホの取り付け位置にも要注意
手に持っていないからといって、違反になる可能性がゼロというワケではない。落とし穴となるのがスマホの取り付け位置だ。数多くのスマートフォンの車載用ホルダーが販売されている昨今だが、取り付け位置によっては取り締まりの対象になる。
注意したいのは、ダッシュボードに固定するタイプの製品。「道路運送車両の保安基準」第21条の第3節、細目告示183の「直接前方視界の技術基準」によると、車両の前方にある高さ1mの円柱が見えなくなるようなものを取り付けることはできないとされている。ということで、ダッシュボードに固定すると、位置によってはこの規定に抵触する可能性がある。
しかし、車両の前方にある高さ1mの円柱が見えなくなるという規定は実にわかりづらい……。どの位置がNGなのかは素人が判断することはほぼ不可能。ただし、警察による街頭検査で、ダッシュボードの上にそびえ立つように設置していたり、明らかに運転中に画面が自然と視界に入り、視線の移動だけでチラ見ができてしまうような位置にあると判断された場合は、取り外しを命じられる可能性もある。
街頭検査などで明らかに道路運送車両の保安基準に抵触していると警察官に判断された場合には、その場で撤去が命じられて済む場合もあるが、ガチガチに固定して外せない状態であると、「整備命令書」が交付される。そして、15日以内に整備を受けて車検場で確認してもらわなくてはならないという面倒なことになる可能性もある。検査を受けることを無視すると罰金が科せられることもある。
こういったことから、ダッシュボード付近に取り付ける場合は、取り付け位置には十分に注意したい。
※編集部注…「スマホ取り付けユーザー」は、これからの季節はスマホ車内放置もご注意を。たとえばiPhoneの適正動作温度は気温-20~+45度。初夏の太陽がさし込む車内では20分で到達する可能性がある温度となる。「ちょっとした駐車だから持ち出さなくてもいいか」がスマホの命取りになるのでお気をつけあれ。
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みんなのコメント
迷いながら、地図見ながら走るよりはいいのだろうが。
前の車、その前の車、先の信号、後ろの車、対向車、左右の店から出る車、歩行者、自転車、バイク、スピードメーター、標識等々、見るもの多くて大変なのに。