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現在の自動化レベル3技術とは? 【自律自動運転の未来 第3回】

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現在の自動化レベル3技術とは? 【自律自動運転の未来 第3回】

 2021年3月5日、「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドが発売されました。Honda SENSING Eliteには、世界で初めて、公道で走行可能な自動化レベル3技術が含まれています。リース形式に限定されますが販売は好調のようで、すでに第一期分である35台は完売間近とのこと。

 本連載では、Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドの公道試乗レポートを報告する予定ですが、本稿ではそれ先立ち、Honda SENSING Eliteの全容と、現時点での自動化レベル3技術の取り決めをご紹介します。

今もある! 現代版「羊の皮を被った狼」!!

文/西村直人 写真/Adobe Stock、ホンダ

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■「レベル3」といっても「完全自動運転」にはまだ遠い

 がっかりしてほしくないのですが、Honda SENSING Eliteの自動化レベル3技術は、いつでも、どこでも、どんな状態でも、これまでドライバーが行なってきた運転操作を、システムが代わって行なうわけではありません。国際的に決められた枠組みに則り、システムの機能限界を超えない範囲で正しく機能するよう設計されています。

 その上で、最初にHonda SENSING Eliteの立ち位置から改めます。

ついに発表された「レベル3」技術を搭載したホンダレジェンド。100台の限定生産であり、1台あたり1100万円(希望小売価格であり実際にはリースのみ)という車両価格には驚いたが、ともかくここまでたどり着いた

 ホンダでは2014年に初めて先進安全技術群である「Honda SENSING」を現行レジェンドの初期型(通算5代目)に搭載しています。よって今回のHonda SENSING Eliteは、この2014年の先進安全技術がベースです。

 Honda SENSINGはその後、ホンダ各車に展開されセンサーや制御ソフトウェアのアップデートを行ないながら、これまでに販売された搭載車は240万台を数えます。

ホンダが歩んできた安全技術の進化の歴史(クリックで拡大します)

 迎えたHonda SENSING Eliteでは、従来のレジェンドが搭載していたHonda SENSINGとは、次の3点が大きく異なります。

(1)/既存技術の延長として、A=後方誤発進抑制機能、B=近距離衝突軽減ブレーキ、C=車線変更時衝突抑制機能の追加。

(2)/より高度な運転支援技術として、D₌ハンズオフ機能付車線内運転支援機能、E=ハンズオフ機能付車線変更支援機能、F=ハンズオフ機能付高度車線変更支援機能、G=緊急時停車支援機能、H=トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)の追加。

(3)/自動化レベル3技術を実現するために、カメラ、レーダー、ライダーなど複数種類の車載センサーによるセンサーフュージョン方式の採用とともに、車両制御を行なうステアリングやブレーキ系統も2重で搭載。これによるシステムの冗長性(≒複数経路による確実な実行が期待できる能力)を向上。

Honda SENSING Elite作動中には、ステアリング中心部のブルーのライトが点灯する。こういうユーザーに対する「わかりやすさ」も先進技術には重要

■少しずつ「できること」が増えていく

 では、(1)~(3)を受けHonda SENSING Eliteでは「何ができて、何ができない」のでしょうか。

 (1)の「A」と「B」はHonda SENSINGに含まれる「誤発進抑制機能」との組み合わせで、いわゆるペダルの踏み間違い事故を抑制する「踏み間違い衝突軽減システム」です。具体的には低い車速域で頻発している、ドライバーのペダル踏み間違いによる接触事故を抑制します。

「C」はドライバーによる車線変更時、後側方にいる、もしくは迫り来る車両との衝突のおそれがある場合に、ディスプレイ表示と警報ブザーでドライバーの回避操作を促し、ドライバーが反応しない場合はステアリング操作を支援して衝突を抑制します。

Honda SENSING Eliteは、「これまでの安全技術」に上乗せするかたちで、さらなる新しい機能が追加される。土台も大事だし、こうやって少しずつ進化することが重要(クリックで拡大します)

 (2)の「D、E、F」はいずれも高度運転支援技術である自動化レベル2までに相当する技術で、レベル3が機能する条件が整わなくとも作動します。ハンズオフ機能とあるように、センサーが正しく自車周囲を把握しドライバーが正面を向いて直ちに運転操作の再開ができる際にはステアリングから手を放すことができます。詳細は試乗レポートで撮影画像など交えて報告します。

「G」は国土交通省による「ドライバー異常時対応システム」の「発展型(路肩等退避型)の高速道路版のガイドライン策定」に則った制御です。

 2018年に大型観光バスへの実装がスタートしたドライバー異常時対応システムは、技術と法整備の進捗から単純停止方式→車線内停止方式と進化してきました。

 Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドでは、路肩等退避方式へとさらに安全性を高めました。高速道路や自動車専用道路での本線を走行中にドライバーに何らかの異常が発生した際、路肩等に十分なスペースがあるとシステムが判断した場合に車線を変更して安全に停止します。

緊急時停車支援機能。自律自動運転にはとても重要な機能

「H」はHonda SENSING Eliteの真骨頂である自動化レベル3技術そのものです。自動化レベル2では手(ステアリング操作)と足(ペダル操作)の部分的な運転操作サポートが受けられましたが、レベル3技術では、これに眼(センサーによる安全確認操作)が加わります。

 しかも、これまで部分的なサポートから、システムが責任を持つ、システムが主体となった運転操作が行なわれます。ここが、あくまでも責任はドライバーにあったレベル2までの運転支援技術と大きく異なる点です。

■「できることをやる」ときにも条件がある

 このように、人の運転操作に近づいたレベル3技術ですが、システムが主体となった運転操作を実行するには条件があります。

 その条件とは大別すると以下の3項目です。

「あ」/WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において国際基準として成立した、「乗用車の自動運行装置(高速道路等における60km/h 以下の渋滞時等において作動する車線維持機能に限定した自動運転システム)」に則った制御であること。

「い」/運行設計領域(ODD/Operational Design Domain)に則った制御であること。

「う」/システムからの運転再開の要求に、ドライバーが直ちに応えて運転操作の再開ができること。

クルマに新しく「できること」が増えると、まずはそれが「できる機会」も制限される。少しずつ「できる機会」が増えていって、機能が磨かれ、技術は進歩する

「あ」は、WP29で成立した国際基準そのもので、現時点での自動化レベル3技術の全容です。「少なくとも注意深く有能な運転者と同等以上のレベルの事故回避性能が必要で、運転操作引継ぎ警報を発した場合、運転者に引き継がれるまでの間は制御を継続しなければならず、運転者に引き継がれない場合はリスク最小化制御を作動させ、車両を停止させること。ドライバーモニタリングシステムの搭載。システムの作動状態記録装置の搭載。サイバーセキュリティ対策。シミュレーション試験、テストコース試験、公道試験及び書面審査を適切に組み合わせた適合性の確認」など、事細かな規定が設けられています。

「い」は、予め設定されたシステムの作動条件です。道路/地理/環境/車速など多岐に渡る条件のなかでシステムが正しく作動することが求められます。逆説的には、このODD範囲外ではシステムが正しく作動しない可能性があるのです。

「う」は、「あ」にも関連する事項です。システムからの運転再開要求に応じることが、自動化レベル3技術でもっとも重要あることが定められています。

 このようにHonda SENSING Eliteでは、複雑な取り決めをクリアしつつ、ドライバーにもシステムへの協調を求めることで自動化レベル3技術を実現しているのです。

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みんなのコメント

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  • 良く何かを調べて書いたみたいだけど、一番重要で難しい部分、自動運転責任なのかドライバー責任なのかの考察が抜けている。動運転解除時に警告を出すらしいがその警告中の事故はどちらの責任になるのか、など。

    何かあった時にメーカー、ドライバーがお互いにくだらない責任逃れに終始、どちらに責任があるかのこれまたくだらない争点で裁判が長期化して被害者に迷惑をかける事態は避けなければならない。カー雑誌と言うならそういう部分を掲載するべきでは。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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