登録車と軽自動車を合わせたランキングトップ10内に軽が6台
一般社団法人・日本自動車販売協会連合会(以下自販連)と、一般社団法人・全国軽自動車協会連合会(以下全軽自協)からそれぞれ、2018年2月の車名別販売ランキングが発表されたので、それらをベースに登録車と軽自動車を合わせた含軽(登録車だけの場合は“除軽統計”と呼ぶ)販売台数トップ30を作成した。
その結果2018年2月にもっとも売れたクルマは2万2007台を販売したホンダN-BOXとなった。登録車で最上位は日産ノートで1万3769台となっている。ちなみに自販連と全軽自協の販売統計は、登録車は登録台数、軽自動車は届け出台数(いずれもナンバープレートが取得できた状態)ベースとなっている。
興味深いのはトップ10のうち、軽自動車が6台も入っているということ。いずれも月販1万台オーバーとなっている。もちろん人気の高い車種なので単純に“良く売れている”のは確かだが、やはり激しい販売競争のなかでの自社届け出分もかなり含まれているというのは容易に察しがつく。
自社届け出車両とは、新車ディーラーが抱えるナンバープレートの付いていない未使用の在庫車を、購入したエンドユーザー名義ではなく、在庫車を持つディーラーなど販売サイドが自社名義で届け出を行い、ナンバープレートの発給を受け、ナンバープレートをつけた状態のものを指す。そして未使用のまま“届け出済み軽未使用車”として、中古車あるいは未使用車専売店などの店頭に並ぶことになる。
軽自動車の場合は月末にライバルメーカーの動向を探りながら(業販店と呼ばれる正規メーカー系ディーラーと販売協力関係にある業者は一般的に複数のメーカーと業販店契約を結んでいるので、そこからライバルメーカーの動きを探ることもできる)、自社届け出車両による上積みで販売台数を調整し、ライバルを追い抜ければ御の字だし、最低限ライバル車に大差をつけられないようにしたりしている。
工場稼働率維持のために、ディーラーへは絶えず行き先(エンドユーザー)のない生産車両が送られてくることによる在庫過多状況を少しでも解消しようとするなど、自社届け出を行う理由はさまざまなようだが、そのために中古車市場では軽自動車を中心に未使用状態の中古車が溢れている。
今回のランキングでは年明けから本格販売をスタートさせたスペーシアも”含軽統計”で4位に入っている。さすがにこのタイミングではスペーシアの届け出済み軽未使用車は目立っていないが、ディーラーと販売協力関係にある業販店にナンバー付きのスペーシアが置いてあるようなので、やはり自社届け出はそれなりに含まれているようだ。
メーカーによっては、ディーラーや業販店へ超短期の特別なリースプランでのデモカーとしての導入を斡旋しているとのこと。結果的にこのリースプランによりディーラーや業販店では数千円程度の負担だけで、半年ほど試乗車などとして店頭に置くことになり、リースアップ後には未使用ならぬ“ちょこっと使用中古車”として、中古車展示場などに並ぶことになる。つまりあの手この手で“数合わせ”が日常的に行われているともいえるのだ。
未使用車はナンバープレートをつけた直後に中古車展示場に並べても、新車販売時での値引き販売が結構荒れているので、新車での購入に対する割安感が少ない。それゆえ半年ほど“寝かせて”から、展示場に並べるのが一般的となっている。
しかし、それでも割安感がなかなか強まらないので、最近ではナンバープレートをつけて、半年ほどディーラーの試乗車や代車として使用したあと、中古車として展示場に並べる“ちょこっと使用車”というものも増えている。さらにレンタカーとして短期間使用したものや、1年ほどカーシェアリングで使用したものなど、“ちょこっと使用車”は多種多様なものとなっている。
いずれも車両自体に問題があるわけではなく、メーカーやディーラーの在庫処理や販売実績確保のために行われているものと考えられる。そしてわれわれ消費者にとってみれば“選択の多様化”が起きているだけである。
デメリットとしては、ナンバープレートがついているのに未使用車として、中古車市場に多く出回れば出回るほど、下取り査定額や買い取り額の相場ダウンは進んでいく可能性が高い。つまり気に入って愛車として乗っている個人ユーザーのクルマの下取り査定額や買い取り額までを必要以上に下げてしまうことになってしまう危険性を孕んでいるのである。
販売ランキングは人気のバロメーターとしてチェックするひともいるだろうが、最近の新車販売台数では、とくにトップランキングに近ければ近いほど、自社登録(軽自動車は届出)や、レンタカー、カーシェアリングへのフリート販売分が結構な割合で含まれているので、単純に“販売台数が多い=人気が高い”ということにもならないともいえる。
新車販売に限らず、統計数字というものは、そのまま鵜呑みにせずに、その背景にどんなものがあるかを知ることで、さらに制度の高い分析ができるのである。
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