BMWのラインナップの中にあって常に、特別な存在であり独自性を保ち続けるMモデルたち。新しい「M4」もまたMの伝統を受け継ぎながら、最先端スポーツとしての革新が盛り込まれている。先達であるM2、M5と乗り比べてみると、活気あふれる独自性の魅力が浮き彫りになって来た。(Motor Magazine2021年6月号より)
限られた速度域でも同じ感動が味わえる
今回はまさに「M三昧」。最新のM4 コンペティション(G82)、M5 コンペティション(F90)、そしてM2 コンペティション(F87)の3台を一般道、高速道路、ワインディングロードで試乗したのだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
いわゆるノーマルのMモデルに対して「コンペティション」とネーミングされたモデルは、より高性能を望むユーザーのためのパワーアップ版と考えていい。エンジンの強化に合わせてボディを補強し、サスペンションのチューニングも変更している。たとえばM5の場合、車高が6mm(車検証では5mm)下がっている。
そんな特別なモデルたちのインプレッションを通して、時代を経てなお受け継がれていくMらしさを感じることができた。一方で新型M4の、ひと足飛びとも思える革新ぶりを実感。そこに垣間見えた「次世代M」への期待値について、探ってみたいと思う。
クルマは走る道によって印象が変わる。たとえば日本とドイツでは日常でのスピード域がまったく異なるために、その印象にも大きな差が生じる。市街地は50km/h制限だが、郊外に出れば一般道でも100km/h制限になるドイツは、クルマも伸び伸びと走っている感じがする。アウトバーンともなれば推奨スピードは130km/hだが、とくに規制がない区間では事故さえ起こさなければもっと出せると規定されている。
そんな道路環境で育ったMモデルを日本で走らせると、つまらない・・・と思うかもしれない。だが、実はそれなりに、楽しくドライブできる。ドイツでは5速、6速に達する領域が日本では2速、3速となる感じ。絶対速度は次元が異なるものの、たとえばエンジンサウンドなどは、同じ次元で楽しむことができる。
そんな目線で3台を乗り比べてみた。まずは高速道路。たとえ80~100km/hというペースであっても、クルージングが楽で楽しいのはやはりM5だった。もちろんノーマルのM5に比べるとコンペティションはいかにも足を固めてある感じで、不整路面では揺すられる。6mmのダウンによって、バンプ側のストロークが犠牲になっている感触はある。しかし絶対的な重量があることとホイールベースが長いことが、乗り心地を比較的良好にしている。
なにより4L V8ツインターボエンジンが発揮する余裕のパワーは、ドライバーのストレス解消に効果的だ。ハイペースでもやもや気分を払拭するのではなく、ゆとりを増す意味で疲労が少ない。大げさかもしれないけれど、長距離ドライブなら走行距離が半分くらいに感じるほどだ。
逆にそんなボディの大きさがデメリットになりそうな狭いワインディングロードを走ってみても、思ったより軽快に走ることができた。フロントまわりは補強材で剛性をアップ、重心高も低いので、ハンドルの切り角に応じてノーズが素直に入り込む。無駄に肩に力を入れることなく、スイスイ気持ち良く走りの良さを満喫した。
日本の狭い峠道で光るM2の「凝縮感」
そんなM5以上に、一見してワインディングロードが得意そうなのはやはり、M2だろう。そのコンパクト感は市街地走行や駐車環境も含めて、日本の道路事情に合っている。ボディのサイズ感だけでなくホイールベースも、M5の2980mm、M4の2885mmに対してM2は2695mmと、結構な差がある。そのぶんヨーの動きなどを機敏にしやすいから、タイトターンはことさら得意だ。
もっとも、コンパクトなボディの割には、M2の車両重量は実はそれほど軽くはない。M5の1940kg、M4の1700kgに対して1630kg・・・つまりM4より大人ひとり分軽いだけだ。一方、同じ3L直6ツインターボ同士のエンジンパワーの比較では、M4が510ps、M2が410psと、25%ほども違う。M4の方がパワフルに走れることは、間違いない。
実際に、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース)で開催されるBMWドライビングエクスペリエンスのトラックトレーニングで、M4(F32)とM2(F87)を乗り比べたことがあるが、断然M4の方が走りやすかった。超ハイスピードでのコーナリングと下りながらのカーブへの進入などクルマが不安定になりやすい状況では、M4の安定感が心強い。これは路面のミューが低く、また荒れているせいもあって、M2のホイールベースの短さが不意なヨーの動きを生み、ドライバーに素早い対応を求めてくるからだ。
コーナリングしている状態から直線に向かって立ち上がる時に、いち早くアクセルペダルを踏めるのはM4だった。きれいな路面ではM2でもアクセルペダルを踏んでいけるが、荒れた舗装での踏み過ぎはM2の場合、不安定になるのである。
抜群の安定感と追従性。その走り、まさに意のまま
そんなことを思い出しながら今回も新型M4でワインディングロードを走ると、常に安定感を保ちつつ、ドライバーの意図どおりのライントレースを可能にしていた。サスペンションのセッティングは、ドライビングモードを「コンフォート」にするとコーナー立ち上がりでロールの戻りが少し遅い感じでもたつくので、「スポーツ」がちょうど良い。「スポーツ」にしても乗り心地はそう悪くならないあたりもまた、新型になって進化したところだろう。
新型M4はボディ剛性が非常に高くなっていて、タイヤから伝わる衝撃がボディを無駄に振動させない。短いサスペンションストロークでも、衝撃をうまくいなしている感じなのだ。
おかげで、電子制御によりダンパーの減衰力を硬めにしても、ある程度の範囲なら乗り心地も担保できるし、路面の不整もうまくいなしてくれる能力が高くなっている。これはなかなかいいできだ。次回、ノルドシュライフェを走るのがとても楽しみになった。
そんなふうに「それなりのペース」でワインディングロードを楽しんで走っている時、気づいたことがある。最近の低速トルクが非常に太いパワートレーンたちを相手にする時のようにズボラな運転をすると、M4の新しいS58B30型エンジンは想定していたほどに力強く加速してくれないことがままあった。
これはつまり新エンジンの特性が、先代より高回転型になっているということだろうか・・・低回転域では明らかにトルク不足を感じさせるケースがあったのだ。具体的には2000rpmくらいからの加速感だ。M2なら550Nmの最大トルクを2350-5250rpmで発揮するし、M5なら750Nmを1800-5860rpmで絞りだす。ちなみに先代M4が搭載していたS55B30型なら、550Nmを1850-5500rpmで発生させていた。ところが新しいS58B30型では、最大値の650Nmが2750rpmを超えたところから生まれる。新型では2000rpmあたりでは、トルクが盛り上がってこないのだ。
天井知らずに吹けあがる、あの快感が再現される
こうした変化はいったい何を意味するのだろう。Mモデルも、次のフェーズに踏み出したというのだろうか。より高い回転数まで美味しい領域を引き上げる特性はまるで、大排気量NA時代を思わせる。かつてMモデルたちが体感させてくれた、確かな伸び感を伴いながら天井知らずに吹けあがる「あの」エモーションを再現しようとしているのではないか・・・。
どんな運転をしようと速く走れてしまうのでは、つまらない。「美味しい」回転数のことも頭に置いてコントロールできるドライバーは速さとともに気持ちよさも究めることができるだろう。そのための味付けだとしたら、凄い。
もしかするとM社は、クルマを操る愉しさ、「駆けぬける歓び」の原点に、立ち返ろうとしているのかもしれない。これからのMの変貌と革新の行方が、とても楽しみだ。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)
BMW M4クーペ コンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1348万円
BMW M2 コンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高:4475×1855×1410mm
●ホイールベース:2695mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2979cc
●最高出力:302kW(410ps)/6250rpm
●最大トルク:550Nm/2350-5230rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:10.3km/L
●タイヤサイズ:前245/35R19、後265/35R19
●車両価格(税込):935万円
BMW M5 コンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高:4990×1905×1475mm
●ホイールベース:2980mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:4394cc
●最高出力:460kW(625ps)/6000rpm
●最大トルク:750Nm/1800-5600rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・68L
●WLTCモード燃費:-
●タイヤサイズ:前275/35R20、後285/35R20
●車両価格(税込):1900万円
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