この記事をまとめると
■BMWにはロードスターの「Z」シリーズがある
世界トップのエンジンメーカーBMWが「1気筒500cc」にこだわる意味!
■現在は「Z3」から発展した「Z4」のみをラインアップしている
■かつては「Z1」「Z3」「Z8」がラインアップされ、「Z3」にはクーペもあった
BMWのロードスターは「Z」を頭文字とする
ドイツ車のプレミアムブランドはドイツらしく、自分たちの車種をきちんと系統だてて名前をつけるのが上手だ。BMWも例外ではなく、セダン系は3桁の数字で車格と性能を示し、スポーツモデルはM、SUVはX、電気自動車はiのあとに数字を加える手法が浸透している。
ただしMやXがラインアップを増やしているのとは対照的に、現行モデルでZシリーズはZ4のみ。それもトヨタGRスープラとの協業になっている。
スポーツカーが生きにくい時代であることを痛感するけれど、歴史を振り返っても、Zシリーズが複数の車種を用意していた期間はわずかしかない。
最初に登場したのは1987年にデビューしたZ1だ。BMWの市販車ではミッドシップのスーパーカーM1に続くアルファベット+1の車名で、ドアが電動で上下してサイドシルに引き込まれるという、独創的な構造を持つオープン2シーターだった。
なぜBMWはZ1を出したのか。メカニズムに理由があると思っている。その後の3シリーズなどで採用されるフロントミッドシップレイアウトやマルチリンク式リヤサスペンションを導入していたからだ。
生産台数は8000台ぐらいだったというが、まったく新しいプラットフォームやサスペンションをいち早くユーザーに試してもらう、ベータ版としての役割には有効だったのではないかと思っている。
ロードスター人気にあやかってZ3としてZシリーズが復活
Zシリーズの存在を多くの人に広めたのが1995年発表のZ3だ。こちらは以前のコラムでも書いたように、ライトウェイトスポーツのベンチマークになったマツダのユーノス・ロードスターの上級版として企画されたものだ。
これが現在のZ4に発展するわけだが、まったく違うコンセプトのクルマに同じシリーズ名を与えるBMWの柔軟な発想には感心する。しかもロードスターに続いてクーペも登場させ、Mロードスター/Mクーペの名前でMシリーズまで出すのだから、ドイツ人はしたたかだ。
この頃が複数のZシリーズがあった時期で、2000年にZ8が生まれている。1950年代のロードスター、507をモチーフにしたもので、エンジンも507と同じV8だった。といってもラグジュアリーカーではなく、エンジンは当時のM5と同じ、トランスミッションはMTのみという硬派な成り立ちだった。
こちらはBMWジャパンが正規輸入したが、ポルシェ911にもティプトロニックが選べる時代だけに、ヒットとはいかなかった。それでも、映画007のボンドカーに起用されたほか、アップルの共同創業者スティーブ・ジョブスが愛車にするなど、話題は多かった。
新車のガソリンエンジンスポーツカーがこの先も販売できるかどうかわからない今こそ、Z8復活の最後の好機ではないだろうか?
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