マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がF1第21戦サンパウロGP金曜日のフリー走行で6基目のICE(内燃機関=エンジン)を投入した。これにより、フェルスタッペンは日曜日の決勝レースで5グリッド降格となる。
なぜ、レッドブルとホンダ・レーシング(HRC)は、このタイミングでフェルスタッペンのエンジンを新しくしたのか。
フェルスタッペン、スプリント予選4番手「路面の再舗装で、かえって運転しづらくなった」レッドブル/F1第21戦
ひとつ噂されているのは、前戦メキシコシティGPでのトラブルだ。ただし、HRCの折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は、その噂を否定した。
「メキシコシティGPのフリー走行の事象とは関係ありません。メキシコGPのトラブルはそもそもパワーユニットではなく、エンジンに空気を取り込む部分のエア漏れですので、メキシコシティGPで交換するために外した初日のパワーユニットも、2日目以降に載せたパワーユニットもどちらも問題はありません」
問題がないのに、新しくした理由は何か。レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は地元オーストリアのテレビ局にエンジンを新しくすることで、パフォーマンスの向上を狙うという趣旨の発言をしている。
折原GMは新しいエンジンのほうが当然ピークパフォーマンスは上回るが、真の目的はパフォーマンスではないと語る。
「シーズン残り4戦で、ポイントを守り切るにはどうしたらいいのかを考えた場合、いまのエンジンでやりくりしたほうがいいのか、あるいは5グリッドダウンしてでも新しいエンジンを入れたほうがいいのかを、ずっとチームと話し合ってきました」
フェルスタッペンのエンジンはカナダGPで投入した3基目が使用できなくなり、4基目をイギリスGPに投入。その後、ベルギーGPでペナルティ消化し5基目を入れていた。
当初はプールアウトした3基目を除く4基のエンジンでシーズンを乗り切るつもりだったが、シーズン中盤からマクラーレンが躍進。終盤に入るとフェラーリにも先行を許すレースが続いている。こうなると、プールにあるエンジンを総出で活用しなければ、戦えない状況となった。
しかし、ここである懸念が生じた。それはプールにある1基目のエンジンだ。これはオーストラリアGPのフリー走行で縁石に打ちつけた後、フロア交換とともに2基目に交換した。完全に壊れたというわけではないため、一応プールのなかにとどめていたが、じつはオーストラリアGP以降、一度も走らせていない。
「1基目はまだプールに入っているものの、(走らせた場合壊れる)リスクがあるため、いままで一度も使ったことがありません。今我々にとって最も痛いのはレースで0ポイントとなること。それを考えた場合、リスクのあるオーストラリアGPのエンジンをレースで使うのはやめておこうというのが、今回の新エンジン投入の理由にもなっています」
なお、1基目を金曜日用のエンジンとして走らせることはできなかったのかという指摘もあるが、F1では2022年から『カバーズ・オン』というルールが始まったことで、ガレージ内での作業時間が大きく制限されており、以来、どのチームも事実上金曜日のセッション後にパワーユニットを交換する時間がないため、いわゆる『金曜日エンジン』を走らせることは行っていない。
メキシコシティGPを終えて、ドライバーズ選手権でのフェルスタッペンとランド・ノリス(マクラーレン)の差は47点。4つのレースと2つのスプリントをノリスがすべて優勝してファステストラップを獲得しても、フェルスタッペンがすべて2位なら34点しか差は縮められない。
しかし、もしひとつでも決勝レースで無得点に終わると逆転されてしまう。絶対に決勝レースでのリタイアだけは避けたい。それがレッドブルとHRCがサンパウロGPでフェルスタッペンのマシンに6基目を投入した理由だった。
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