ナンバー取得を許された強烈なアストン
F1マシンの開発で名を馳せるエイドリアン・ニューウェイ氏が、レッドブル・レーシングとアストン マーティンとの協働で、ハイパーカーを作ると発表したのは2015年。ここまでの道のりは、長く困難なものだった。ゲイドンのCEOは2名も交代している。
【画像】強烈公道マシン アストン マーティン・ヴァルキリー 競合車 ワンオフのヴィクターも 全123枚
だが遂に、150名のロイヤル・カスタマーへの納車は、ほぼ終了したという。英国編集部へ、アストン マーティン・ヴァルキリーに試乗する機会が巡ってきた。
筆者が降り立ったのは、中東のバーレーン・インターナショナル・サーキット。最高出力1156psを発揮するヴァルキリーが本領を発揮できる、数少ない場所の1つといえる。ランオフエリアが広いから、初試乗には最適といえるだろう。
恐らく、いや間違いなく、正式にナンバープレートの取得を許された、最も強烈なハイパーカーだといえる。ライバルブランドも驚愕の性能を誇るマシンを開発しているが、走れるのはサーキット限定という例が少なくない。
ニューウェイが掲げた当初のビジョンが、殆ど妥協されることなく、現実のクルマとして体現されている。ヴァルキリーの特別ぶりを、手短な言葉で表現することは難しい。
0.1ミリ単位でボディのサイズを指定
スタイリングを担当したのは、アストン マーティンのチーフデザイナー、マイルズ・ニュルンベルガー氏。ルノー・グループの1つ、ダチアのデザインチーフを短期間努めた後、同社に戻ったばかりというタイミングだった。
ヴァルキリーには、厳正にボディの寸法が決められていた。ニューウェイは、0.1ミリ単位で各部位のサイズを指定したそうだ。
それでもニュルンベルガーは、コクピット空間を拡大するため、会議を通じて8mmの拡大を実現している。頑なな彼から譲歩を引き出したことに、ミーティングルームは驚きに包まれたそうだ。それを知った技術者チームからも、拍手が湧いたらしい。
とはいえ、コクピットは広くない。2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、筆者は既にヴァルキリーの助手席へ座っている。当時のアストン マーティンCEO、トビアス・ムアーズ氏がステアリングホイールを握る隣で。
運転席との間隔が非常に近く、大人2人が快適に過ごせるとは思えなかった。ボディ側面に伸びるサイドポッドが大きく、ガルウイング・ドアは小さくしか開かない。150名のオーナーは、自身の身体をなんとか押し込むことになる。
もちろん、今回座るのは運転席。1人で。少なくとも1度シートに身体を収めれば、足もとの空間は充分にある。ペダルボックスも前後に動く。肘まわりはタブ構造のシャシーが立ち上がり、やはり狭い。
筆者の場合は、ヘルメットを被るとルーフに当たってしまうため、シートからクッション材が省かれていた。身長は180cmもないのだけれど。
V12エンジンを補助する143psのモーター
運転席からの眺めは、往年のグループCカーのよう。凄くハイテクな。フロントガラスは思い切り湾曲している。ちなみに、このガラス面を拭き取るワイパーの回転機構も、相当な時間を投じて開発されている。ナンバーを取得するうえで、欠かせない要件だ。
後方の視界は、カメラ映像が担う。コンパクトなダッシュボードには、小さなタッチモニターも備わる。
ステアリングホイールはほぼ長方形。その中央部分に、アーバン、スポーツ、トラック(サーキット)のモードからシャシー設定を選べるスイッチや、メーター用モニターなどが所狭しと並ぶ。
ERSというボタンもある。これを押すと、V型12気筒エンジンと7速シーケンシャル・トランスミッションの間にある、143psの駆動用モーターによるブースト機能を効かせられる。回生ブレーキで得られたエネルギーを、加速力に展開できる。
このモーターは、変速時のトルクギャップも埋めるという。パフォーマンス重視のハイブリッドシステムだ。
完全な量産仕様として、ヴァルキリーにはアクティブ・サスペンションとスタビリティ・コントロールも実装されている。以前のグッドウッド・フェスティバルで同乗した時は、まだ動いていなかった。
トラック・モードを選択すると、ヴァルキリーは車高が下がり、ダウンフォースを増大させる。電子的に制御されるアクティブ・ウイングとフラップが機能し、最大で1100kgの力でクルマを路面に押し付けるという。
高性能なBEV級の鋭さでパワーが放たれる
ハイライトといえるのが、名門コスワースが開発した6.5L V型12気筒・自然吸気エンジンだ。シリンダーの点火が始まる前に、数秒間エンジンが空転し油圧を高めるため、始動するだけでも特別感は半端ない。
レース用ヘルメットを被っていても、1000rpmに落ち着くアイドリング時ですら猛烈にうるさい。バルブを動かすギア駆動のカムシャフトは、ドライバーのほぼ直後。1万rpmまでブリッピングさせると、激しい振動がシートへダイレクトに伝わってくる。
ヴァルキリーの発進は、見た目から想像するほど難しくはない。エンジンの力を借りず、ハイブリッド・モーターだけで低速の短時間なら走れるためだ。モーターの逆回転でバックできるため、7速シーケンシャルMTにリバースギアは備わらない。
エンジンのクラッチが繋がるまでは、とても滑らか。バッテリーEV(BEV)のように加速はしないが。
貸切状態のバーレーン・インターナショナル・サーキットでも、ヴァルキリーへフルスロットルを与えるには勇気がいる。右足へ力を込めると、間髪入れずエンジンが反応し、全身がしびれるような興奮が湧いてくる。
まさに電光石火。高性能なBEV級の鋭さでパワーが放たれる。そしてBEVとは異なり、エンジンの回転数が高まるほどパワーは増大していく。
この続きは後編にて。
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