淡い期待はやめて現実と向き合うしかないと思ったそのとき、後期型が現れた!
トラベル系コンテンツディレクターとして糊口をしのぐ筆者が、齢60を前にしてドライブ旅行やスポーツ走行にも挑戦したいという想いから、憧れだった羽根付き「ポルシェ911」の購入を決意。経済的にも体力的にも限界にきている(?)アラカンのおっさんにポルシェは翼を授けるのか? 今回は、ついに気になる1台を発見! はたしてどんな物件か?
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オールブラック! 素(?)の2018年式991後期型GT3あらわる
中古車情報サイトも相変わらず、後期型でコレという物件は引っかからず、好みのルックスである前期型でエンジン交換済みの物件を探すしかないな、とあきらめかけていたそのとき、たまたま新しくオープンしたと思しきクルマ屋さんのサイトに、なんと1台の991後期型GT3がひっそりと掲載されていた。
これまた神さまのお導きか(笑)、ほんと偶然とも言える出会いである。
2018年式のPDKで、色はジェットブラック。走行距離は2万5580km。クラブスポーツ仕様の個体だった。スポーツクロノメーター付きで、ブレーキは赤キャリパー。内外装のオプションといえばハンドルの赤いセンターマーカーやガーズレッドのシートベルト、ブラックペイントのホイールくらい。
いわばほとんどGT3のベース=「素」の状態、最も廉価版的仕様である。ワンオーナー車で価格は2000万円を切っていた。ずばり1980万円也。2万km以上という個体が市場にあまり出回っていないだけに珍しかった。それで2000万を切っているのだろう。
そこそこ走っている個体だし、理想とするGT3の仕様とは違うが近い存在である。四の五の言っている場合ではない! それでも自分の経済面から見たら十分高い価格なのだが、これも何かの縁。完全に「イチキュッパ」という数字のマジックに惹かれて見に行くことにした。
さっそく向かったのは一見アヤシイ倉庫
改めてサイトを良く見ると、関東近郊で輸入中古車を手広く扱っているT社が関係するショップだった。このT社ってどこか聞き覚えがあるなと思っていたら、後輩が「カイエンGTS」を購入した先であったのだ。彼からは「低金利ローンも扱っていて、スタッフの対応もいいっス」と聞いていたお店の系列である。これはまたまた何かのご縁! と心が踊ったのであった。
もちろんすぐさま問い合せをした。だが、モノはショールームにはないという。聞けば、別の場所に保管してるとのこと。「み、見せてください!」と頼み込んで、これまたすぐさま訪れた。おっさんのわがままかつ急なリクエストを受け入れてくれた営業担当の方の対応はたしかに良かった。
さて、向かった場所は看板もない都内某所のとある大きな倉庫だった。外観は真っ黒。建物は道には面しておらず、奥まったところにデーンとある。ぶっちゃけアヤシー(笑)。広大なスペースには速そうなAMGなどベンツ系が数台と整備スペースもあった。でも、外観とは裏腹に倉庫内は天井に何本も細長いライトが走り、なにやらボディチェックが丹念にできそうな明るい場所である。
こだわりの能書きはどこへやら。その姿にひと目惚れ
その怪しげな倉庫内の奥に991後期型GT3は鎮座していた。もう、見た瞬間に年甲斐もなく「かっこいい!」の連呼。あれだけ「GT3を買うならこの仕様」と能書きを垂れておきながら、その理想はどこへやら。
100mmもホイールベースが伸びたその姿は想像以上に大きく、迫力満点。ブラック一色で精悍だが、あぶないヤツ的オーラが漂うその雰囲気に完全にヤラれました。「買えるなら、もうコレでいいです!」と心の中で叫ぶほどのひと目惚れ状態。
しかし、そこはシニアらしく落ち着いて振る舞わないと! と、はやる気持ちを抑えて冷静にモノを見ようと心がけ、声を低めて現状や素性を聞いてみた。もっともおっさんの目の中はハートマークでウルウル状態。きっと担当者にはバレバレでカモ扱いだったに違いないが……。
現車は四国某所のポルシェセンターで納車されたワンオーナー車で初年度登録は2017年9月であった。後期型としてはかなり納入が早い部類の個体だ。ポルシェクラブジャパンのステッカーが貼られており、メンバーの方がオーナーだった模様。コロナ禍の影響もあったのか、四国から引き上げられた後、販売会社の名義になり一時抹消登録されている。しばらくそのままになっていたらしい。コンパートメントボックスを開けるとディーラーでの整備記録簿が残されており、記録は約2万kmまであった。基本的なメンテナンスは定期的に行っていたようだ。ひとつの安心材料ではある。
担当者いわく、修理歴はなし、走行距離の割に状態はいいという。表向き事故の形跡や屋外に放っておかれた雰囲気もなさそうであった。分かりもしないが、シロウトなりに、ひと通りボディまわりをチェック。でも、「ん-カッコいい」って言葉しか出てこない! 高い買い物になるであろうということを自分に言い聞かせながら、ぐるぐると何度も車体をなめるように見つつ、ドアやフードを開けたり閉じたり……。
シロウト目にはチリも合っているし、ガラスの傷も、再塗装されているような箇所も見当たらなかった。プロテクションフィルムがボンネット前部とフェンダー前部やフロントスポイラーを覆っていて、飛び石跡もほとんどない。そのフィルムの切れ目が、角度によっては10円パンチをくらったようにも見えるのが気になった程度だ。
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