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なぜスバルは4WDにこだわるのか?──冬の山形でスバル フォレスターに乗って考えた

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なぜスバルは4WDにこだわるのか?──冬の山形でスバル フォレスターに乗って考えた

スバルは、日本の4輪駆動乗用車の先駆けだ。開発のきっかけは冬の宮城県である。当時、東北電力が送電線点検用に使っていたジープは乗り心地が悪く、ヒーターも効かないといった問題を解決するため、初代「レオーネ」に(日産の)4輪駆動システムを組み込んだのがオリジンといわれる。1971年のことだ。

翌年の1972年には、一般ユーザーへ4WDモデル(エステートバンに設定)の販売を開始した。以降、スバルは4輪駆動にこだわってきた。「さまざまな道で安定した走りと深い安心感を生む」と、うたうように、ラインナップのほとんどのモデルに4輪駆動モデルを設定する。

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ちなみにスバルは、4輪駆動システムについて「AWD(all-wheel drive)」と呼ぶ。常時総輪駆動を強調したネーミングだ。なぜAWDか? 前述のとおり「安定した走りと深い安心感」を実現するためである。なお、今回の試乗会で私が乗った「フォレスター」も、すべてのモデルがAWDだった。

リアルワールドにおいて、積雪路のために4輪駆動を開発したスバルは、いまや、モータースポーツにも4輪駆動技術を活かす。そのため、AWDのシステムもバリエーションを拡大している。

「操る楽しさを実現させる」と、うたう「WRX STI」用のDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)方式AWDから、「燃費と安定性を重視した」アクティブトルクスプリットAWDまで、4種類のAWDシステムを揃える。

前置きが長くなってしまったが、私が2019年2月、冬の山形でフォレスターに乗ったとき、スバルAWDの歴史をまっさきに思い浮かべた。とくに雪で真っ白な景色のなかに佇むフォレスターを見て、(宮城ではないものの)スバルのヨンクの原点に身を置くような気分がしたものだ。

高度なAWDシステム

フォレスターのAWDシステムは、私が学生時代によく乗った、友人の「レオーネワゴン」の4輪駆動システムから大きく進化している。いまさらここで書くまでもないかもしれないが、とにかく走りがスムーズだ。

フォレスターにはアクティブトルクスプリットAWDが搭載されている。「前60:後40のトルク配分を基本に、加速、登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロールする」と、メーカーがうたうシステムである。

ようするに、クルマにまかせておけば大丈夫、というメカニズムなのだ。とくにマイルドハイブリッドシステムである「e-BOXER」を搭載したグレード「アドバンス」は、回生ブレーキ時のアンダーステアを防ぐため制動力を自動で調整するし、滑りやすい路面は適切なトルクコントロールのためモーター駆動の領域を拡大するなど、雪道をより安定して走行出来る機構が複数盛り込まれている。

今回のコースは、山形県酒田市内を出発し、鶴岡や寒河江(さがえ)や天童を経由し、山形駅まで向かう約200kmだ。まず中継地点までで乗ったのは2.5リッター水平対向4気筒エンジンにAWDを組み合わせたグレード「プレミアム」である。18インチタイヤ、アイサイトセイフティプラス、フルオートエアコン、全席シートヒーター、フロントシートの電動調整機能などを装備した、ちょっと贅沢な仕様だ。

搭載するエンジンは、239Nmの最大トルクを4400rpmで発生する設定であるが、低回転域でもしっかりと力強い。アクセルペダルの軽い踏み始めから大きなトルクが出たあと、途切れることなく加速力を持続する。

試乗車のタイヤは、ウィンタードライブに合わせて、氷結路面の多い北海道を中心に大きなシェアを誇るブリヂストンの「ブリザックVRX2」だった。なお、フォレスターのなかでも、オフロードテイストの強いグレード「X-BREAK」は唯一、標準で3シーズンタイヤ装着するが、試乗したプレミアムをはじめ、ほかのグレードはサマータイヤが組み合わされる。

さまざまな道を走った結果、「スタッドレスタイヤと組み合わせれば、フォレスターは無敵になるのでは?」と、思うのであった。積雪路でのグリップはしっかりしているうえ、コーナリングも正確だ。やや強めの制動をかけたときも、直進安定性はしっかり確保されていた。さらに、ブレーキを自動制御し安定したコーナリングラインを確保する「アクティブトルクベクタリング」も標準装備しており、安心感を高める。

もうひとつ感心したのは、ドライを含む各種路面における一貫した静粛性の高さである。だから、オーディオシステムの音質の良さが際立つ。広報部が用意したCDアルバム(2019年グラミー賞候補曲)を聴いてドライブしたときも、音量を上げたくなる場面はなかった。

刻々と変わる環境下で安心して走れる

もっとも雪深かったのは、中継地点近くにあった肘折(ひじおり)温泉の近辺だった。「肘を折った際の湯治に効果があった」と、平安時代に命名されたという説のある最上郡大蔵村の温泉地だ。日本有数の豪雪地帯で、2018年は4m超の雪が積もったほど。

周辺には除雪した雪の壁が左右から迫ってくるようなワインディングロードがある。ブリザックVRX2を履いたフォレスターはなんの不安もなく、雪の回廊というべき道でのドライブを楽しませてくれた。そしてこの地で乗りかえたe-BOXER搭載の「アドバンス」もおなじく楽しませてくれた。

私個人としては、アドバンスのナチュラルな加速感が好きである。その印象が雪上でも変わらなかったのが印象に残った。トルクの出かたが自然で、アクセルワークにそれほど気を遣わなくていいのが魅力のひとだ。

もうひとつは、平坦な積雪路での好燃費である。大きく加速する場面がないため、燃費がぐんぐん伸びていく。100kmほど走ったあとの実燃費は、リッターあたり13kmを超えた。スバルが公表しているWLTC燃費14.0km/Lに迫る。

AWD(常時全輪駆動)システムは、センターディファレンシャルにクラッチがついている。理論的にはごく低負荷時、前輪駆動となるものの、基本的には4つのタイヤにいつも駆動力が配分されている。通常は前輪駆動で走行し、いざというとき4WDに切り替わるシステムであれば燃費もさらに向上するかもしれないが、AWDは譲れないこだわりという。

それでも、WLTCによる14.0km/Lの数値は、けっして悪くない。雪国でよく走るという意味で、優れた燃費性能もフォレスターの特徴にあげていいだろう。

外気温が零下になる環境下では、シートヒーターのありがたさも痛感した。肩の付近まで電熱線が入っているせいか、すぐに背中全体がジワーっと気持ちよくあたたかくなる。足元をしっかり暖めるようヒーターの吹き出し口位置も気を遣っているというだけあって、今回のウィンタードライブは至極快適だった。

余裕ある居住性、広いラゲッジルーム、AWDがもたらす走破性、ボクサーエンジンのフィーリング……さまざまな魅力によって多くの支持を集めるフォレスターであるが、今回のロングドライブで頼りになる部分を充分に感じさせてくれたのであった。

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