2013年に登場した、現行型のT32型エクストレイル。既に7年目へと突入し、他社車台頭によって、魅力も見劣りがちとなってきた。
「国産4WD SUV豊作の年」と言われた2018年、エクストレイルは、フォレスターやCH-R、CX-5といったライバル達を抑え、「国産4WD SUVナンバー1」の看板をかろうじて勝ち取ったが、翌2019年には、強力なライバル「RAV4」の登場で、すぐさま奪われる結果となってしまった。
【快進撃止める戦略とは】新型キックスはロッキー/ライズを止められるのか?
そんなエクストレイルの次期型は、2021年早々にも登場か、と噂されている。次期型の登場で、エクストレイルは、王者RAV4を破り、再びカテゴリートップに返り咲くことはできるだろうか。
エクストレイルの魅力を整理し、エクストレイルが勝つための戦略を考察してみる。
文:吉川賢一、写真:日産、トヨタ、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】エクストレイル VS RAV4
王者RAV4の強さとは?
日本カー・オブ・ザ・イヤー2019-2020を獲得したRAV4
RAV4は、エクストレイルよりも90ミリ短く、45ミリ低く、35ミリ広い、ワイド&ローなディメンジョンだ。
「キーンルック」を採用したワイルドなフロントフェイス、大きなタイヤ、ワイドなフェンダー、そして無骨に見えるパネルの印影など、オフロードを走行するワイルドなイメージで作りこまれており、なかなかカッコいい。
インテリアに関しても、ダッシュボードが広く、オレンジのアクセントが入ったことで、車内に華やかさがある。
シフトノブやスイッチもレイアウトが分かりやすく、また、エアコンのダイヤルも、スノボの手袋や濡れた手でも滑らないよう、ゴムで覆われている点が、気が利いている。
RAV4 インパネ(写真はRAV4 Adventureのもの)
さらには、大型のナビモニターをダッシュボードの最上部に配置したことで、運転中の視界移動量も小さく、また視認性も非常に高い。
さらに、RAV4 Adventureには、「ダイナミックトルクベクタリングAWD」システムを採用している。
前後輪へのトルク配分と同時に、後輪のトルクを左右それぞれで独立制御して旋回性能を補い、さらにはディスコネクト機構によって燃費向上を実現するという、魅力的なシステムである。
ハンドリングも軽快だ。据え切りは軽めだが、車速が上がるとハンドルの復元力がしっかりとし始め、高速直進性が良くなる。
うねり路を走っても上屋がフワフワすることもなく、突起乗り越しでもガツンとショックが来ることもなく、うまくいなしている。
不快な振動はほぼなく、ボディが揺れてもスッと収まるので快適だ。高速道路を走っていても、普通に会話ができ、遠くで鳴っている程度のロードノイズレベルだ。
ハンドリングもよく、うねり路を走っても上屋がフワフワしない。
要するにRAV4は、完成度の非常に高い4WD SUVであり、次期型エクストレイルがガチンコ勝負で勝つには、「RAV4のすべてを凌駕するくらいのポテンシャルアップ」が求められる。電子制御式デフや電制ショックなども必要になるだろう。
しかし、次期型エクストレイルがそうしたパーフェクトSUVになったとしても、販売力の劣る日産の現状ではRAV4に勝てないと、筆者は考える。
主要SUV概要
現行エクストレイルはどうして売れ続けていたのか?
エクストレイル(2020年1月一部改良)
日産によると、エクストレイルのウリは、「インテリジェント4x4が実現する圧倒的な走破性」、「プロパイロットをはじめとする未体験の先進技術」、「先進のシャシー制御が実現する、意のままの走り」だそうだ。
確かに、どれも訴求力のある魅力的なポイントであり、体感すれば頷けることは多い。
しかし、先進技術や走りの良さは、ライバル車たちも持ち合わせているものであり、エクストレイルに際立ったアドバンテージがあるわけではない。では、どうしてエクストレイルは売れていたのだろうか。
その理由は、「ボディサイズ」と「価格」にある、と筆者は分析する。エクストレイルは、競合するライバル車たちの中で、最も長くて、最も幅が狭く、最も全高が高く、そして安い。
エクストレイル 車内
つまり、SUVの大切な積載性を、リーズナブルに提供している、という特徴を持っているのだ。
もちろん、カタログで車体寸法や価格を詳細に調べて購入する方は稀であろうが、車種選択の中で販売店を訪れて、エクストレイルを見た時に、多くの荷物を載せられて、しかも価格が291万円と、競合と比べて安いとなれば、必然的に顧客の頭には残るであろう。
次期型エクストレイルがRAV4に勝つための戦略とは?
次期型エクストレイルがRAV4に勝つためのヒントは、初代エクストレイルが登場したときのコンセプト「タフギア」にあると考える。
初代エクストレイルが登場した時代、本格的クロカンが多数いた中で、CセグメントのミドルクラスSUVとしてデビューしたエクストレイルは、「250万円そこそこで気軽に乗れるタフギア」として、その存在が認められたのだと思う。
初代エクストレイル
現行エクストレイルは、インテリアも豪華で贅沢なつくりになり、何となく、汚してはいけない雰囲気になってしまった、と感じるのは、筆者だけだろうか。
そこで新型エクストレイルでは、世界中を「おお!」と言わせる「サプライズ」を与えてほしいと思う。あえて贅沢装備をはぎ取り、初代の「タフギア」に回帰し、徹底的に安い価格で提供することができれば、面白いことになるだろう。
ナビゲーションも設定せず、AppleCarPlayやAndroid autoが前提のオーディオディスプレイにするなど、いくつか手段はあるはず。プロパイロット込で税込280万円で出すことができれば驚異的だ。
まとめ
この1年以内に新型エクストレイルがデビューするのかは定かではないが、久々に追い込まれた日産が一発逆転を狙う起爆剤になる一台に間違いはない。
ぜひ失敗も覚悟の上で、チャレンジをして欲しい。日産ファンとしては、「強気の日産の復活」を心待ちにしている。
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