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5代目BMW7シリーズの760Liは新次元の「駆けぬける歓び」を実現していた【10年ひと昔の新車】

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5代目BMW7シリーズの760Liは新次元の「駆けぬける歓び」を実現していた【10年ひと昔の新車】

2009年、5代目BMW7シリーズの760i/760Liが発表された。BMWのフラッグシップモデルとして、まったく新たに設計されたV12エンジンと8速ATを搭載。その走りはどういうものだったのか。ここではドイツ・ミュンヘンで開催された国際試乗会での取材の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

新開発のV12ツインターボエンジンにZF社製8速ATをドッキング
ついにBMWの「駆けぬける歓び」も、ここまで来たかと感服した。V8エンジンを搭載する750Liに試乗したときから、新しい7シリーズの運動性能の高さには感激していたが、今回、V12エンジンを積んだ760Liに乗って、その感激がランクアップ、感服へと昇華してしまった。

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言うまでもないことだが、大きくて重いクルマをスポーティに仕立てることは非常に難しい。どんなに優れた技術を持ってしても、運動の法則には逆らいようがないからだ。しかし、この760Liは車重が2250kg(EU準拠)あるにもかかわらず、ドライビングフィールは「重さとは無縁」だ。しかし、「軽やか」という表現も合わない。まさに新次元の「駆けぬける歓び」なのだ。

BMWはこの760i/760Liによって、7シリーズから1シリーズまで、すべてこの方向性で行くと改めて宣言したように感じられる。V型12気筒エンジンを積むショーファードリブンで使われることが多いモデルであれ、何であれ、「スポーティでなければBMWではない」というわけだ。

さて、この新次元の走りはどのように実現されたのかを順番に見ていこう。まずエンジンだが、完全バランスのシリンダーバンク角60度のV12であることは従来と変わらない。しかし、ツインターボを装着、さらに第2世代のダイレクトインジェクションであるハイプレシジョンインジェクションの採用などで、まったく新しいタイプになった。

そして、最高出力は445psから544psへ、最大トルクは600Nmから750Nmへと大幅にアップしている。しかも、最高出力の発生回転数が6000rpmから5250rpmへと下がり、最大トルクの発生回転幅が広くなったので、扱いやすさが格段に向上したわけだ。

車重は760iは従来と同一で760Liでも5kg増に留まっている。車重がほとんど変わらずに、出力、トルクともに20%以上アップしているのだから、走行フィールが変わらないわけがない。しかも、最大トルクが低回転から出るようになったので、扱いやすさも増している。また、燃費(EU総合モード)は760iで従来の7.5km/Lから7.8km/Lへと向上している。パワーアップと燃費向上を両立した背景には、ターボを使いこなす技術の進歩があることは明白だ。

8速ATが生むスムーズな加速感と、操る愉しさ
そしてさらにもうひとつ。この新次元の走りを実現した立役者が「8速AT」だ。BMWは先代7シリーズで、ZF社製6速ATを世界初搭載したが、今回は同じZF社製の8速ATを世界で初めて搭載した。6速ATのときと同じように、今後は名だたるブランドのラグジュアリーカーが次々と、この8速ATを採用するに違いない。

さて、この8速ATだが、スムーズなことこの上ない。高速道路へ合流するときのような通常の加速時には、いつシフトアップしたのか、ほとんどわからないようなレベルにある。シフトダウンのときは軽くブリッピングをして、ピタッと回転が合った状態でギアがつながるので、いっそうスムーズであることを実感させられる。

もちろん、従来の6速ATに比べてギア比は幅広くなっており、トップギアはハイギアードになった。これも燃費向上に一役買っているが、その効果は低回転からトルクフルになった新しいV12エンジンがあればこそ、ということは言うまでもない。

エンジン、トランスミッションについての注目点は以上だが、サスペンションや、よりダイナミック運動性能を生むための電子制御デバイスなどは、すでにデビューしている750i、740iと同様の進化を遂げている。

完全バランスのV12エンジンはどこまでもウルトラスムーズ
少し具体的な走行時の印象をお伝えしよう。スタートボタンを押してエンジンをかけると、まず静かで微振動などまったく感じられないことに驚く。完全バランスのバンク角60度のV12エンジンだけのことはある。その静粛性のレベルはハイブリッドカーのスタンバイ(エンジンがかかっていない)状態に匹敵すると言ってもいい。

加速フィールはトルクの厚い波が途切れなく続くようなイメージで、ターボの存在をほとんど感じさせない。これは担当エンジニアによれば「狙いどおり」だそうだ。そもそもBMWはV12をはじめV8も、直6もターボの存在感は抑えるということのようだ。

そして、この加速はどこまでも続いてしまう。試乗会場のミュンヘン周辺にはアウトバーンの速度無制限区間があるが、巡航速度の120km/hからアクセルペダルを少し踏み込むと、スピードメーターの針は一定の速さで動き続け、瞬く間にリミッターが効く250km/hに達してしまう。また、250km/hでもクルマは恐ろしく安定している。仮に単独走行ができるテストコースであれば、1時間この速度で走り続けても、ほとんど疲れはないだろうと思う。

アウトバーンを下りてカントリーロードを走る。ドイツは郊外の一般道の制限速度は100km/hなので、そこそこのペースで走れる。それでもそのときのエンジン回転数はわずか1700rpmほどである。これならば静かなはずで、燃費もいいはずだ。しかも、最大トルクは1500~5000rpmで出ているわけだから、運転もしやすく快適なわけだ。

さらに、ちょっとしたワインディングに入り、ハイペースで走ったが、その素早い身のこなしには脱帽した。アクティブステアリングなど電子制御装置の恩恵もあるのだろうが、それにしても凄い。フロントが重いと感じさせるようなこともなく、バランスよく小気味いい。しかも、これは760Li、ロングボディなのだからびっくりだ。

このクルマはショーファードリブンで使われることが多いようだが、もったいない。オーナーになったなら、自らハンドルを握るべきクルマだ。また、Mモデルを買おうと思っている人も、検討に値するクルマかも知れない。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之)

BMW 760Li 主要諸元
●全長×全幅×全高:5212×1902×1484mm
●ホイールベース:3210mm
●車両重量:2250kg
●エンジン:V12DOHCツインターボ
●排気量:5972cc
●最高出力:400kW(544ps)/5250rpm
●最大トルク:750Nm/1500-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:7.7km/L
●タイヤサイズ:前245/45R19、後 275/40R19
●0→100km/h加速:4.6秒
●最高速:250km/h 
※EU準拠

[ アルバム : BMW 760Li はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • この位の輸入車を中古で買うのは悪くない
    新車だとバカ高いが中古なら1/3以下で手に入る
    一生乗る事は無いと思っていた車に中古とは言え乗れるチャンスはある
    サスやブッシュに少し手を入れると走りが蘇り憧れだった車を運転するまさに走る歓びを体感出来る
    安く手に入れ致命的な不具合でもあれば車検の前に乗り換えれりば良い
    そこは機転を利かせれば良いだけ
    ただ周囲の偏見と妬みに耐える努力は必要になる
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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