コロナ禍の影響拡大で、マツダが苦境に立たされている。グローバル販売台数は対前年比9%減の141万9000台、日本の販売台数は前年比6%減の20万2000台だった。
売上高は同4%減の3兆4303億円、営業利益は同47%減の436億円、純利益は同81%減の121億円と、販売台数および利益も前年から大きく減少した。
コロナ禍が原因? 3ヵ月~1年 新車の納期が長くなる理由とは?
コロナ禍の影響を除いても、最近のマツダ車はもっと売れてもいいはず、と思っている人も多いはず。マツダほど、クルマ作りにこだわった自動車メーカーは他に存在しないからだ。
ここで改めて、マツダが持っている、強みは何か? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWeb編集部 マツダ
【画像ギャラリー】マツダ車の現行車種と今後デビューする新型モデル、マツダ2とマツダ6をチェック!
マツダしか持っていない強みとは?
各項目厳しい数字が並んでいる(出典/マツダ2020年3月決算期資料より)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各メーカーとも2020年3月期の決算は苦戦した。世界中で多くの人達が危険な状況に置かれ、外出も制限されたから、自動車産業も停滞して当然だ。
マツダが5月に発表した、2020年3月期の決算資料を見ると、新型コロナ禍の影響を受けて厳しい数字が並んでいる。
売上高は同4%減の3兆4303億円、営業利益は同47%減の436億円、純利益は同81%減の121億円。
グローバル販売台数は、日本が対前年比6%減の20万2000台、北米が同6%減の39万7000台、欧州が同2%減の26万4000台、中国が同14%減の21万2000台、その他の国々が16%減の34万5000台となっている。
さらに、2020年1~3月期の連結決算が203億円の赤字になり、3000億円の融資を要請しているという報道もあった。
まさに苦境に陥っているといえるが、ここで改めて、エールを送るという意味で、マツダにしかない強みを考えてみたい。
自動車には多くの企業が参入して競争相手も多いから、商品には優れた機能と併せて、ほかのメーカーとは違う個性も求められる。特にマツダは自動車メーカーとしての規模が比較的小さい。
2019年の世界生産台数は149万台で、トヨタの971万台(ダイハツと日野を含むグループ全体では1074万台)、ホンダの517万台、日産の496万台に比べると大幅に少ない。大量な販売とコスト低減では勝負できず、個性的な商品開発を行う。
2012年以降のマツダは「SKYACTIV技術」と「魂動デザイン」により、個性を従来以上に明確にした。
スバル(2019年の世界生産台数は99万台)もエンジンを水平対向に特化して、ボルボ(世界販売は71万台)はエンジン排気量の上限を2Lに抑え、ボンネットの長い外観に特徴を持たせた。マツダも同様だ。
1/「Be a driver.」というキャッチコピーにかけた想い
走りが退屈なクルマは絶対につくらないという、マツダのポリシーはクルマ好きの心を捉えている
まず今のマツダを象徴するキーワードは、CMにも使われる「Be a driver.」。この言葉には「何よりも運転が好きな人でありたい。だから自分たちが走らせて退屈だと思うクルマは絶対につくらない」という想いが込められている。
クルマのカテゴリーが限られ、高重心の車種もSUVが限界だ。今のマツダ車で最も全高が高い車種は1730mmのCX-8だが、全幅にも1840mmの余裕がある。全高が全幅を上まわるような縦長のクルマはつくらない。
CX-3とCX-30は、SUVでも全高が1550mm以下だ。外観に腰高感がなく、運転しても重心高を意識させない。日本では立体駐車場も使いやすく「運転が好きな人」に適した分かりやすいクルマつくりをしている。
もちろん、クルマを操っている感覚が味わえる、リニアなハンドリング性能は秀逸である。
2/毎年改良が行われる年次改良によって常に最新かつ最良のモデルを提供
マツダは毎年改良を行いブラッシュアップを行っている。写真は旧アテンザ、マツダ6
そして乗用車の選択肢を8車種に絞ったから(OEMを除く)、プラットフォームやメカニズムの種類も抑えられて合理的な開発が行える。
共通化も進み、例えばCX-8でエンジンに改良を施すと、CX-5やマツダ6(旧アテンザ)にも時間を置かずに展開できる。頻繁な改良が可能で、ほぼ毎年行われる年次改良によって、常に最新かつ最良のマツダ車がユーザーに提供されている。
これは大きなメリットだが、ユーザーからは「いつ買えば良いのか分からない」という話も聞く。可能であれば、車種ごとに年次改良の時期を決めておくと親切だ。
3/魂動デザインによるデザインの美しさ
2020年4月8日、「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」が発表され、マツダ3が受賞。これはワールドカー・オブ・ザ・イヤー(WCOTY)の部門賞で、いわば世界で最もデザインが優れたクルマともいえる
外観がカッコイイことも、今のマツダ車の特徴だ。マツダがラインナップのデザインの統一を図るための概念である「魂動デザイン」を打ち出したのは2010年のこと。
以来、マツダは微妙にニュアンスを変えつつ、各モデルにクラスを問わず共通するデザインコンセプトを与え、少々口悪く言えば「みな同じように見える」モデルをあえて提案し続けている。
マツダのデザイン全体を統括する常務執行役員デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏は、かつて魂動デザインのスタイリングについて、「複雑な動きの集合体だが、複雑に見せないというところにこだわっている」とコメントしていた。
ボディ全体としてまとまっているなかで、ボディパネルが微妙に変化していく、そんな細部にこだわるマツダ独特の職人的な頑固さがデザインに表れている。
設計の新しいマツダ3とCX-30では、フェンダーやボディサイドが緩やかな曲面で構成され、周囲の風景がキレイに映り込む。マツダ車ならではのデザインだ。
マツダのブランド力をここまで押し上げたのは、魂動デザインといっても過言ではないと思う。欧州車を超えるデザイン力を持った日本の自動車メーカーは、マツダが突出しているのではないだろうか。
4/統一感のあるボディカラー
全車種にわたってマツダを象徴するボディカラーとなっているソウルレッドメタリック(CX-30)
ボディカラーにも個性があり、今はソウルレッドクリスタルメタリックと、マシーングレープレミアムメタリックに力を入れる。
いずれも高輝度アルミフレークを使い、光の反射と吸収を使い分けて深みのある色彩を生み出した。
ソウルレッドクリスタルメタリックの塗装面は、上から透明のクリア層、その下は高彩度顔料を含む透過層、さらに高輝度アルミフレークと光吸収フレークを使う反射・吸収層があり、この下にボディパネルが位置する。
この色彩と魂動デザインの相乗効果で、今のマツダ車は美しく見える。見飽きたという声も聞かれるが、世界中を見渡しても、ここまでブランド全体で、テーマカラーを統一している自動車メーカーはあっただろうか。
5/日本車のインテリア? と思わせるほどのクオリティとこだわり
ステッチ入りのダッシュパネルや触り心地のいい本革ステアリングなど随所にこだわりをみせる上質なコクピット(写真はCX-30)
内装も上質だ。コンパクトカーのマツダ2(旧デミオ)も、プロアクティブSパッケージ以上になると、内装に合成皮革やソフトパッドを使う。
Lパッケージ以上のシート表皮は本革で、内装の見栄えを上級のマツダ3やマツダ6と比較しても遜色はない。
小さな車種にも上質な内装を与える考え方は、ボルボやBMWなど、クルマ造りに統一性を持たせたブランドの特徴だ。
内装設計にも、こだわりがある。後席の足元空間を広げることよりも、最適な運転姿勢を重視した。
シートは体重が加わる背もたれの下側から座面の後方、大腿部付近を入念に造り込み、着座姿勢を安定させる。
峠道を走っても姿勢が乱れにくく、体重を常に腰で確実に支えるから、長距離移動でも疲れにくい。腰痛を抑える効果もある。
ペダル配置も最適で、前輪駆動車ながら、前輪とペダルの間に十分な距離がある。そのためにペダルが前輪の干渉を受けて左側に寄らず、右足を自然に伸ばした位置にアクセル/ブレーキペダルを配置できた。正確な操作が行えて、踏み間違い事故を防ぐ効果も期待される。
6/最新のクリーンディーゼル、SKYACTIV-Dと夢のガソリンエンジン、SKYACTIV-X
SKYACTIV-Dのキャピティピストンやナチュラルサウンドスムーザーにもマツダのこだわりを感じさせたが、究極はこの理想のエンジンとされるHCCI技術を量産化したSKYACTIV-Xだろう
マツダが凄い、と思わせる技術の1つは理想の内燃機関を追求していること。つまり、もう改良する余地があまりないといわれているエンジンを探求し、世界一のエンジンを目指し続けていることだ。
最も分かりやすいのは、スポーツカーのロードスターを除く全車にクリーンディーゼルのSKYACTIV-Dを用意したことだ。
排気量は、1.5L、1.8L、2.2Lの3種類で、すべて実用回転域の駆動力が高く運転しやすい。燃費も優れ、軽油は価格が安い(正確には燃料価格に含まれる税金が安い)ため、出費も抑えられる。
現行マツダ車のクリーンディーゼルエンジンは、圧縮比が14~15と低く、窒素酸化物の発生も抑えた。
尿素水溶液などを使った後処理装置も不要だ。合理的でディーゼルとしては高回転域の吹け上がりも良く、幅広いユーザーが運転しやすい。
さらに輪をかけて、凄いと我々を驚かせたのがSKYACTIV-Xである。ガソリンを通常の火花点火ではなく、ディーゼルエンジンのように圧縮着火させるHCCI(予混合圧縮自動着火)と呼ばれる燃焼を実現したからだ。
HCCIは燃料の割合をきわめて薄くした混合気を自己着火させて、燃費と環境性能を両立させることができる。
理想の燃焼方式といわれたが、温度など一定の条件でしか実現できず、通常の火花点火との切り替えが難しいことなどから、これまで実用化できなかった。
マツダが実現した「SPCCI(スパークプラグ制御圧縮着火)」という方式では、スパークプラグによる火花点火で生じる火の玉が膨張する力で圧縮着火を起こす。いわば逆転の発想だ。従来のSKYACTIVガソリンエンジンに比べ20~30%低燃費化でき、ディーゼルエンジン並みの出足のよさを実現している。
ただし、スーパーチャージャー、マイルドハイブリッド、ディーゼルに使われるような粒子状物質を浄化するガソリンパティキュレートフィルターなどを採用するため、価格は2Lノーマルエンジンに比べて約68万円高いところがネックとなっている。
7/クルマ好きの心を捉えるMTや制御技術
マツダはクルマ好きのために6速MTを用意しているのが凄い
マツダがクルマ好きことをちゃんと思ってくれている、と感じるのはしっかりとCX-8以外の全車に、6速ATと併せて6速MTも用意していること。
一部のグレードを除くと、ATとMTの価格を共通化したことも特徴だ。「運転が好きな人」には魅力だろう。
副産物的な効果だが、MT車は乱暴に扱うと発進できない。AT車はDレンジに入れてアクセルペダルを深く踏めば急発進するが、MT車を急発進させるには、クラッチペダルを含めてデリケートな操作が必要だ。
したがって、MT車には急発進事故を防ぐ効果もある。さらにいえばMTの操作は脳と運転神経の老化防止にも効果があり、マツダはこの研究も行っている。
マツダ車の「運転が好きな人」に向けた配慮を実感させるのがGベクタリングコントロールだ(今はブレーキ制御を伴うGベクタリングコントロールプラスに進化した)。
走行状態に応じてエンジン出力やブレーキが細かく自動制御され、安定性を高めて左右方向の揺れなども低減させる。
例えば路面の荒れた場所で、進路修正のためにステアリングホイールを動かすと、瞬間的にエンジン出力を絞る。前輪の荷重が増えて進路修正が効果的に行われ、それ以上の操舵をしなくて済む。
雪道の車線変更でも、出力制御により、ステアリングホイールを回し始めた時から車両の向きが正確に変わる。そのために過剰に転舵して、この影響で後輪が横滑りを生じるような不安定でムダな動きを抑えられる。
この種の制御は多いが、マツダで注目されるのは、制御を意識させないことだ。古い考えでは、ユーザーに装着を意識させたい(有り難みを演出して買い得な商品を手に入れたと思わせたい)意図でセッティングした。
そうなると機敏に曲がるなど玩具的な面白さは演出されるが、長く使うと疲れたり飽きてしまう。不自然な運転感覚は危険にも結び付く。マツダはそこを踏まえて設定され、制御が出しゃばらない。
4WDも同様だ。さまざまなセンサーを使い(ワイパーの作動状況や外気温度も含む)、路面状態を正確に把握して、前後輪の駆動力配分を最適に行う。駆動輪の滑りが最小限度に抑えられ、雪道では、燃料消費量が2WDより少ない場合もある。
まとめ/マツダはどれにも似ていない唯一無二の自動車メーカー
マツダが推進する魂動デザインはさらに進化を続けていくだろう。上は2015年の東京モーターショーで公開されたRX-VISION、下は前回の東京モーターショーで公開されたVISION COUPE
このように今のマツダは「何よりも運転が好きな人でありたい。だから自分たちが走らせて退屈だと思うクルマは絶対につくらない」考え方を徹底させた。
そのために魂動デザインなどの好みは分かれるが、熱心なファンの共感を呼んでいる。好き嫌いが明確なメーカーやブランドは、クルマ好きにとっておもしろい。
今後はこのよさを受け継ぎながら、今の「魂動デザイン路線」以外の新しい商品とサービスも手掛けてほしい。
東京モーターショー2019に出展されたMX-30のリラックスできる世界観は、今の時流にも合っていて新しいコンセプトになり得る。魂動デザイン第2弾に期待したい。
「何よりも運転が好きだから、少し速度を下げて走り、目的地までの時間をもっと楽しみたい」。そんな気持ちにさせるマツダ車が今後も続々と登場するに違いない。
最後に、改めて思うのは、マツダは、どのメーカーにも似ていない、唯一無二の自動車メーカーということである。ぜひ、苦境に打ち勝って、頑張ってほしい!
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売れるから。初代デミオが他社より広くて売れたし。