少々前の話になるが2021年6月、日経新聞とその関連WEBサイトである日経X TECHが「マツダ、ロータリーエンジン使う航続距離延長は中止」と題したスクープを報道し、自動車関連のニュースサイトが色めきだったことがあった。
その後の報道をみると、マツダ広報部は日経の報道を否定し、開発は継続中であることを明言している。では日経のスクープは誤りだったのか。実はそうとも言い切れない微妙な状況であることがわかった。
自前で高い技術を持つことが日本の弱点に? 9年後の2030年、EVはどう進化しているのか
こう書くと、ますます訳が分からないと思われる読者もおられるだろう。結論から言えば、ロータリーエンジンを発電機として使う計画は生きていて(計画通り)2022年に追加される見込み。本稿では、マツダ広報部への取材も含めて、話を整理しながら解説していくことにしたい。
文/高根英幸、写真/編集部、MAZDA
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■マツダを直撃! 2022年ロータリーレンジエクステンダー投入計画はどうなった?
発電用としてロータリーエンジンを搭載したREレンジエクステンダーの試作車。ロータリーエンジン復活の報にファンは喜びの声をあげた
マツダがロータリーエンジンを、レンジエクステンダーEVの発電ユニットとして利用するという計画は、2018年の時点ですでに明らかにされていた。ロータリーエンジンが復活の狼煙を挙げたことに、喜んだファンは少なくなかった。
先代のデミオをベースとした少量生産車デミオEVのリアに、発電用として小型のロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダーEVの試作車を2013年には発表するなど、すでに実績はあることから、それは充分に実現可能な技術と予測ができたものだ。
そして2019年の中期経営計画や、2020年のMX-30発売、今年初めにEVモデルを追加投入した際にも、ロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダーEVの計画について都度触れていた。
ところが6月に前述のスクープである。マツダはこの報道を否定しているが、火の無いところに煙は立たず…ということから、日経が報じたからには何か確証があったハズだ。
そこでマツダ広報部に再度確認のため今回、「ロータリーエンジンによるレンジエクステンダー開発は継続しており、2022年初めに発売する計画に変わりはないのか」質問してみたところ、以下の回答を得た。
「ロータリーエンジンを発電機として活用するマルチ電動化技術を “2022年前半” から導入予定です。レンジエクステンダー、PHEV、シリーズハイブリッドでの展開を想定し一括企画で開発しています」(マツダ広報部)。
開発は継続されていることは、この回答からも分かる。ただし、この後に続く回答に日経スクープのヒントが隠されていた。
「上記のうちPHEV、シリーズハイブリッドの2つの仕様での展開を前提に開発を進めています」。
つまりレンジエクステンダーEVの開発は続けられているが、商品展開としては(ロータリーエンジンを発電用として使う)PHEVとシリーズハイブリッドを優先させる、ということだ。ここに今回の騒動の鍵があったのだ。
■マツダが来年追加するのはロータリーHVかPHEV!
開発継続中のマツダ レンジエクステンダー。しかし商品としての展開はPHEVとシリーズハイブリッドを優先させるようだ
PHEVもシリーズハイブリッドも、構造としてはレンジエクステンダーEVとほとんど変わりない。異なるのは外部充電ができるか、ということとバッテリー容量の違いだ。
シリーズハイブリッドは日産のe-Powerを見ればわかるようにエンジンが発電し、バッテリーに一時蓄えてモーターだけの駆動力で走行する。バッテリーの搭載量は極めて少なく、ノートの場合はわずか1.5kWhだけだ。
そしてPHEVはシリーズハイブリッドに外部充電機能を追加したもので、バッテリーの容量はシリーズハイブリッドより多く、EVより少ない。例えば三菱アウトランダーPHEVは13.8kWhで、バッテリーのみの航続距離は65kmとなっている。
前述のデミオEVのレンジエクステンダーユニットは、300ccの1ローター・ロータリーエンジンで100kgの重量増となっていた。一方、MX-30のEVモデルの場合バッテリーの重量は310kgと言われている。バッテリーの搭載量を3分の1に減らしてPHEVとすれば、むしろEVよりも100kgも重量は軽くなることになる。
そしてEV 1台分のリチウムイオンバッテリーでPHEVを3台生産することができれば、リチウムやコバルトの有効利用にもつながることになるのだ。
デミオEVをベースにした場合、レンジエクステンダーの能力は9Lのガソリンで200kmの航続距離延長、つまりリッター20km以上の燃費性能を確保していた。
同じエンジン回転数では大きく重いMX-30を同じ燃費性能は実現することは難しいだろうが、回生充電も大きくなるので車重による燃費の低下はエンジン車よりも少ない。
日常的にEVを利用するドライバーの1日の走行距離が50km程度までであるなら、バッテリーの容量は35.5kWhよりも少なくてもいい。バッテリーの電力を使い切った時に走行不能にならない手段さえあればいいのだ。
むしろ200kmの航続距離を確保しているEVに単純にレンジエクステンダーを追加すると、よほど遠くに出掛ける時以外は、エンジンが発電する機会は得られない。ということは、常に100kgの荷物を積んで走行させていることになり、無用の長物と化してしまう可能性があるのだ。
つまりマツダMX-30の場合、当初レンジエクステンダーEVとしての投入を計画していたが、いろいろ検討しているうちにPHEVやシリーズハイブリッドのほうがニーズがあることに気付いた、ということだろう。
スクープ記事は、そうしたマツダの動きや考えを、どこからか断片的にキャッチして、レンジエクステンダーの開発が後回しになったことを開発中止と解釈したのだろう。
そのレンジエクステンダー投入中止をロータリーエンジン投入中止と勘違いしてしまったメディアやコメンテーターが慌てただけのことで、ロータリーエンジンによる発電装置はまったく問題なく、それどころかマツダはさらに効率を高めて商品価値を向上させて投入しようとしているのである。
■ロータリーエンジンを使った発電ユニットを他モデルに展開する可能性は?
マツダが開発中のプロトタイプ『e-TPV』。CX-30をベースとしたロータリーレンジエクステンダーEVで、すでに試走も済ませている
さらにロータリーエンジンを使った発電ユニットを他のモデルにも搭載する可能性についても、マツダ広報部に尋ねてみた。
「申し訳ございません。他の車種への展開についてはお答えできませんが、お客様からのご要望などさまざまな要素を踏まえ、可能性を検討していきます」
今年6月に発表された「中期技術・商品方針 2021」によれば、2025年までにフルハイブリッドとPHEV、EVの3種類で合計13モデルを発売する計画であるから、そのなかには(ロータリーを活用する)シリーズハイブリッドとシリーズハイブリッド構造のPHEVが何台かは含まれているハズだ。
もちろん、直列4気筒エンジンのパラレルハイブリッドも存在するし、FRプラットフォームをベースにした電動4WD(つまりフロントをモーター駆動)のパラレルハイブリッドも登場する可能性は高い。
それと同じくらい、ロータリーエンジンを搭載したシリーズハイブリッドもMX-30以外の車種でも設定される可能性があるということだ。
それはMX-30と同じEV専用プラットフォームをベースにしたモデルなのか、それとも新たに開発されるスケーラブルアーキテクチャー(可変サイズのプラットフォーム)なのか、他社との共同開発なのかはわからない。ともかく今後の4年間だけでも、マツダの商品攻勢は楽しみなものになりそうだ。
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容易に想像つく
一部のコアな客の機嫌取りとは言えメリット薄すぎ
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