新車試乗レポート [2023.09.23 UP]
ベンテイガEWBは比類なきラグジュアリーSUV【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ベントレー
ベントレー 新型「ベンテイガEWBマリナー」発表 贅を尽くしたシリーズ最上級モデル
久しぶりにベントレーのメディア向け試乗会が行われたので参加してきました。
今回はフルラインナップだったので、試乗車をこちらで選びます。第一希望はまだステアリングを握っていないベンテイガEWBにしました。「コンチネンタルGTシリーズ」好きを自称していますが、モータージャーナリスト的にはこちらを優先しなくてはなりません。戦前のベントレーを運転させてもらったことがありますが、なるべくたくさんの車種を動かしてこそそれぞれの個性を語れますから。
ベンテイガEWBアズール
ということで、希望が通りベンテイガEWBアズールを試乗しました。オプション装備がたくさん付いている“ファーストエディション”です。最近輸入車メーカーではこの作戦を多く採用します。発売直後のモデルに豪華装備をつける手法です。時として“ファーストエディション”、もしくは“ローンチエディション”という名で。
でもってこれを購入する目線で吟味するとかなりお得なのがわかります。もちろん、「これはいらないなぁ」なんてオプション装備もありますが、大抵は注文しようと思っていたモノだったりします。しかも個々で発注するより少しリーズナブルになっていたりするので、お買い得。輸入&発売元としても発表直後に販売加速をつけたいという狙いなのでしょう。売り手と買い手のニーズが合致しているグッドな販売戦略です。
ベンテイガEWBアズール
ベンテイガEWBを簡単に説明すると、EWBは“エクステンデッド・ホイールベース”のことで、ホイールベースをスタンダードモデルより180mm長い3170mmに延長しています。
目的はリアシートの快適性の向上。後席に座るとわかりますが、足元の広さに驚きます。シートは2名掛けと3名掛けを選べるそうですが、どちらにしてもショーファーカー扱いでしょう。ドライバーズカーを素性とするベントレーでは珍しいモデルです。
ただこの背景には数年前に生産をストップしたミュルザンヌがあります。究極のショーファーカーとして君臨したベントレーの4ドアサルーンです。それを現代的に解釈したらこうなったということです。世はまさにSUVがデフォルトですから。クラウンもセンチュリーもそうなりました。もちろん、キャビンが前後長だけでなく、天井が高くなりヘッドクリアランスが増えるというメリットは大きいのが事実です。
ベンテイガEWBアズール
そして出来上がった全長5305mmのベンテイガですが、ステアリング操作に同調するリアステア方式、いわゆる4WSなので、最小回転半径は思いのほか小さくなります。4WS未装備のスタンダードボディより7%回転径が小さいので車庫入れやUターンで臆することはありません。
エンジンは4リッターV8ツインターボを搭載します。最高出力は550ps、最大トルクは770Nmです。駆動方式は4WDで、最高速度は時速290キロに到達します。12気筒エンジンでないのはベントレーはすでにその生産ラインを来年1月で取りやめることをアナウンスしているからです。徐々にこのV8とV6+モーターのハイブリッドにスイッチしていく方針です。そしてその先には完全なBEV化が待ってる、となります。
とはいえ、今回の試乗でもこのV8ユニットは十分すぎるほどパワフルで、この大きなボディを軽々しく加速させます。アクセルの細かな開度調整にしっかり加速が付いてくるフィーリングは常にあります。ドライバーズカーとしてのベントレーの顔が見える瞬間です。なんとも気持ちよくて頼もしい。
ベンテイガEWBアズール
それと乗り心地の良さにも感動します。そもそもエアサスを含む48Vバッテリーを使ったベントレーダイナミックライドシステムは完璧なほどフラットなキャビンを司るのですが、そこに延長されたホイールベースがさらなる快適さを追加します。ベントレー史上最高の乗り心地と言っていいでしょう。ドライバーズシートに座っていてもそれを感じます。
それにしてもベントレーの販売は好調なのがわかります。特にベンテイガの人気は高くモデルバリエーションが増えていて、今回試乗したEWBで2モデル、スタンダードボディに6モデル顔を並べます。6モデルの中にはW12、V8、V6+モーターのハイブリッドがあり、それぞれのニーズに応える感じですね。きっと今年も日本国内の登録台数を更新することでしょう。ウルトララグジュアリーブランドは引き続き元気です。
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