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懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 後編

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懐かしのイタリアン・ロードスター アルファ・ロメオ・スパイダー & フィアット・バルケッタ 後編

2.0L 4気筒のほかV型6気筒エンジンも

アルファ・ロメオ・スパイダーの4気筒エンジンは、お得意のツインスパーク。バルケッタと同じ、プラトラ・セラと呼ばれるシリーズ・ユニットだ。

【画像】懐かしのイタリアン・ロードスター スパイダーとバルケッタ GTVにクーペフィアットも 全67枚

2.0Lのスチール・ブロックにアルミ製ヘッドを載せ、可変吸気バルブタイミング機構と燃料噴射を採用。回転を滑らかにするため、カウンターシャフトを2本備える。

最高出力152ps、最大トルク18.9kg-mを発揮し、フィアット・バルケッタよりパワフル。だが、310kg多い車重をカバーするには充分ではなかった。これでは不満という人に向けて、12バルブのV6エンジンも設定。2000年に24バルブへ置換されている。

モデル末期には、2.0L版がダイレクト・インジェクション化され、ツインスパークは終了。V6エンジンには3.2L版が投入された。2.0L V6ターボも存在したが、英国には上陸していない。また1996年には、右ハンドル車も用意されている。

バルケッタほど個性的ではなかった見た目もあって、スパイダーとGTV クーペは良く売れ、1990年代にアルファ・ロメオのルネッサンスを実現させた。そのため、改良も定期的に受けている。

中期型のフェイズ2が登場したのは1998年。クロームメッキのフロントグリルや、センターコンソールのアップデートが与えられている。フェイズ3の登場は2003年で、同じくボディとインテリアに手が加えられた。

生産は、当初ミラノ郊外にある自社のアレーゼ工場が受け持ったが、途中でピニンファリーナ社へスイッチ。スパイダーは、3万9088台がラインオフしている。GTVクーペも、同じくらい作られた。

殆どオリジナル状態のブルーのバルケッタ

今回ご登場願ったフィアット・バルケッタは、初期型のシリーズ1。オランダから英国へ並行輸入されたクルマで、現オーナーのエリック・トランプ氏は、2019年8月にロンドン南部の専門店で購入したという。

「以前は1998年式のリミテッド・エディションを所有していました。グリーンのボディで、9年間、素晴らしい時間をともにしました。通勤が楽しみの1つでしたね」。と彼が振り返る。

グリーンのバルケッタは、吸気マニフォールドへ亀裂が入りエンジンが不調に。部品が高価で、手放すことを決めたという。

「当時の選択は正しかったと思いますが、それ以来、個性的で可愛いバルケッタを懐かしんでいました。状態の良いホイールアーチとフロアパンを保った、走行距離の短いクルマが出てきて、即決で飛びついたんですよ」

1999年式だというブルーのバルケッタの走行距離は、僅か4万5000km。詳しい履歴は明らかではないが、学者が妻のために購入したクルマのようだ。

純正にはなかったフロアマットと、社外品のステレオ、ステンレス製マフラー以外、殆どオリジナル・コンディションが保たれている。スコットランドや欧州大陸への長距離ドライブが、今後の楽しみだと打ち明ける。

見た目以上に窮屈ではないインテリア

アルファ・ロメオ・スパイダーは、アレックス・ペイン氏がオーナー。1996年式の右ハンドル車だ。アルファ・マニアでもある彼は、プロテオ・レッドのボディや同色で塗られたサイドシル・パネルなどの特長から、最初期のクルマだと考えている。

「2012年に、妻の60歳の誕生日として前のオーナーから購入しました。2000年までは社有車で、走行距離は13万km弱だったようです」

現在は22万kmを超えたが、ペインも含めて、これまでの丁寧なメンテナンスのお陰でヘタリは感じられない。「何年もアルファ・ロメオを楽しんできました。シルバーストーンへのドライブや、プレスコット・ヒルクライムへの参戦は忘れられません」

「2016年に、オランダのアルファ・ロメオ・クラブが開いたイベントへ参加したことは、素晴らしい思い出です。多くのアルファ・ファンと一緒に、ザントフォールト・サーキットを走り、素晴らしい時間でした」。とペインが頬を緩ませる。

今も古びて見えないバルケッタは、小さなドアハンドルまで同様。心地よいクリック感を伴って、ドアが開く。コンバクトなサイズながら、車内は思ったほど窮屈ではない。

ドライバーズシートが心地よく身体を包み込み、操作系のレイアウトは良好。ペダルが手前側に位置するのは、イタリア車の伝統でもある。

サスペンションは適度にしなやかで、ステアリングホイールは軽い。すぐに、起伏のある道を流したいという気分にさせてくれる。だが、高速で、とは思わない。カーブを描くボンネットに郊外の景色が反射し、バックミラーに遠ざかる並木道が映り込む。

2速で明らかになる4気筒エンジンの素性

ステンレス製エグゾーストが放つ音色が心地良く、エンジンを回したくなる。操縦系の感触の良さは、高速域でも変わらない。ホイールベースの短いバルケッタは、コーナーを小気味よく縫っていく。

ボディロールは小さくないものの、ソフトなスプリングとタイトなシャシー構造が融合し、荒れた路面を滑らかにいなす。舗装の剥がれた穴を通過しても、印象は悪化しない。

アルファ・ロメオ・スパイダーは、バルケッタより大柄。ドアもインテリアも、フロントガラスも大きい。そのぶん、操作に対するダイレクト感では劣る。車重が重く、サスペンションは引き締められていて、エンジンの慣性も目立つようだ。

シートはレザーで仕立てられ、インテリアの雰囲気は落ち着いている。ドライバーの正面に埋め込まれた黒い盤面のメーターも、そんな感覚を強める。

2速へシフトダウンして、アクセルペダルを踏み込むと、バランス取りされた4気筒エンジンの素性が明らかになる。スムーズなだけでなく、エネルギッシュさも秘めている。

クイックなステアリングに、洗練されたサスペンション設定が融合。変化の大きい道でも安定して進んでいく。

同時に、おおらかな個性も匂わせる。フィアットの弾くように軽快なシフトフィールや、踏みごたえのあるペダル類とは対照的。アルファ・ロメオのシフトレバーは長くストロークし、ブレーキペダルにも曖昧さがある。

満たしてくれるイタリアン・ロードスター

アルファ・ロメオのスタイリングは、活発に運転して欲しいと訴えているように見える。しかし、硬めの乗り心地と緩さを感じるボディ剛性が相まって、傷んだ路面でボディは振動する。

鮮やかなボディカラーと、ダイナミックなショルダーラインが、威勢の良い走りを想起させる。逆三角形のフロントグリルに伝統のエンブレムが与えられ、ラグジュアリーな雰囲気も漂わせる。

スパイダーは、そんな気持ちの高まりに、ある程度までなら走りで応える。時折、身もだえながら。

バルケッタは、しっかりドライバーを笑顔で満たしてくれる。技術者とデザイナーが、幸せを感じながら仕事をしたであろうことが、実際のプロダクトに表れている。洗練度や実用性、動力性能は、必ずしも追求する必要がないのだと実感する。

イタリアン・ロードスターを堪能させてくれた、親戚関係にある2台。もう一度どちらかを、と勧められたら、筆者はバルケッタの華奢なドアハンドルを引こうと思うだろう。

協力:フィアット・バルケッタUKオーナーズクラブ、ゲイリー・フィッシャー氏、アルファ・ロメオ・オーナーズクラブUK

バルケッタとスパイダー イタリアン2台のスペック

フィアット・バルケッタ(1995~2005年/欧州仕様)のスペック

英国価格:1万4000ポンド(1995年時)/1万ポンド(約167万円)以下(現在)
販売台数:5万7571台(フェイズ合計)
全長:3916mm
全幅:1640mm
全高:1265mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:8.7秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1056kg
パワートレイン:直列4気筒1747cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:131ps/6300rpm
最大トルク:16.7kg-m
ギアボックス:5速マニュアル

アルファ・ロメオ・スパイダー(916型/1995~2005年/英国仕様)のスペック

英国価格:2万110ポンド(1995年時)/8000ポンド(約134万円)以下(現在)
販売台数:3万9088台
全長:4285mm
全幅:1780mm
全高:1315mm
最高速度:196km/h
0-97km/h加速:9.4秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1354kg
パワートレイン:直列4気筒1970cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/6200rpm
最大トルク:18.9kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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みんなのコメント

1件
  • 人生引退したらオープンカー・・・みたいな夢は叶いそうも無いなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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