2024年9月6日から7日にかけて、世界ラリー選手権(WRC)第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャがギリシャ中部のラミアを起点に開催される。ここまでトヨタ6勝、ヒョンデ3勝だが、マニュファクチャラーズ選手権、ドライバーズ選手権ではともにヒョンデがリードする形となっている。アクロポリス・ラリー・ギリシャは例年リタイアが続出する荒れた展開となるが、今年もサバイバルラリーとなるのだろうか。
逆転を狙うトヨタにとっても、首位ヒョンデにとって重要な一戦となる
2024年のWRCも残すところ4戦。前戦第9戦ラリー・フィンランドではセバスチャン・オジェ(トヨタ)が優勝し、トヨタの3連勝となったが、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラが無得点に終わったことで、選手権の行方はヒョンデにやや有利な状況となってきた。
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ドライバーズ選手権では、オイット・タナック(ヒョンデ)、エバンスがともにリタイアに終わったことで、ランキング首位のティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデ)と2番手に浮上してきたオジェとの差を27点にまで拡大。
一方、マニュファクチャラーズ選手権でも、トヨタが得点対象の2台を失ったことで、首位ヒョンデとトヨタの差は20点に広がった。
2024年 WRCドライバーズランキング(第9戦終了時)
1位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)168
2位 S.オジェ(トヨタ)141
3位 O.タナック(ヒョンデ)137
4位 E.エバンス(トヨタ)132
5位 A.フルモー(Mスポーツ・フォード)119
6位 K.ロバンペラ(トヨタ)86
7位 勝田貴元(トヨタ)76
2024年 WRCマニュファクチャラーズズランキング(第9戦終了時)
1位 ヒョンデ 395
2位 トヨタ 375
3位 Mスポーツ・フォード 207
総合力が求められるようになってきているアクロポリス・ラリー・ギリシャ
2021年にWRCに復帰したアクロポリス・ラリー・ギリシャは、1951年に初めて開催され、WRC初年度の1973年からシリーズの一戦に組み込まれた伝統的なグラベル(未舗装路)イベント。
ただその路面はここ2戦のスムースでフラットなグラベルから一変。大きな石が転がる山岳ステージは路面が荒れているところも多く、気温も非常に高くなるためコンディションは非常に厳しく、クルマにもタイヤにも選手にも厳しい「ラフグラベル・ラリー」「悪路ラリー」「カーブレイクラリー」として知られている。
長い歴史を誇り「神々のラリー」とも呼ばれるこの一戦は、近年はラフな路面だけでなく、比較的スムースな路面も多くあり、またツイスティな低中速コーナーだけでなく、ハイスピードなコーナーも多く含まれるコース設定となった結果、総合力が求められるようになってきている。
晴れれば気温がかなり上昇し、クルマとドライバーは暑さとも戦わなければならず、雨が降れば路面が泥に覆われ、非常に滑りやすいコンディションでの戦いとなる。
昨年は慎重な走りに徹していたロバンペラに勝利が転がり込む
昨年2023年のアクロポリス・ラリー・ギリシャは序盤から大荒れ。本格的なラリーの開幕となる金曜日午前のセクションで、早くもMスポーツ・フォードのピエール-ルイ・ルーベ、オイット・タナックがウォーターポンプのトラブルでストップ。
土曜日の午後のステージでは、首位に立っていたティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデ)が大きな穴に右前輪を落としてサスペンションとステアリング系統を壊してそのままデイリタイア。これでトップに立ったセバスチャン・オジェ(トヨタ)も、SS12で左リアをヒットさせて、まさかのデイリタイアとなってしまった。
結果的に土曜日を終えて首位に立っていたのは、選手権ポイントを考えてあえて大きなリスクを犯さず慎重な走りに徹していたロバンペラだった。ロバンペラは翌日曜日のステージも無難に走り切ってシーズン3勝目を達成。2位には同じくトヨタのエルフィン・エバンスが入り、トヨタの1-2フィニッシュとなった。
【参考】2023年 WRC第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ 結果
1位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)3h00m16.7s
2位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m31.7s
3位:D.ソルド(ヒョンデ i20N ラリー1)+1m35.9s
4位:O.タナック(フォード・プーマ ラリー1 )+4m28.4s
5位:E.ラッピ(ヒョンデ i20N ラリー1)+39.1s
6位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+6m22.3s
7位:A.ミケルセン(シュコダ ファビア RS ラリー2)+9m41.0s
8位:G.グリーンスミス(フォード フィエスタ ラリー2) +9m51.3s
9位:Y.ロッセル (シトロエンC3 ラリー2)+11m07.0s
10位:S.オジェ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+11m43.4s
ルート設定や各デイの構成が変更、それがどういう結果となるか
今年のアクロポリス・ラリー・ギリシャは昨年までと同じように、首都アテネの約200km北西に位置するラミアにサービスパークが置かれるが、ルート設定や各デイの構成が大きく変わり、ラリーは6日金曜日の朝からデイ1として競技がスタート。
デイ1はラミアのサービスパークを中心に、北西から南西にかけての山岳エリアで、3本のステージ各2回走行。デイ1は3日間で最長のステージを走行する一日となり、6本のステージの合計距離は135.02kmとなる。
翌日7日土曜日のデイ2は、ステージのエリアが南部のペロポネソス半島の入口に近いシーサイドに移動。デイ2は全部で6本のステージが設定されるが、そのうち2回走行するのはSS9/11のみで、一日の終わりにはスーパーSSが予定されている。デイ2はリエゾン(移動区間)が非常に長く、合計116.23kmのステージを含めた一日の総走行距離は695.64kmにもなる。
ラリー最終日の8日デイ3は、サービスパークを中心に南側のエリアで3本のステージを走行。そのうち、SS14のステージを再走する最終のSS15は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。
全15本のステージの合計距離は305.30km、リエゾンも含めた総走行距離は1392.24kmが予定される。
トヨタは、昨年のウイナーであるロバンペラは欠場するが、ここまで6戦に出場し優勝3回(2位3回)と好調なオジェが出場。エルフィン・エバンス、勝田貴元とともに今季7回目の優勝を目指す。
対するマニュファクチャラー選手権首位のヒョンデは、ドライバーズランキングトップのヌーヴィルとタナックの2枚看板に、タフなグラベルを得意とするダニ・ソルドの3人にがワークスエントリーする。
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