XC40が発表された翌日の2018年3月28日、XC40のチーフデザイナー、マクシミリアン・ミッソーニ氏によるデザインセミナーが開催された。そこで語られたXCシリーズの狙いと、そしてXC40の魅力について解説しよう。
今のボルボは極めて洗練されたスタイリングが特徴となっており、デザインでの評価も極めて高い。XC90は世界で100以上のアワードを受賞、XC60とも多くのデザインアワードを受賞している。そしてそれだけでなく、先ほどXC40も2018ヨーロピアン・カー・オブ・ジ・イヤーのウイナーとなった。
これらの3兄弟はどこから見てもボルボなのだが、互いの個性がまったく異なって見える。それは当初から狙ったものだったのだという。
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通常であれば、全体のデザインテーマを決めてしまえば縮小コピーとなってしまいがち。ところがミッソーニ氏によれば、それは絶対にしたくなかったのだという。
マクシミリアン・ミッソーニ氏は、1978年生まれと若いのだが、ボルボ・カー・グループのエクステリア・デザイン部のバイス・プレジデントだ。つまりは、すべてのボルボと新たなラインであるポールスターのエクステリア・デザインの統括を行なっている。
1996年にアートアンドデザイン大学で、インダストリアルデザインの研究を行ない、その後イギリスの有名なデザイン学校、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)でビークルデザインを学ぶ。そして2002年にVWに入社。エクステリアデザイナーとして、VWブランドやアウディブランドを手がけた。その後、2012年にボルボに移籍。エステリア部チーフとして、新世代のコンセプトカー3部作に新たなデザイン言語を導入した立役者だ。
そして2014年、現在のエクステリアデザイン部バイスプレジデントとなったという人物。
現在の最新のボルボデザインを構築した、といっていい1人に間違いない。
そして今回XC40が登場したことで、3車種のXCシリーズが揃った。ヘッドライトはT字型のトールハンマーをモチーフとし、グリル造形もセンターのアイアンマーク共々伝統を守る。しかしこれら、3車3様の佇まいを持つ。見てすぐに感じられるこの違いは、まさにミッソーニ氏が狙ったものだ。
XC90のデザイン開発にあたって、イメージしたのはライオン。しかし、アグレッシブな面ではなく自信に満ちた落ち着きある、堂々とした印象を狙ったという。それぞれのXCシリーズを特徴づけるのは、サイドビューだろう。XC90は水平基調。この前後に一つのラインで繋がる安定感ある造形が、SUVスタイルながら気品のある落ち着いた佇まいに行き着く。サイドの極めて大きな面を、これだけシンプルに、張りを感じさせながら収めた造形の美しさも秀逸だ。
対するXC60も同様にライオンをイメージしたというのだが、こちらはむしろアグレッシブさを強調。前後フェンダーで分割されるキャラクター、フロントで大きく下げられるボンネットライン、寝かされたハッチゲートなどが力強さを表現する。
言ってみるならば、XC90は成熟したライオン、XC60は若い情熱的なラインといったところだろうか。
ならばXC40は? サイズダウンをしたからといって、猫をイメージするというわけにはいきません。とミッソーニ氏は言う。与えるべきキャラクターイメージが、ちょっと猫とは違う。出されたのは ”ブルドッグ”だ。それも子犬のブルドッグをイメージしたようだ。
XC40はパッと見ると、これまでとは大きく異なる道具感が強調された。これは機能性を重視するプロダクト(工業製品)デザイン的手法によるものだが、そんな基本造形にブルッグのような可愛らしさが溢れる。それは、力強さを内に持ちながらも、大きな顔の子供体型。屈託のない元気さを溢れさせながらも、仏頂面。……こんな背反する要素が生み出す機能性、力強さそしてファニーさも、XC40の個性を現す一つの要素となっているようだ。
ボルボは、共通性を持ちながらもそれぞれのキャラクターをデザインとして明確にすることで個性を際立たせている。もう一つその象徴的な表現となるのがサイドウインドウの形だという。XC90、XC60、XC40ともウインドウの下端のラインはリヤドアあたりで上昇していくのだが、その角度が異なる。XC90が最も緩やかで、XC40が最も鋭角に切り上がる。これは後席以降をどのように捉えているかを表現したもので、車が小さくなるほどドライバー中心のモデルになっていくことを示しているという。
この手法は車全体をゆったり見せたり、活発に見せたりといった印象につながりやすく。非常に巧妙なものだ。
結果としてXCシリーズは、クラスレスな存在になったと言えるのではないだろうか。用途によってどれにするかが選べるもので、長距離をゆったり移動するにはXC90。走って楽しむのならXC60、普段使いから遊びで使い尽くすならXC40。といったように、価格ではなく、この車種でなければならない良さが生まれている。この「共通性とそれぞれのキャラクター付け」は、マツダやレクサスも、まさに検討を重ねているところではないだろうか。
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