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新型「ヤリス」「フィット」は世界で通用するか!?

掲載 更新 17
新型「ヤリス」「フィット」は世界で通用するか!?

この記事は2020年3月に有料配信した記事を無料公開したものです

2020年2月にトヨタ「ヤリス」、ホンダ「フィット」がフルモデルチェンジし相次いで発売された。フィットは本来、2019年12月の発売予定でヤリスより先行するはずだったが、リヤ電動パーキングブレーキの部品不具合により予定より遅れての発売となった。

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Bセグメントとは

言うまでもなく、この2台ともにグローバル市場で戦うBセグメントカーだ。中国、アメリカという2大市場ではBセグメントカーは小さすぎるとして主流にはならないが、ヨーロッパでは最も販売台数の多いカテゴリーである。

日本でも本来なら主力モデルとなってもおかしくないが、日本では軽自動車の存在が強固で、新車販売の40%を占め、その牙城を崩すことは難しい。さらに、2019年に発売されたAセグメントのクロスオーバー・モデルのロッキー/ライズが、巧みなパッケージングと仕上げのよさで最近では珍しいほどのヒット作となり、Bセグメントのハッチバックは押され気味になっている。

Bセグメントの本場、ヨーロッパでのトレンドは、セグメントの下剋上が激しい。その先駆けとなったのは、2009年に登場した5代目フォルクスワーゲン・ポロで、現在のMQBプラットフォームの先行プラットフォームを採用し、ダイナミック性能、乗り心地、静粛性、利便性などで従来のBセグメントの常識をくつ返し、より上級のCセグメントを脅かす存在となった。

この大幅なレベルアップが、その後のBセグメントカーのベンチマークとなり、他メーカーの後続するBセグメントカーは、さらにそれの上を狙って新技術を投入し、開発を行ない、その開発競争は激しい。

今回ニューモデルとして登場したヤリス、フィットは、ともにグローバルカーとしての基幹車種であることは確かで、今回のニューモデルは世界に通用するクルマとして開発されている。

一方で、日本に限ってみれば、過去はトヨタの同じBセグメントのアクアとホンダ・フィットの熾烈な燃費競争も記憶に新しい。先代のフィットはアクアの燃費35.4km/Lを上回るための最軽量グレードをベースに燃料タンクの小型化やアルミボンネットを採用し軽量化した燃費スペシャル・モデルを設定し、燃費36.4km/Lを達成している。ホンダにとってフィットはそれだけこだわりのあるモデルということだ。

ヤリスの狙い

トヨタはBセグメントでは燃費最重視モデルの日本市場向けにアクア・ハイブリッド、多人数乗員のシエンタ、そしてヨーロッパ市場を重視するヴィッツ/ヤリス、そしてこのあとに登場するヤリスのTNGA−Bプラットフォームとパワトレーンを流用するクロスオーバーSUV(ヤリスクロス)という具合に、多車種展開している。

そのため、今回のヤリスは日本、ヨーロッパなど先進国市場向けのBセグメント・ハッチバックと位置づけ、特にヨーロッパにおいてダイナミック性能やハンドリング性能の不足で退屈なクルマいう評価を覆すために開発されている。その開発目標・性能は、MQBプラットフォームを採用した現行のフォルクスワーゲン・ポロであることはいうまでもない。

そのため、最新のTNGA-Bプラットフォームを採用し、パワートレーンも一新。ダイナミック感のあるデザインを追求し、さらに操縦安定性など走りは大幅にレベルアップしている。ただ、ポロと違って、本来はより機能的であるべきBセグメントながら、新型ヤリスはリヤシートの足元スペースを従来モデルより削り、いわばフロントシート優先に割り切っているところが特長といえる。

トヨタとしてはキャビンのスペースやリヤ席の居住性は、後続するSUVモデルで挽回するという作戦だ。このあたりはマツダ3とCX-30の関係によく似ている。

また、ヤリスは日本仕様は営業的な観点から5ナンバー枠の全幅1696mmのボディサイズとし、日本以外では全幅1745mmでグローバルBセグメント・サイズとしている。

パワートレーンは、自然吸気3気筒1.0L、新開発のダイナミックフォース・エンジンとして自然吸気・3気筒1.5L、そしてそのエンジンをハイブリッド専用にチューニングした1.5L+ハイブリッドをラインアップ。

新開発の1.5Lエンジンは120ps/145Nm で、最高熱効率40%を達成している。マツダのスカイアクティブG 1.5 Lエンジンに比べパワー、トルクも上回る。また、フォルクスワーゲン・ポロの1.5TSIエンジンはターボのため、150ps/250Nmで参考にならない。一方、ヤリスのハイブリッドは、世界トップの燃費を目指し、WLTCモードで36.0km/Lという低燃費を達成している。

トヨタ ヤリス 諸元表

フィットのコンセプト変更

これまでの歴史的な経緯から考えると、驚くほどコンセプトが変わったといえるのが新型フィットだ。もちろん根幹にあるBセグメントとしての実用性、機能性、使いやすさなどの価値観は不変であるが、デザイン、パッケージング、走りの性能などに「用の美」という着想のもとで、扱いやすさ、心地よさ、シンプルさを重視したコンセプトを採用している。

そのため、Bセグメントでトップレベルの広さを持つパッケージングは維持しながらも従来からのデザイン手法を一新した。フィットはこれまで広さ感を重視したワンモーション・フォルムを採用してきたが、そのためにAピラーが前進した典型的なキャビンフォワード・レイアウトになっていた。

このキャビン・フォワードはAピラーがより前方に位置するため、斜め目前方の視界が悪化する。そのブレイクスルーとして新型フィットは極細Aピラー、強度を担当するAピラーNo2を採用し、さらにダッシュボード位置を下げ、フラットにデザインすることで、前方視界を大幅に改善。視界の良い明るいキャビンを実現している。

また、センタータンクレイアウトを採用しながらもプラットフォームを進化させ、滑らかなストレスのない走りと乗り心地の両立、静粛な室内など大人向けの走りのテイストを目指している。

こうした感性性能を重視し、数値にこだわらないという開発の方向性を採用したため、吸遮音材や、各種の装備のため車両重量はヤリスより重くなっている。結果的に、ヤリスとの燃費競争は諦めている。

新型フィットは、自然吸気4気筒1.3Lエンジンが98ps/118Nm、そして新採用の2モーター式ハイブリッド「e:HEV」は1.5Lエンジンが98ps、モーターが253Nmの出力となっている。このハイブリッドのチューニングも、滑らかな加速特性を重視している。その結果、WLTCモード燃費は29.4km/Lとなり、ヤリス・ハイブリッドの36.0km/Lに比べて相当差が開いている。

ただ、新型フィットは日常での利便性にこだわり、約1000kmの航続可能距離を確保するため容量40Lのタンクを採用している。燃費は実走行で27km/L程度を想定すると、40Lのタンクなら給油ランプが点灯するまでの実用で、約37Lのガソリンを使用でき、航続可能距離は999kmとなる。

一方、ヤリス・ハイブリッドのタンク容量は36L、ガソリン・モデルは40Lと使い分けている。ヤリス・ハイブリッドも燃費性能を考えるとほぼ1000km近くの航続距離は実現している。

ホンダ フィット 諸元表

ヤリス、フィットはグローバルで通用するか?

ヤリスはTNGA-Bとダイナミックフォース・エンジン、さらに改良型ハイブリッド、フィットはグローバルBプラットフォーム、「e:HEV」を投入し、世界市場に参入する。従来から比べると、いずれも性能的に大幅にレベルアップしたことは間違いない。

しかし、ヨーロッパでは、トヨタの渾身の作ともいえるカローラでも、実用性能は高いが質素なインテリアといわれるなど、B、Cセグメントに対する要求は厳しい。また、現行のフォルクスワーゲン・ポロに続く競合モデルが、フランスから登場している。

まずは2019年にデビューしたルノー・クリオ(ルーテシア)だ。最新のCMF-Bプラットフォームを採用。エンジンは0.9L・3気筒、1.3L・4気筒ターボ、1.5Lディーゼルをラインアップし、さらに2020年には「E-テック」と呼ぶ新開発の1.6Lエンジン+2モーター式ハイブリッドを投入する。

ルノー・クリオは、先代モデルはヨーロッパではポロを抑えてBセグメントでトップに立った実績を持っており、最新Bセグメントの覇権争いの中心車種といえる。

さらに、ヨーロッパでの躍進しているPSAからは新型プジョー208が登場している。EMP1プラットフォームを採用し、性能を一段と向上している。

パワートレーンはピュアテック1.2Lターボ、1.5LブルーHDiディーゼルをラインアップし、アイシン製の8速ATと組み合わせている。そして50kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載したEVモデル、「e-208」もシリーズに加えている。

このEVは136ps/260Nmのモーターを搭載し、340kmの航続距離を実現している。なお「e-208」はオペル・コルサe、DS3クロスバック-eテンスと兄弟モデルになっている。

この新型208はヨーロッパ・カーオブザイヤーを獲得していることかわらもわかるように、走り、デザイン、インテリアの質感、装備などで高い評価を得ている。

Bセグメント・ハッチバックはどれもボディサイズはほぼ同一で、どれだけキャビン・スペースやラゲッジ容量を生み出すか、走り、乗り心地、静粛性のレベルをどれだけ高めるか、そしてインテリアの質感を向上させるか、ある意味で日本の軽自動車の性能競争に似たところがある。

そして手頃な価格でありながらCセグメントのクルマの性能を目指して競争が行なわれている。その中で、新型ヤリス、フィットがどうのような評価を受けるか興味深い。

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みんなのコメント

17件
  • フィットはヨーロッパでもウケると思う。
    欲を言うと変速機。ハイブリッドはいいけどガソリン車のATはトルコン、マニュアルも用意したい。
  • 対向車でヤリスが来たと思ったらアクアだったりする。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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