「エキゾティックな存在感」を狙った4ドアセダンであり、高級車路線の兄弟車「マークII」に対して、スポーティな性格が与えられた、トヨタ「ヴェロッサ」。最高出280馬力の2.5L直6エンジンを積んだ上級グレードもあるなど、スポーツセダン好きにはたまらない内容だったが、3年も経たずに販売終了となってしまった。ヴェロッサの悲しい歴史を振り返りながら、ヴェロッサの現在の中古車相場についても触れていく。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
わずか2年半で消えた珍車の中の名車…200万円で買えるってすげえ!! 「真実の赤」ヴェロッサの魅力
アルファロメオのようなイケてる大人の雰囲気があった
「ヴェロッサ」という車名は、イタリア語のVero(真実)とRosso(赤)を組み合わせた造語だ。情熱的に燃えあがり、人の情感に訴えるクルマを目指し、チェイサーやクレスタの後継車として、2001年7月に販売開始。従来車の正統派のジャパニーズスポーティカーから、イタリアの伊達男風へと大きくキャラ変しての登場だった。
なかでも頑張っていたのがデザインだ。ヴェロッサ登場の9か月前である、2000年10月より販売されていたマークII(9代目)とは違った「大人の色気」を出すため、フロントグリルは大きなエアインテークを開け、その横には縦長のヘッドライト、前後のフェンダー上部には濃い目のキャラクターラインが入れられていた。インテリアも、アルミのフットペダルやフットレストなどを装備するなど、スポーティにまとめられており、まるでアルファロメオのようなイケてる大人の雰囲気を漂わせていた。
「プログレ」「ブレビス」とともに、9代目マークIIの兄弟車として続々と誕生したFRセダンのヴェロッサ。「情熱」をキーワードに開発され、ビスタ店系列での販売となった
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最高出力280psの2.5Lターボも用意されるなど、走りに対しても貪欲だったが…
走りに対しても貪欲だった。搭載されたエンジンは、すべてVVT-i機構付きの直6DOHCで、最高出力280psの2.5Lターボ(1JZ-GTE型)、200psの2.5L直噴(1JZ-FSE型)、160psの2L(1G-FE型)の3ユニットを設定。直6ターボを積んだ最上級グレード「VR25」には5速MTを用意するなど、スポーティセダンファンに好まれそうな仕掛けがいくつも用意されていた。
だが販売面では思うように進まず、なかでも2.5Lターボ車はほとんど売れなかったそう。ライフの途中でエアロとヤマハチューンの300psエンジン(1JZ-GTE型)や専用サスを装備した限定車「VR25スペチアーレ」を追加するも改善には至らず、2004年4月のビスタ店のネッツ店統合に伴う車種整理の対象となり、ヴェロッサは、わずか2年8か月で販売終了となってしまった。
当時は、4ドアミドルセダンからミニバンやSUVへとトレンドが変わりつつあった時期。また、燃費のよいコンパクトカーやプリウスのようなハイブリッド車が注目され始めたことも重なったのだろう。あと5年ほど早く誕生していたならば、その特異なキャラクターが受け入れられてヒットしていたかもしれない。
イタリアの名ブランド、アルファロメオのようなレッドカラーもよく似合う
直6エンジンを積んだFR車を廉価で手に入れるには最適なモデル
終売から早19年半が経ったヴェロッサだが、中古車市場においては人気が上昇しており、4~5年前はもう少し安かったと記憶しているが、2023年12月初旬現在の大手の中古車サイトでは、VR25の5速MT車が250~400万円で取引されている。どの個体もカスタムされており、走行距離も10万キロ前後が多いようだ。
ただ、VR25であっても、過走行車や修復歴ありならば、150万円程からあるし、VR25で無くなれば100万円以下で手に入る個体もある。直6エンジンを積んだFR車を廉価で手に入れようとするなら、このヴェロッサは最適ではないだろうか。
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