■量産EVリーフは暖房が課題だった
寒い冬の時期にクルマを運転するとき、冷え切った車内を暖めるため、ヒーターを使うことが多くなります。
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ガソリン車の場合、ヒーターはエンジンの廃熱が熱源となっているので、燃費の悪化を気にせず使用することができます。
しかし、エンジンが存在しない電気自動車(EV)は、ヒーターにエンジンの廃熱を使用することができないため、バッテリーの電気を使うことになります。EVの暖房事情は、どうなっているのでしょうか。
2010年12月に量産EVとして発売された日産「リーフ」は、当時は充電器の整備はもちろん、バッテリーの容量やヒーターが大きな課題でした。
初期型に採用されていたヒーターは「PTCヒーター」というタイプで、かつて家庭でも使用されていた、バネが赤くなる電気ストーブと同じ原理です。リーフでは、熱線で加熱した温水の熱を車内に循環させていました。
そのため、消費電力が大きく、ヒーターをつけた途端にメーターに表示される航続可能距離が150kmから80kmに激減したともいわれました。
日産の販売店の営業スタッフは、次のようにいいます。
「航続可能距離はドライバーの運転の傾向や、走行状況から算出された数字を表示していますので、すべてがヒーターのせいとは限りません。
とはいえ、ガソリン車でも同じように表示する車種がありますが、ヒーターを使用したからといって、リーフのように航続距離が大きく変わることはありません。
お客さまには、EVにはエンジンがありませんから電気ストーブを置いているようなものと説明していました」
※ ※ ※
発売から2年後の2012年11月におこなわれたマイナーチェンジでは、暖房による電力消費量を減らすことが改良ポイントのひとつでした。
そこで、初期型では冷房用のエアコンとヒーターの併用だった空調システムに、家庭用のエアコンと同様のヒートポンプ式冷暖房システムとシートヒーターを採用。
冷房はもちろん、暖房に関してもヒートポンプエアコンを使用しつつ、必要に応じてシートヒーターとしてPTCヒーターを併用することで、電力消費を3割程度減らすことができたそうです。
■節電しながら車内を暖めるコツとは?
暖房の使用で電費が悪化しがちな初期型のリーフでも、節電のコツがあるといいます。前出の日産営業スタッフは、このように説明します。
「充電中に即暖性の高いヒーターをかけてあらかじめ車内を暖めておけば、充電完了の状態で出発できます。
走行中はエアコンに切り替え、電力消費の少ないステアリングヒーターとシートヒーターを使えば、快適にドライブができ、省エネにもなります」
初代リーフの発売から2020年で10年が経過し、バッテリー容量は着実に進化しています。発売当初は24kWhでしたが、2015年のマイナーチェンジで30kWhのバッテリーを搭載。
さらに、2017年のフルモデルチェンジでは40kWh、そして2019年1月には62kWhの大容量バッテリーを搭載したハイパフォーマンスモデル「リーフe+」も登場。初期モデルと比べると、バッテリー容量は約2.6倍、航続距離は200kmから570kmに大幅に向上しました(JC08モード)。
「バッテリーの容量が増えたことで、バッテリー容量という器に対するヒーターやエアコンの負荷の割合が減少しました。負荷が大きいと、走行中にガス欠ならぬ電欠の心配がありますが、容量が大きいので負荷に対して余裕があります」(日産の営業スタッフ)
※ ※ ※
全国の充電スポット数は1万8000か所(2019年3月末時点。ゼンリン調べ)を超えています。これはガソリンスタンド数の約6割に匹敵し、インフラは当初に比べて格段に整備されてきました。
リーフの世界累計販売台数はEV史上初の40万台を突破しており、環境問題への意識の高まりとともに、さらなる販売台数の増加も期待できます。
見た目は普通の乗用車と変わらないものの、車体後方のマフラーや給油口がなく、代わりに充電ポートでエネルギーを補給し、エンジン車とはまた違ったドライビングフィールを楽しめるのが電気自動車です。
EVが主流となる時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
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