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ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 後編

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ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ vs アルピナB3 ツーリング ワゴン直接比較 後編

内燃エンジンと電気モーターの加速の違い

ポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモから乗り換えると、アルピナB3 ツーリングの軽さがうれしい。とはいえ、ドライバーとガソリンを足すと2t近くに達する。返せば、タイカンはさらに重たいということだ。

【画像】アルピナB3 ツーリングとポルシェ・タイカン 4S クロスツーリスモ 写真で比較 全61枚

B3 ツーリングは、意欲的に回頭しようとする。軽くコミュニケーション力ではタイカンに及ばないステアリングホイールへ慣れるほど、意のままに操れるようになる。

確かにポルシェは、タイカンで偉業を成し遂げた。見事なバランスと俊敏性を与えている。だが、軽さには敵わないのだろう。

加速時の味わいでも、違いは明確。前後2基のモーターを搭載する571psのタイカンは、鋭くダッシュし、スポーツプラス・モードでのアクセルレスポンスには度肝を抜く。そこから速度の上昇とともに、加速度は穏やかに転じていく。

感心させられるが、息を呑むほどではない。アルピナは、その仕草の反対だ。

中間加速では、ZF社製の8速ATが適切なギアを選ぶまで、僅かなタメがある。ターボのブースト圧が高まるまでも同様。そこから一気呵成に加速していく。四輪駆動でも、トラクションの限界を感じさせる勢いで。

直列6気筒ツインターボは、回転数が高まるほど凶暴性も増長。思わず息を詰まらせ、右足の力を緩める。アフターファイヤーの破裂音がマフラーから炸裂する。上品なアルピナらしくないとしても、頬が緩む。

乾燥した路面でも、アクセルペダルを踏み倒した瞬間にタイヤがもだえる。ツインターボの462psと71.2kg-mのすべてが届く前でも、アスファルトへは伝えきれないようだ。

日常の高速移動ではより穏やかで上質

ポルシェの新鮮味すらあるダイレクト感もイイ。だが、アルピナの変速フィールも気持ちがイイ。

タイカンはアクセルペダルの踏み込み加減で、リアの2段ATがシフトダウンするのを感じる。シングルスピードが一般的な純EVとは異なる、特色を備えている。それでも、8速ぶんのギアとシフトパドル、レブカウンターの訴求力を超えはしない。

B3 ツーリングの方が敏捷でメカニズムの味わいが濃く、ドライビング体験は濃密。4S クロスツーリスモは、透明感やまとまりが高く、感触が豊か。よりダイレクトに操ることができる。

この2台では、4S クロスツーリスモの方が若干遅い。そのかわり日常の高速移動では、より安楽に運転できる。静かなパワートレインのおかげで、巡航走行時は平穏で上質だ。

パフォーマンス・ステーションワゴンとして、どちらが優勢だろうか。答えは簡単ではない。アルピナには切り札といえる、重要なストロングポイントがある。タイトコーナーでの自由度だ。

軽くない車重をカバーするべく、ポルシェは操縦特性を穏やかに設定したのだろう。そこで生じる課題が、操縦性の幅の狭さ。アクセルペダルを緩めると、ミドシップのようにコーナリングラインが内側へ絞られるが、荷重移動に対する反応が小さい。

常に姿勢は中立で、穏やかなアンダーステアが保たれる。もし極太のタイヤが大きな質量を制御できなくなると、その代償は大きい。結果として、この特性が与えられているのだと思う。

期待以上に直感的なシャシー

タイカンは平静を失わない。限界領域も、あえて低めてある。カーブの続くチャレンジングな区間でも、どこか一元的な印象が拭えないのだ。

コーナリングでは、ブレーキペダルの踏み始めに無反応の領域もある。圧倒的な運動エネルギーを抑えるには、予想よりもう少し踏み込む必要がある。力を込めればスチール製のディスクで熱に変換し始め、鋭い制動力が立ち上がるのだが。

対象的にB3 ツーリングは、より多面的。DSCシステムの監視を緩めれば、なお一層。

タイカンと同じく、基本はナチュラルなアンダーステア傾向。しかし、その特性を打ち破ることも至って簡単。コーナー出口でブレーキを緩め、アクセルペダルを早めに倒せば、B3 ツーリングは自由な脱出角度を選ばせてくれる。容易で安全に。

期待以上に直感的。すでに一度、経験したようですらある。修正舵を与える必要のないコーナリングでも、アルピナが磨き込んだシャシーが秘める流暢さと懐の深さを、感じ取ることができるはず。

少しマニアックな領域ではある。ポルシェ・タイカンは現在の純EVでベンチマークとするべき、素晴らしい完成度にある。だが、本当にクルマとの一体感を築けるかどうかの、違いはここにある。

この性格の違いを生んでいる理由こそ、400kgの重量差。それを支えるために、タイヤサイズは太くなり、より落ち着いたシャシーバランスへ帰着している。

タイカン 4S クロスツーリスモは、スローイン・ファストアウト。でも、アルピナB3 ツーリングは、ファストイン・ファストアウトで謳歌できる。

ほんの僅か、一体になれる力が及ばない

詰まるところ、この2台対決の勝者はアルピナB3 ツーリングだ。洗練性や直進安定性、操縦精度、落ち着きという点では、タイカン 4S クロスツーリスモに対して7・8割程度かもしれない。しかし、攻め込んだ領域での見返りはアルピナが優勢だった。

残念だが、否定できない事実だと思う。よりゲルマン魂を感じる。

蛇足ながら、ボディサイズはB3 ツーリングの方が小さいにも関わらず、荷室空間はタイカンより大きくリアシートにもゆとりがある。フロアパンに巨大なバッテリーを敷き詰める必要がないというメリットは、こんな部分にも表れている。

誤解しないで欲しいのは、タイカン 4S クロスツーリスモは、ほとんどの場面で素晴らしいということ。純EVに対する希望も抱かせてくれる。ほんの僅か、一体になれる力が及ばない、ということなのだ。

アルピナとポルシェ 高性能ステーションワゴン2台のスペック

アルピナB3 ツーリング(英国仕様)のスペック

英国価格:6万7950ポンド(約1032万円)
全長:4719mm
全幅:1827mm
全高:1438mm
最高速度:299km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:10.1km/L
CO2排出量:228g/km
乾燥重量:1865kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:462ps/5000-7000rpm
最大トルク:71.2kg-m/3000-4350rpm
ギアボックス:8速オートマティック

ポルシェ・タイカン4S クロスツーリスモ(英国仕様)のスペック

英国価格:8万8270ポンド(約1341万円)
全長:4974mm
全幅:1967mm
全高:1409mm
最高速度:239km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:445km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2245kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:83.7kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:571ps(オーバーブースト時)
最大トルク:66.1kg-m(オーバーブースト時)
ギアボックス:1速オートマティック(フロント)/2速オートマティック(リア)

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  • タイカン4S クロスツーリスモとの比較なら5シリーズのツーリングが対象では
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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