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初ロータリーEg搭載車「コスモスポーツ」開発秘話。マツダ四十七士が奮闘した昭和の熱い時代でした【国産名車グラフィティ】

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初ロータリーEg搭載車「コスモスポーツ」開発秘話。マツダ四十七士が奮闘した昭和の熱い時代でした【国産名車グラフィティ】

ドイツNSUの新技術を日本で量産化しロータリーエンジンの時代が始まった

自動車メーカーにとって激動の1960年代。食うか食われるか。東洋工業(現・マツダ)は、まさにその荒波のまっただ中にいた。この会社を救ったのがドイツで発案されたロータリーエンジンだ。しかし、市販化には日本の技術と47名の情熱なくしては果たせなかった。熱き社員の想いを一身に受けて2シータースポーツが登場した。

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ロータリーの高性能を表現するため2シータースポーツというボディスタイル選択

20世紀は自動車に積まれた内燃機関が発展し、技術レベルが大きく上がった100年である。数あるパワートレインのなかで、もっとも衝撃を与えたのは西ドイツのフェリックス・ヴァンケル博士が考案したロータリーエンジン(以下RE)だろう。このアイディアと理論をNSU(現在はアウディグループ)に持ち込むと世界中のメディアが注目し、多くの自動車メーカーが関心を示した。

オート3輪の分野で成功し、4輪業界への進出を目論んでいた東洋工業(現・マツダ)の松田恒次社長は、REに夢と社運を賭けようと考える。すぐにNSU社と技術提携の交渉に乗り出し、ライセンス生産の仮調印にこぎつけた。

本契約を結ぶのは1961(昭和36)年3月だ。この直後にNSUからRE単体や設計図などが届けられている。試作エンジンを回してみると驚くほど滑らかだった。だが耐久性に難があり、すぐに壊れてしまう。実用化を阻んだ最大の難問は、悪魔の爪痕と呼ばれた「チャターマーク」だ。繭型のローターハウジングの内側で回るローターの頂点に置いた3つのアペックスシールが内壁面に傷をつけ、波状摩耗によってエンジンが息の根を止める。

だが、後戻りはできない。東洋工業のエンジニアは独自のアイディアを加えた排気量399ccのシングルローター試作エンジンを設計し、これをマツダB1500バンに積み、過酷な耐久テストを行っている。リーダーは後に社長になる山本健一だ。最初の部下は46人で、山本を加えて四十七士と名乗った。

ボディタイプは、REの高性能さがわかりやすい2人乗りのスポーツカーを選んでいる。コードネームは 「L402A」だ。レンダリングスケッチを描き、1963年10月の第10回全日本自動車ショーに間に合わせるために、突貫工事で試作車を製作。だが、ショーに出品したのはシングルローターと2ローターのRE単体、外観の透視図だけだった。試作車を展示しなかったのは、RE搭載車に注目が集まり、初代ルーチェの参考出品車が霞んでしまうからだ。

その代わりショーの開催に合わせ、松田恒次社長が試作車のステアリングを握り、取引銀行や山陽地区と東海道沿線の販売ディーラー、サプライヤーなどを表敬訪問している。広島から東京までは約800km。未完成のエンジンでは走り切ることはできない。そこで訪問先の近くまで積載車に載せて行き、そこから先だけ試作車を走らせた。このデモランは苦肉の策だったが、訪問先では大きな感動と反響を呼んでいる。

日本の技術で課題だったチャターマークを克服

1962年後半から本格化した内外装のデザイン作業では、ファストバッククーペを推す声も大きかった。だが、最終的にノッチバックスタイルにコンパクトキャビンの組み合わせに決定している。地を這うような低重心フォルムで、低いノーズの先端にカバー付きのヘッドライトを配した。リアコンビネーションランプはバンパーを境に上下に分断。プロトモデルでは、大きなガラスエリアとピラーのボディ色を塗り分けたツートーンの手法も前例のない新鮮な感覚だった。

ローターハウジンと呼ばれる繭型のケースの中でおむすび状のローターが回転する力を取り出し、動力源にしたのがバンケルREだ。回転運動だから往復運動を行うレシプロエンジンより滑らかで、振動が小さい。高回転も得意である。構造もシンプルだから小型化、軽量化しやすいなど、理論的には文句なしだ。

マツダが試作したのは、シングルローターと2ローターである。だが、シングルローターは振動が大きく、ドライバビリティに難があった。そこで単室容積399ccのエンジンを2個重ねた2ローターREに絞っている。L8Aの型式で呼ばれ、総排気量は798cc。これは早い時期に70psレベルのパワーを達成している。

ポートは、NSUに習って吸入抵抗が少なく、高性能化しやすいペリフェラル吸入ポートを選んだ。しかし、高回転は得意だが、低回転域のトルクが薄く、一般道ではギクシャクして運転しづらかった。そこでサイドハウジングから吸入するサイドポート式に注目し、開発に着手する。

チャターマークの対策には特殊加工を施した金属シールの先端に横に2本、縦に交差する穴を配して高周波を低減する鋳鉄製クロスホローシールを採用することにした。ショー終了後から新設計エンジンの開発を開始し、マツダ独自のサイドポート吸入を採用した10A型2ローターREを誕生させている。単室容積491cc、総排気量は982ccだ。

開発陣を苦しめたチャターマークは、日本カーボン社と共同で高強度のカーボン(パイログラファイト)をアペックスシールに採用して抑え込んでいる。超高速域で発生するミスファイアや始動性の悪さを解消するために、点火プラグは1ローターあたり2本とした。また、吸気干渉や脈動の問題も浮上したので、日立製作所と共同で2ステージ4バレルキャブレターも開発している。

質感にこだわったおしゃれな内装

車名は宇宙を意味する「COSMO」に決定した。エクステリアを公開したのは東京モーターショーと名を変えて1964年9月に開催された第11回だ。美しいフォルムが話題となり、その後は基本フォルムを変えることなく熟成に努めていった。苦難を乗り越え、市販を宣言したのは1967年5月30日だ。正式車名は「コスモスポーツ」である。

エクステリアと同様に、インテリアも基本はプロトタイプから変わっていない。ドライバーの前からセンターまでを横L字型のメーターパネルとし、全体をソフトパッドで包んでいる。ただ市販車ではアルミのパネルがブラックアウトされ、メーターの配置とデザインも一部変更。メーターは大径のスピードメーターとタコメーターを中心に、左右に2個ずつの補助メーターを並べている。左端は時計だ。後期型ではアシストグリップも追加された。

ウッドのステアリングには60mmのテレスコピック機構が付き、4速フロアシフトの短いレバーもウッド製としている。ちなみに低い位置に装着されたバケットタイプのシートは千鳥格子のおしゃれなデザインで、足を投げ出すように着座する。

後期モデルではヘッドレストが加わり、4速に換えて5速MTを採用した。キャビンは同じように見えるが、ホイールベースが2350mmと150mm延びたため、室内は少し余裕を増している。合わせガラスを早くから採用するなど、安全装備が充実しているのもマツダの良心だ。

前期型のコスモスポーツは「L10A」と呼ばれ、世界初の2ローターREの最高出力は110ps/7000rpm、最大トルクが13.3kgm/3500rpmを発生した。4速MTを組み合わせ、連続最高速度185km/h、0-400m加速は16.3秒。サスペンションは、フロントが設計自由度の高いウィッシュボーン式、リアは独創的なド・ディオン式リジッドアクスルとした。

1968年7月、最初で最後のマイナーチェンジを行っている。ホイールベースを延ばした「L10B」は、フロントマスクを化粧直しし、ラジアルタイヤが標準装備だ。ブレーキにはサーボアシストが加わった。また、エンジンも128ps/14.2kgmにパワーアップし、最高速度は200km/hの大台に乗っている。開発陣の情熱がほとばしる独創のスポーツカーがコスモスポーツだ。

コスモスポーツ(L10B) ●年式:1969 ●全長×全幅×全高:4130mm×1590mm×1165mm ●ホイールベース:2350mm ●車両重量:960kg ●エンジン:10A型2ローター ●総排気量:491cc×2ローター ●最高出力:128ps/7000rpm ●最大トルク:14.2kgm/5000rpm ●変速機:5速MT ●サスペンション(前/後)ウィッシュボーン/ド・ディオン・リーフリジッド ●ブレーキ(前/後)ディスク/リーディングトレーリング ●タイヤサイズ:155HR15 ●新車当時価格:158万円

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みんなのコメント

2件
  • 60年代のクルマとは思えない未来的なクルマ。
    ほぼそのままで特撮「帰ってきたウルトラマン」で使用され先日亡くなられた団次朗さん演じる郷秀樹さんが駆るシーンはカッコよかった。
    またロータリーにはコスモスポーツのような小型軽量のボディが特性的にも合う。
    ロータリースポーツ復活のおりには787のようなモンスターではなくコスモスポーツのようなライトウエイトスポーツを望みたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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