1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は1989年の第28回ショーを振り返ってみたい。
舞台は晴海から幕張へ。来場者数も過去最高を記録
1989年、元号が昭和から平成へと替わり、東京モーターショーは晴海から千葉県の幕張メッセへと会場を移した。同施設のこけら落としイベントとなった第28回ショーの参加数は、15か国333社2政府3団体。来場者数も過去最高の192万4200人を記録した。出品車はトヨタ 4500GTや三菱 HSR-II、いすゞ 4200Rなど、高速性能を追求したコンセプトモデルが多く展示されたのが特徴だった。翌年発売予定のホンダNSXが参考出品されたのも、大きな話題となっている。
■いすゞ 4200R
伝統的ヨーロピアンテイストのスポーティな性能とイメージの確立を目指した、いすゞのイメージリーダーカー。空気と融和したスムーズでクリーンなエクステリアの造形は、いすゞが初代ピアッツァ以来、一貫して追求してきたカプセルフォルムの思想を集大成したものだ。全長4630×全幅1910×全高1350mmの堂々たるボディに新開発の軽量コンパクトな4.2LのV8エンジンをミッドシップ搭載。足まわりにはロータスとの共同開発による操縦安定性と乗り心地を両立したアクティブサスペンションを搭載する。キャビンはミッドシップながら2+2シーターを実現したほか、運転席にはカーナビ、ビデオデッキ、オーディオシステム、ファクシミリをセットするなど、ハイテク機器とスポーツを融合させたインテリアを提案していた。
■トヨタ 4500GT
FXV、FXV-IIと近未来の技術を提案してきたトヨタが、その集大成として実現可能なスーパースポーツとして出品したのが4500GTだ。全長4365×全幅1830×全高1210mmの大柄なボディながら、コーダトロンカなど空力形状を追求した結果Cd値=0.29を達成。同時にフード、フロントフェンダー、バックドアにケブラーとカーボンを組み合わせたCFRP製ハニカムパネルを採用して車重を1450kgに抑えている。駆動方式はコンベンショナルなFRだが、300psを発生する4.5LのV8DOHCをフロントミッドシップに搭載し、6速MTをリアに置くトランスアクスルを採用して前後重量配分を50:50に近づけ、後輪舵角を電子制御するアクティブリアホイールステアリングを組み合わせることで、超絶のハンドリングを得ているという。製造技術やコストの問題が解決されれば、すぐにでも市販可能と期待をもたせた。
■三菱 HSR-II
三菱はHSR-IIを商品化ではなく技術の頂点を目指す実験車として位置づける。中核をなすのはOCS-IIという7基のコンピュータによる高度電子制御システムで、センサー、カメラ、アクチュエータ群を有機的に連鎖させて、高度なドライブサポートシステムを構築した。ユニークなのはボディに6枚の可動翼を装着し、走行状況に応じてCd、Cl値を無段階に制御するシステムを開発したことだ。空気を排除するのでなく味方につける考え方は、航空機技術を熟知した三菱ならではの手法といえるだろう。パワートレーンは3LのV6ツインターボをフロントに横置きしたフルタイム4WDで、コンパクトに一体化したセンターデフ+VCU付きトランスファーとATを備える。フットワークは前回ショーに展示したHSRの4WD、4WS、4IS、4ABSの制御を一段と進化させたもので、アクティブECSを追加して高速走行時の安定性を飛躍的に向上させている。
■スバル(ジオット) キャスピタ
童夢とワコールが企画し、スバルとモトーリモデルニが共同開発したF1用3.5Lの水平対向12気筒エンジンをミッドシップ搭載したスーパースポーツ。市販化も期待されていたが、バブル景気の崩壊から市販されることはなかった。
[ アルバム : 1989年の東京モーターショー はオリジナルサイトでご覧ください ]
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