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インサイトはi-MMD。ホンダのハイブリッドシステム3種、じつは2種+α?

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インサイトはi-MMD。ホンダのハイブリッドシステム3種、じつは2種+α?

なんでも自製を目指すホンダ。すばらしい挑戦精神である。というわけでハイブリッドシステムもクルマのサイズや目的によって3種もの用意がなされることになった。それらはいったいどのような機構的違いがあるのだろうか。

 2018年末現在、ホンダという会社におけるハイブリッドシステムには3種がそろっている。

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 ■ SPORT HYBRID i-DCD
 ■ SPORT HYBRID i-MMD
 ■ SPORT HYBRID SH-AWD

というラインアップである。それぞれ、B/Cセグメント、Dセグメント、EセグメントおよびNSXというように目的と採用が割り振られている。ハイブリッドということでモーターの数と役割を当てはめると以下のようになる。

 ■ SPORT HYBRID i-DCD:1モーター
 ■ SPORT HYBRID i-MMD:2モーター
 ■ SPORT HYBRID SH-AWD:3モーター

 何がそれぞれの特徴なのかを考察してみよう。

SPORT HYBRID i-DCD

 i-DCD:インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブの略称が示すとおり、変速機にはDCTを用いる。パワートレイン構成は基本的にFWD、駆動輪のトルクはエンジンとモーターの双方が担う。

 FWDのハイブリッドシステムとして、SPORT HYBRID i-DCDに先立ちホンダはIMAというシステムを持っていた。こちらも1モーター構成で、当時のホンダのスタンスとしては、クルマの駆動装置としてはあくまでエンジンが主でありモーターはそれを助ける従の存在。エンジンと変速機の間に「クラッチを介さず」ダイレクトにモーターを備えていたのが機構的な特徴であった。この構造ゆえ、走行中は常にモーターの回転子(ローター)がエンジンと連れ回る構造となり、たとえば減速回生時にもクランクシャフトまで引きずる、モーター単体走行ができないといった短所が目立ってしまった。

 それを受けてか、SPORT HYBRID i-DCDは一気に2セットのクラッチを備えて登場を果たす。

 ツインクラッチのシステムはドイツ・シェフラーから供給を受けているとか、幾度となくリコールを繰り返してしまったとか、そのあたりはよく知られている。実際に不具合にたたられてしまったユーザーは気の毒な限りだが、しかし小型車においてこれだけの複雑な機構を果敢に取り入れたというホンダのチャレンジには大いに賛辞を贈りたい。

 なぜDCTか。IMAの2ペダル式では変速機にCVTを用いていたが(一部MT)、伝達効率に難がある。DCT=平行軸式ギヤ(MTベース)なら伝達効率は遊星歯車式をしのぐ高さ、さらにSPORT HYBRID i-DCDは乾式クラッチを採用しているのでさらに効率が高い。変速制御の速さは言うまでもなく、ドライバビリティを何より重視するホンダのエンジニアにとっては理想のパワートレインのひとつだったのだろう。

 ちなみにこのSPORT HYBRID i-DCD、機構としては三菱ふそうのデュオニックとほぼ同等。こちらは、小型トラックのドライバーが多岐にわたるようになり、熟練度にばらつきが大きいことからクラッチ保護を目的のひとつとして定めているのが開発のスタートとなった。車重とトルクが大きいことから、クラッチシステムは湿式を用いている。

SPORT HYBRID i-MMD

 i-MMD:インテリジェント・マルチ・モード・ドライブ。変速機は持たず、減速機構のみ。パワートレイン構成は基本的にFWD、駆動輪のトルクをエンジンとモーターの双方が担うのはi-DCDと同様だが、i-DCDが文字どおりのハイブリッド(動力混成)なのに対してi-MMDはモータートルクの存在が大きい。エンジンは基本的に発電機を回すための動力として運転、シチュエーションによっては駆動も担うという思想だ。

 車輪を駆動するのはモーターとエンジン、そしてエンジンには発電機がギヤを介して接続される。バッテリ給電+モーター駆動のEVドライブモード、エンジン+発電機がそれに加わるハイブリッドドライブモード、そしてエンジンをクラッチ接続し、減速機を介して車輪を駆動するエンジンドライブモードの3種で運転する。エンジンドライブモードではモーターの回生とアシストを適宜使い分けながら最適燃費効率点での運転を図る。

 水色の実線が燃費最適曲線、黒色の破線が平坦路における走行曲線。ハイブリッドドライブモードにおいてエンジンは車輪と機械的につながっていなく、回転数は任意に設定できるため、燃費最適曲線上で運転できる。片やエンジンドライブモードはクラッチを介してエンジンと車輪は機械的に接続するため、燃費曲線を外れたエリアでの運転が多くなってしまう。

 そこで、最適曲線よりも大トルク状態のときにはエンジントルクを小さくしモーターでアシスト、小トルク状態のときにはエンジントルクを大きくして差分をモータ回生のエネルギーとして用いている。

 ちなみに三菱自動車のアウトランダーPHEVの積む「PLUG-IN HYBRID SYSTEM with TWIN MOTOR 4WD」は、ほぼi-MMDと同様の思想と作動である。

 日産のe-POWERも、機構としてはほぼ同等。異なるのはエンジントルクを駆動軸に直結する機構が備わらないことだけだ。ギヤトレーンを眺めると、いかにも直結できそうな構造にはなっているのだが……。

SPORT HYBRID SH-AWD

 非常にややこしいのだが、SH-AWDというのはホンダにおける四輪駆動車の左右駆動力配分システムのことを指し、ハイブリッドとは直接関係がない。そもそもはデフに内蔵した増速装置と電制クラッチを用いて、旋回時のヨー特性を向上させる仕組みだった。それが、新型NSXのが搭載する「SPORT HYBRID SH-AWD」という名称になったときに、フロント側に左右モーターを備えることで同等以上の効能を発揮するシステムとして登場を果たしている。

 同システムは、通常のFWDベースAWD車にも展開されるようになった。日本ではレジェンドへの搭載でもお馴染みで、この場合は2モーター式のSH-AWDは後輪側に配置される。

 では残りひとつのモーターはどこに備わるかといえば、エンジン側である。NSX、レジェンド、そのほかアキュラブランドのクルマにおいても7速DCTとセットでエンジントルクとの混成を図り、前軸(NSXなら後軸)を駆動する。


 お気づきのようにこの7速DCTは、先述のi-DCDと同様のシステムである。NSXでは縦置きユニットだったので見た目は大きく異なるが、考え方は同じ。エンジントルクはそもそも高回転側のパフォーマンスに優れている特性を持つので(つまりパワーを得るまでに時間を要する)、変速機側のモータとSH-AWD側の2モータが瞬間的なトルクを発生し加速ラグを最小限に抑えている。i-DCDの概念に加えて、ふたつのモータがさらにパフォーマンスを高めているのがグラフからも読み取れる。

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