■ステランティス全体でEVシフト加速
ついに、Jeepが本格的なEVシフトに動き出しました。
Jeepはすでに、4xe(フォーバイイー)戦略としてプラグインハイブリッド車をグローバルで市場導入しており、「レネゲード 4xe」と「コンパス 4xe」はイタリアでにおいてローエミッションSUV分野でトップシェアを誇っており、またレネゲード 4xeはすでに日本にも上陸しています。
アメリカでは「ラングラー 4xe」が発売され、メディア各社から「これがJeepの近未来の姿」として絶賛されているなか、今回は「グランドチェロキー 4xe」がワールドプレミアされました。
これに合わせて、再生可能エネルギーを活用する太陽光パネルの定置式充電設備についての発表もおこなわれました。
さらに、2025年までにJeepの全SUVモデルにEVを導入するというのです。
Jeepの電動化も含めて、ステランティスがオンラインで「EV DAY2021」を開催し、挑戦的なEV事業戦略を明らかにしました。
ステランティスと聞いても多くの人はピンとこないかもしれませんが、PSA(プジョーシトロエン)とFCA(フィアットクライスラーオートモビルズ)が合併し、2021年1月から運用が始まった、製造・販売台数では世界第4位の自動車メーカーです。
欧州系ではアバルト、アルファロメオ、フィアット、ランチア、マセラッティ、プジョー、シトロエン、DS、オペル、ボクソール、アメリカ系ではクライスラー、ダッジ、ラム、ジープの合計14ものブランドを有しています。
今回の発表の目玉は、なんといっても巨額の投資でしょう。2025年までに300億ユーロ(1ユーロ130円換算で3兆9000億円)を投じてEVシフトを一気に加速させます。
電動化の達成目標は、2030年までに欧州内販売の70%、またアメリカでは40%をLEV(ローエミッションヴィークル)とするというのです。LEVは、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車、または水素など代替燃料車が含まれると考えされます。
こうしたなかで、EVについてはボディサイズに応じたプラットフォームを構成することで、14ブランドそれぞれのEVシフトに敏速に対応します。
そのうち、ドイツのオペルについては2028年に欧州で発売するすべてのモデルをEV化することが決まりました。
欧州メーカーでは、ボルボが2030年にグローバルで全モデルのEV化を発表していますが、オペルはそれより2年早いく欧州市場でEV専業メーカーとして生まれ変わることになります。
オペルのEVといえば、往年の2ドアクーペ「マンタ」をモチーフとしたクラシカルな雰囲気を醸し出すEVのデザインコンセプトモデルがグローバルで大きな話題になったばかりです。デザイン詳細は未定ですが、次世代マンタもEVとして再出発することになります。
こうした14ブランドでのEVシフトを加速するため、ステランティスはスモール、ミディアム、ラージ、そしてピックアップトラックやSUV向けのラダーフレームを意味するフレームという4つのEVプラットフォームを準備しています。
満充電の航続距離は、スモールが500km、ミディアムが700km、ラージが800km、そしてフレームが800kmを確保します。
また、モーター、ギアボックス、インバーターをエレクトリックドライブモジュール(EDM)を4つのEVプラットフォームで共通化することでコスト削減を進めます。
搭載する電池についても2種類として、材料のコストや製造コストに応じて使い分けます。
電池のリユースやリサイクルについても、ステランティスの14ブランド全体で販売する国や地域の社会状況を考慮した上で最適なエコシステムを構築するといいます。
今回の発表では、ブランド毎に主要市場の状況を踏まえた商品戦略を深堀りする説明がなされたことがとても印象的でした。
PSAとFCAが融合したことで、EVシフトに対する量産効果が高まることは当然ですが、それぞれのブランドが際立つような形でのEVシフトの可能性が見えてきました。
グローバルで一気に加速しているクルマの電動化で、ステランティスの今後の動向を注視する必要があると感じます。
その上で、日系メーカーとはひと味違う電動車が、欧州やアメリカから次々と日本で発売されることを大いに期待したいと思います。
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