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市場から姿を消せば悲劇 トヨタGR86へ英国試乗 稀有なドライビングマシン 後編

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市場から姿を消せば悲劇 トヨタGR86へ英国試乗 稀有なドライビングマシン 後編

グリップとスリップを行き来しやすい

2代目へ一新したトヨタGR86。まずはモンテブランコ・サーキットでの試乗から。

【画像】絶滅危惧種になった2ドアクーペ GR86 トヨタ・レクサス・マツダ・日産のモデルを比較 全136枚

真っ先に好感を抱いたのが、乾燥しグリップの良いアスファルトでも、グリップとスリップとの狭間を行き来しやすいこと。テールスライドしたがる、若々しい個性は変わらない。素性の良さも伝わってくる。

高められた剛性によって、一層ドライバーの遊び心をくすぐってくれる。リアアスクルの直上に座っているような感覚がありつつ、フロントノーズを狙った場所へピンポイントで導ける。ねじり剛性が高められたことで、その精度も増したようだ。

コーナーへの侵入でアクセルペダルを緩めると、フロントがインへと食い込んでいく特性も好印象。その後の調整操舵も加えやすい。

水平対向エンジンは車両中央へ寄せられ、低い位置に搭載されているため、フロントタイヤへ掛かる荷重が抑えられている。これが、ステアリングレスポンスとフロントタイヤのグリップ力に、プラスの影響をもたらしているはずだ。

よほどドライバーが不器用でない限り、GR86がアンダーステアでズルズル流れることはないだろう。軽快なフロントの反応が、ひたすらに楽しい。

運転していて1つ気になったのが、ステアリングコラム。前後の調整域が小さめで、身長の高いドライバーの場合、理想的なペダルとの位置関係を作りにくいかもしれない。唯一、GR86の人間工学で惜しい点といえる。

一般道ですべてに近い体験を堪能できる

コーナリングに話を戻すと、シャシーの前後バランスも光る。そして、リアアスクルの振る舞いに、心が奪われる。

きれいにラインを保ちながら、自然に旋回できる。同時に、少し速めのスピードで侵入し、出口めがけてテールをわずかに外へ流すことも容易。不安感のない速度域でそれを楽しめる。

英国郊外の一般道で許される、97km/h(時速60マイル)を超える必要はない。日常的な環境でも、すべてに近い体験を堪能することができる。ただし、GR86にはそれ以上の領域もある。

モンテブランコ・サーキットには通過速度の高い登りの右コーナーがあり、入口から出口が見えない。そこで4速に入れたまま、痛快な4輪ドリフトに持ち込むことができた。レーサー級のスキルがなくても、ダンスするように操れるのだ。

トヨタがアップデートしたシャシーも素晴らしいが、そのセットアップの絶妙さも秀抜。この小さな2+2クーペをどう仕立てたいのか、技術者は正確に理解していたのだろう。

サーキットから公道へ出れば、走りの温度感は低くなる。かといって、つまらない訳ではない。

サスペンションのスプリングとダンパーのレートは僅かに高められており、姿勢を乱さず、ボディロールを抑え込むというシンプルな仕草が心地良い。乗り心地に、少し洗練性が欠けていたとしても。

アクセルペダルでの姿勢制御も容易

ここで重要な役目を果たしているのが、1276kgと軽い車重。繊細にコミュニケーションを取りやすい。指先でステアリングホイールを回せば、フロントタイヤの仕事ぶりを触覚でも感じ取ることができる。

豊かなフィードバックで、自然と操る自信が高まる。すべてが極めて直感的。闇雲にスピードを高める必要はない。

6000rpmで最大トルクの20.8kg-mを発生した先代とは異なり、GR86では25.3kg-mを3700rpmから得られる。より手前側で、たくましい力が得られる点もプラスに働いている。

カーブが連続する区間では、ずっと爽快に駆け抜けられる。ターボ加給されるホットハッチほどではないにしろ、素早く立ち上がり次のコーナーを意欲的に目指せる。

コーナリング中は、アクセルペダルでの姿勢制御もしやすい。この懐の深いマナーこそ、GR86最大のストロングポイント。2.4Lへ排気量が拡大された水平対向4気筒エンジンの、1番の効果だといいたい。

他方でこのエンジンは、存在感が控えめ。パワーアップし、合成音で聴覚面でのアピール力が補強されているとしても、基本的には実務的なユニットだ。

エネルギー効率も高いとはいいにくい。GR86の燃費は平均で11.4km/L。2.0L 4気筒ターボを積んだスープラの方が13.7km/Lと良好で、マツダMX-5(ロードスター)は14.0km/L以上も走る。

2024年に英国から姿を消す悲劇

そろそろまとめに話を移そう。2代目へ進化したGR86は、理想を並べるなら完璧とまではいえないだろう。まだ伸びしろがあると思う。

もし、自然吸気エンジンとマニュアル・ギアが組み合わされた、手頃な価格のジュニア・スポーツカー市場が市民的なものだとしたら。恐らくエンジンやトランスミッション、インテリアで、GR86より優れるモデルが存在するはず。

しかし現実の世界では、3万ポンド(約480万円)を切るこんなクルマは、ほかに存在しない。仮にもう1台ライバルがあったとしても、ケータハム・セブンに迫るようなハンドリングを叶えているとは限らない。

新しいGR86は、日常的に乗れ、古典的な魅力を備えた、地球への負担が小さい稀有なスポーツカーだ。シンプルで楽しく、一体感があり運転に深く惹き込まれる、シリアスなドライビングマシンだといえる。

こんなクルマがもっと多ければ、と嘆きたくなる。2024年に英国市場からトヨタGR86が本当に姿を消すのなら、それは悲劇としかいいようのない事実だ。

トヨタGR86(欧州仕様)のスペック

英国価格:2万9995ポンド(約479万円)
全長:4265mm
全幅:1775mm
全高:1310mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:6.3秒
燃費:11.4km/L
CO2排出量:200g/km
車両重量:1276kg
パワートレイン:水平対向4気筒2387cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:234ps/7000rpm
最大トルク:25.3kg-m/3700rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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みんなのコメント

22件
  • AUTO CARの試乗レビューとか長期テストとかは読んでいて楽しくなるなぁ。
  • トヨタ信者は大喜びw
    でもなスバルのお陰だぞ其処忘れるなw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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