雪国だけじゃない「ロードヒーティング」をお手軽に
雪国の道路や駐車場などでは、路面の雪を溶かす「ロードヒーティング」と呼ばれるシステムが導入されている箇所があります。一般的には大がかりなシステムになるため雪国ならではの設備といえますが、これが東京都心の首都高などでも、少しずつ導入されています。
2024年9月26日・27日に都内で開催された「ハイウェイテクノフェア」の首都高速道路ブースでは、「発熱する和紙を用いたロードヒーティング」と呼ばれる技術が展示されていました。
そこにあったのは、短冊状の和紙1枚と、それを埋め込んだという舗装のサンプル。そのサンプルに手を触れると、確かに舗装が温かいのです。
「和紙にカーボンの繊維を織り込んで、そこに電気を通すことで発熱します」。その和紙のメーカーである株式会社太陽の担当者がこう説明してくれました。
ロードヒーティングといえば、道路に埋め込まれた電熱線の熱や、配管からの温水によって雪を溶かす方法が知られます。その設備は大がかりになるうえ、舗装の奥深くに埋め込む必要があるとか。
これに対し、同社のシステムは「舗装の表層に細い溝を掘って、そこに(短冊状の)和紙を埋めて充填剤を入れるだけ」(担当者)なのだそう。
このため、従来はロードヒーティングを設置するのが難しかった橋梁区間にも適用可能だそうです。施工コストは電源までの距離によって変わるといいます。
全部温める必要はない!
和紙を立てて溝に埋め込む時点で、このシステムは一定の“面”の雪を溶かす一般的なロードヒーティングに対し、走行路のわだち部分のみを対象とする“線”の考え方です。しかし、その上をクルマが走ると、雪が溶ける範囲が広がるのだとか。
もちろん、天候によっては、そこへさらに雪が積もって圧雪状態になることも考えられますが、「路面に接する部分の雪はシャーベット状になっているので、スタック(立ち往生)を防げます」(担当者)とのこと。
首都高では2018年1月の大雪をきっかけに、このロードヒーティングシステムを開発し、これまでC2中央環状線の王子南入口、飛鳥山トンネル、4号新宿線の新宿入口などに設置されているといいます。これらは急勾配があるため、大雪時にスタックが起った、あるいは起こりやすい箇所です。
都市部だけでなく、上信越道や北陸道、山形道といった雪国の道路でも導入されているほか、今後は一般道のなかでも特にスタックの危険性が高い峠道の区間への導入が増える予定だそうです(個人宅の施工例もあるとか)。
ちなみに、この「発熱する和紙」は道路以外だと、たとえばクルマのハンドルがほんのり暖かくなるステアリングヒーターなどにも使われているといいます。とはいえ、最大で300度の熱を出すことも可能だそうです。
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